品質を良くすることで、コストを下げるとは

更新日

投稿日

QC
 「品質が良い悪い」と言ったり、「品質を上げる」と言ったりしますが、これがどんなものなのか、明確でしょうか。よく「前回のような品質問題は起こさないようにしよう」とか、「品質目標を立て、不良率を1%以下に抑えよう」とか言ったりします。結局、品質を良くするとは、不良をなくすこと、悪さをなくす事であって「品質」と「悪さ」と同義語です。この発想のもとに、品質対策(悪さをなくす)を実施すると検査工程の追加、検査項目の追加、選別の実施などという対策も、普通に許されてしまいます。
 
 JITや、セル生産で生産性の向上や在庫の削減を行ってきても、品質対策で、この効果が帳消しになってしまうなんてことも起きてしまいます。「品質を良くするには生産性を犠牲にしなければならない」
「品質対策を行うには費用が掛かる」「品質の良い製品は高くて当たり前」といった考え方が平気でまかり通ってしまうのです。お客様は、品質が良いからと言って、高くても買うでしょうか。同じ品質なら、安いものを買うはずです。そこで、発想の転換が必要で、品質イコールコストと考えるべきです。もちろん、品質保証部門では、「失敗コスト」「検査コスト」「予防コスト」として管理している企業もあるのですが、工場全体のスループット(付加価値生産性)として、考慮されているかというと、そのコストを明確に生産性に反映している例は非常に少ないと思います。スループット=OUTPUT/INPUTと定義されます。
 
 どういう事かというと、工場が生み出す付加価値に対して、どれだけ人員や、経費をつぎ込んだかで、もちろん生産活動の改善によってスループットの向上は常に図られているでしょう。ところが、従来通りの品質の考え方で、不良を減らす対策を行っているとこの活動と逆行してしまうのです。では、コストを下げ、なおかつ品質を良くする対策を行うにはどうすれば良いでしょうか。それは、次のフローです。
 
 品質を良くする=悪さを減らす=コストを下げる
 コストを下げる=スループットを向上させる
 スループットを向上させる=生産性を上げる
 
 物やサービスの「良さ」をどのように計測し評価しているか。積水化学グループの例を見てみましょう。積水化学グループでは、品質を支えるのは現場でのモノづくりであると認識し、品質の不備は、クレームへの対応や廃棄物の増加といったロス・ムダ…つまりコストにつながるという考え方をしています。つまり、「クレームゼロ、事故・不良ゼロ、廃棄物ゼロ」という「3つのゼロ」を目標に掲げてロスコストの削減に取り組んでいます。そして「モノづくり革新指標」という数...
QC
 「品質が良い悪い」と言ったり、「品質を上げる」と言ったりしますが、これがどんなものなのか、明確でしょうか。よく「前回のような品質問題は起こさないようにしよう」とか、「品質目標を立て、不良率を1%以下に抑えよう」とか言ったりします。結局、品質を良くするとは、不良をなくすこと、悪さをなくす事であって「品質」と「悪さ」と同義語です。この発想のもとに、品質対策(悪さをなくす)を実施すると検査工程の追加、検査項目の追加、選別の実施などという対策も、普通に許されてしまいます。
 
 JITや、セル生産で生産性の向上や在庫の削減を行ってきても、品質対策で、この効果が帳消しになってしまうなんてことも起きてしまいます。「品質を良くするには生産性を犠牲にしなければならない」
「品質対策を行うには費用が掛かる」「品質の良い製品は高くて当たり前」といった考え方が平気でまかり通ってしまうのです。お客様は、品質が良いからと言って、高くても買うでしょうか。同じ品質なら、安いものを買うはずです。そこで、発想の転換が必要で、品質イコールコストと考えるべきです。もちろん、品質保証部門では、「失敗コスト」「検査コスト」「予防コスト」として管理している企業もあるのですが、工場全体のスループット(付加価値生産性)として、考慮されているかというと、そのコストを明確に生産性に反映している例は非常に少ないと思います。スループット=OUTPUT/INPUTと定義されます。
 
 どういう事かというと、工場が生み出す付加価値に対して、どれだけ人員や、経費をつぎ込んだかで、もちろん生産活動の改善によってスループットの向上は常に図られているでしょう。ところが、従来通りの品質の考え方で、不良を減らす対策を行っているとこの活動と逆行してしまうのです。では、コストを下げ、なおかつ品質を良くする対策を行うにはどうすれば良いでしょうか。それは、次のフローです。
 
 品質を良くする=悪さを減らす=コストを下げる
 コストを下げる=スループットを向上させる
 スループットを向上させる=生産性を上げる
 
 物やサービスの「良さ」をどのように計測し評価しているか。積水化学グループの例を見てみましょう。積水化学グループでは、品質を支えるのは現場でのモノづくりであると認識し、品質の不備は、クレームへの対応や廃棄物の増加といったロス・ムダ…つまりコストにつながるという考え方をしています。つまり、「クレームゼロ、事故・不良ゼロ、廃棄物ゼロ」という「3つのゼロ」を目標に掲げてロスコストの削減に取り組んでいます。そして「モノづくり革新指標」という数値を設定し次のように、すべてをコストに換算して管理します。
 
・外部損失費(クレーム・苦情処理コスト)
・内部損失費(製造工程不良処理コスト)
・生産コスト(原材料費、人件費)
・安全損失コスト(災害労災対応コスト)
・環境コスト(廃棄物処理、エネルギーコスト)
 
 つまり「品質」=「コスト」です。「品質」を測るる指標は不良率、クレーム件数などではなく「コスト(費用)」です。品質を良くするということは、コストを下げる事で、これが、ものづくり企業の「品質の考え方」として重要です。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に...


「品質マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
トレーサビリティとは

【目次】 1. トレーサビリティと製造情報管理、4M変化点管理 2. なぜトレーサビリティーなのか 3. やさしいトレーサビリティー管理構築手順 ...

【目次】 1. トレーサビリティと製造情報管理、4M変化点管理 2. なぜトレーサビリティーなのか 3. やさしいトレーサビリティー管理構築手順 ...


コトの品質とは

 モノよりコトの品質が問われる時代です。製造業の品質改善の進め方として、今回は、「コトの品質」についてです。 ◆関連解説『品質マネジメントとは』 &n...

 モノよりコトの品質が問われる時代です。製造業の品質改善の進め方として、今回は、「コトの品質」についてです。 ◆関連解説『品質マネジメントとは』 &n...


品質管理の基本をチェックする

  1. 工場管理の基本とチェックポイント    日本の多くの中小製造業は、「多品種少量、受注加工生産型企業」です。また、ほとん...

  1. 工場管理の基本とチェックポイント    日本の多くの中小製造業は、「多品種少量、受注加工生産型企業」です。また、ほとん...


「品質マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
見栄えの良さも品質

        私は、“見栄えの良さも品質”だと感じることがあります。例えば、次のような事例です。   1. 酒造メーカーにクリーンルーム、「な...

        私は、“見栄えの良さも品質”だと感じることがあります。例えば、次のような事例です。   1. 酒造メーカーにクリーンルーム、「な...


外観検査は作業ではない 中国企業の壁(その15)

       自動車向けの内装部品では、寸法や形状はもちろんですが、外観にも厳しい要求があります。特に日系自動車メーカーの場合、その厳しさは半端では...

       自動車向けの内装部品では、寸法や形状はもちろんですが、外観にも厳しい要求があります。特に日系自動車メーカーの場合、その厳しさは半端では...


QFD-TRIZ導入 ~ 市場ニーズ捉え課題を解決

♦ 他社との差別化図り、魅力的な商品を  OAフロアや住宅関連商品(シャッター、断熱物置用パネル)、福祉関連商品(トイレ用システム手すり、介...

♦ 他社との差別化図り、魅力的な商品を  OAフロアや住宅関連商品(シャッター、断熱物置用パネル)、福祉関連商品(トイレ用システム手すり、介...