工場監査・工程監査のポイントとは

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 工場監査、工程監査は委託生産(新規生産立上げ)において重要な位置づけとなります。今回は、工程監査のポイントを解説します。工場監査・工程監査はその目的によって内容は大きく異なります。そこで、手順を以下のように整理して準備を進めます。
 

1. 監査の目的別に分類

  • 新しく協力企業を開拓したいので経営状態を確認したい
  • 新製品の立ち上げなどで、その製造工程は適合しているか
  • 不良発生時の再発防止策の確認する
  • 量産開始後、工場の環境、作業方法や品質に問題ないかを確認する

2. 監査方法による分類

  •  ISO9000やISO14000のマネジメントシステムに沿った監査
  • 商品の規格や、製造手順書に沿った製造工程の監査
  • 工場設備や機械装置などの基準、法律に沿った監査
  • 両社間の契約内容に適合しているかどうかの監査
  • 独自監査項目に沿った監査
 事務的な通り一遍な監査はあまり意味がありません。目的を明確に、監査内容も絞り込んで実施します。目的を明確にされたなら、監査チェックシートを作成します。チェックシートは、あらかじめ、監査を行う相手に送付し、準備してもらうと時間が節約できます。実際の監査では、各監査項目について、現場、規定書、手順書、記録類を確認します。決まり事と、実際の現場や記録が一致していることを確認します。

3. 工程監査の限界を知る


監査
 監査項目は、生産工程の作業指示書や検査基準、作業者の教育など4Mの項目についてQCDが確保できるかどうか確認が主体になります。特に重要な点は次のようなことです。
 
  • 重要工程で作業ミスを防ぐ対策は十分か
  • 異常や不良が即座に分かるよう、見える化されているか
  • 工程、製品に異常が発見された場合、誰がどのように処理をするのか
 
 これらの3点を見極めることは難しく、本当に品質確保ができているかどうかは分かりません。いざ生産を始めると、色々と問題が発生します。では、工場診断・工程監査は実施しても意味がないのでしようか、予備知識なしに、その日に行ってその日のうちに監査し診断を下そうとしても、それは相当場数を踏んだ監査員でも難しいものです。時間もあまり取れず、いわば形ばかりの監査ならこれで済ませてしまうケースが多いのですが、では冒頭の「監査の目的」とはいったい何なのかをもう一度考えてみましょう。
 

4. 監査の重要ポイント

 工程監査を行う時、よく5Sが行き届いているか、作業標準は工程に適切に掲示されているか、設備のメンテナンスはされているかなど、あらかじめ準備した確認項目に沿って、目で見て確認をしていきます。つまり、品質に直接影響を与える日常管理がきちんとされているのかです。ところが、工場監査を行うとあらかじめ予告してある場合は、工場ではいつもにも増して、工場をきれいにしたり、監査のために、作業標準を整備したり、事前対応をしてくれていることも多いものです。これも監査の一つの方法ですが、もっと違う観点でその工場の真の姿を確認する必要があるのです。
 
 一番目に大事なことは、サプライヤーに求める品質レベルをはっきり伝えることです。これを伝えず、目先の問題点をつついているだけでは根本解決にはなりません。いつまでに、このレベルとはっきり通告し、期限になったら要求したレベルにカイゼンされているかどうか確認監査を行います。
 
 二番目に「過去一年間の活動の記録」を見ることです。監査の重要な目的の一つはこの「日常活動の記録」を確認することにあります。活動の記録とは、例えば次のようなことです。
  •  不具合発生の原因調査、対策の記録
  •  多能工の教育計画とその...

 工場監査、工程監査は委託生産(新規生産立上げ)において重要な位置づけとなります。今回は、工程監査のポイントを解説します。工場監査・工程監査はその目的によって内容は大きく異なります。そこで、手順を以下のように整理して準備を進めます。
 

1. 監査の目的別に分類

  • 新しく協力企業を開拓したいので経営状態を確認したい
  • 新製品の立ち上げなどで、その製造工程は適合しているか
  • 不良発生時の再発防止策の確認する
  • 量産開始後、工場の環境、作業方法や品質に問題ないかを確認する

2. 監査方法による分類

  •  ISO9000やISO14000のマネジメントシステムに沿った監査
  • 商品の規格や、製造手順書に沿った製造工程の監査
  • 工場設備や機械装置などの基準、法律に沿った監査
  • 両社間の契約内容に適合しているかどうかの監査
  • 独自監査項目に沿った監査
 事務的な通り一遍な監査はあまり意味がありません。目的を明確に、監査内容も絞り込んで実施します。目的を明確にされたなら、監査チェックシートを作成します。チェックシートは、あらかじめ、監査を行う相手に送付し、準備してもらうと時間が節約できます。実際の監査では、各監査項目について、現場、規定書、手順書、記録類を確認します。決まり事と、実際の現場や記録が一致していることを確認します。

3. 工程監査の限界を知る


監査
 監査項目は、生産工程の作業指示書や検査基準、作業者の教育など4Mの項目についてQCDが確保できるかどうか確認が主体になります。特に重要な点は次のようなことです。
 
  • 重要工程で作業ミスを防ぐ対策は十分か
  • 異常や不良が即座に分かるよう、見える化されているか
  • 工程、製品に異常が発見された場合、誰がどのように処理をするのか
 
 これらの3点を見極めることは難しく、本当に品質確保ができているかどうかは分かりません。いざ生産を始めると、色々と問題が発生します。では、工場診断・工程監査は実施しても意味がないのでしようか、予備知識なしに、その日に行ってその日のうちに監査し診断を下そうとしても、それは相当場数を踏んだ監査員でも難しいものです。時間もあまり取れず、いわば形ばかりの監査ならこれで済ませてしまうケースが多いのですが、では冒頭の「監査の目的」とはいったい何なのかをもう一度考えてみましょう。
 

4. 監査の重要ポイント

 工程監査を行う時、よく5Sが行き届いているか、作業標準は工程に適切に掲示されているか、設備のメンテナンスはされているかなど、あらかじめ準備した確認項目に沿って、目で見て確認をしていきます。つまり、品質に直接影響を与える日常管理がきちんとされているのかです。ところが、工場監査を行うとあらかじめ予告してある場合は、工場ではいつもにも増して、工場をきれいにしたり、監査のために、作業標準を整備したり、事前対応をしてくれていることも多いものです。これも監査の一つの方法ですが、もっと違う観点でその工場の真の姿を確認する必要があるのです。
 
 一番目に大事なことは、サプライヤーに求める品質レベルをはっきり伝えることです。これを伝えず、目先の問題点をつついているだけでは根本解決にはなりません。いつまでに、このレベルとはっきり通告し、期限になったら要求したレベルにカイゼンされているかどうか確認監査を行います。
 
 二番目に「過去一年間の活動の記録」を見ることです。監査の重要な目的の一つはこの「日常活動の記録」を確認することにあります。活動の記録とは、例えば次のようなことです。
  •  不具合発生の原因調査、対策の記録
  •  多能工の教育計画とその実績
  •  生産性を上げるための取組み内容と成果
  •  在庫削減の取組みと経過または結果 
 綺麗にまとまっていなくても、このような活動が一つでも真面目に実施されているならば、この工場は合格です。もし、口先だけの説明に終始し全く実行が伴っていなければ不合格と判断していいでしょう。そして三番目に、その工場で人材が育っているかどうかです。そして、育つ環境を経営者が与えているかどうかです。一時しのぎではなく、継続的に工場をより良くしていくためには、良い人材が必要です。それを理解し経営者が人材を育成しているかどうかです。これも活動の記録を見れば一目瞭然です。
分からない所を監査するのです。お客様に信頼されている優良企業は目に見えない所で努力した結果、今の地位を築いているはずです。

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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