QCサークル活動、効果が出る進め方とは

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 QCサークル活動は、なぜ効果の出ないマンネリ化した活動になってしまうのでしょうか。多くの工場では、多品種少量、受注生産で忙しい状態が常態化しています。しかし、間接工数の増大、取引先の値下げ要求など、売り上げや利益は伸び悩んでいます。そんな中で、日常業務と別に片手間で行う小集団活動にどんな効果が期待できるでしょうか。

 製造業の改善活動の種類は、ボトムアップの小集団活動、トップダウンで行う部門共通課題を解決するプロジェクト活動、社長の方針展開の3つです。すべての問題をQCサークル活動で解決するという考え方は間違いです。3つの活動はそれぞれ独立して行うのではなく、密接に関連しあっています。そして、改善活動は現場の一人一人が、身の回りの小さな問題を解決できる力を持っていなければ、工場としての大きな問題は解決できません。

 品質向上を目指してのQCストーリー活用は、もうおなじみのステップですが、小集団による改善活動は必ずしもこの通り進みません。その理由は、テーマを設定して活動を始めるのは、なかなか解決が難しい共通の問題や、工場全体の問題に限られるからです。このような問題は、職場の小集団の力だけでは解決しません。

 最近、企業ぐるみのデーターねつ造・改ざんの問題が大きく報道されています。実は、QCサークル活動でも一部の企業で、体裁を重視した発表用のQCストーリー作りが何の疑問もなく続けられています。サークル活動を経験された方なら、データーねつ造問題は、実は決して他人事ではない事が理解できると思います。

 QCサークル活動が、今起こっている様々なデーター改ざんにつながっていないとも限りません。もし同様な体質の上に成り立っているのであれば、すぐに「嘘のない真実の姿」のQCサークル活動に戻さなければなりません。

 QCサークル活動の目的は、職場内に結成されたサークルによる日常業務も改善活動であり、自己研さん、相互啓蒙により、「人材の育成」を図ることを目的とします。

 ものづくり現場の日常業務は、生産活動、およびその支援業務から成り立っています。その業務は毎日順調に進むとは限らず、様々な問題が発生しますが、それらに対処しながら生産を続けなければなりません。その障害は、放置することなく、解決に向けた動きも同時並行で行っていかなければなりません。そのための活動が、QCサークル活動であり、毎日の日常業務と密接に結びついています。

 多くの工場では、多品種少量、受注生産で忙しい状態が常態化しているにも関わらず、生産性は頭打ち。一人当たり売上高は伸び悩んでいます。そんな中で、日常業務とは別に改善テーマを設定して、QCストーリー作りに専念する小集団活動にどんな効果が期待できるでしょうか。
 

1. 現実とは違うQCストーリーによる改善

 QCストーリーはもうおなじみのステップですが、小集団による改善活動は必ずしもこの通り進みません。
 
QC
 
 それはなぜでしょうか。日常発生するほとんどの問題は、解決までに試行錯誤を繰り返しながら別の方法で試してみるなど、泥臭い方法で一つ一つ解決していきます。
 
QC
 
 また毎日の業務の中で「異常」や「問題」を見つけたら、すぐに解決に向けて取り組むのが正しい改善活動のやり方です。テーマを設定し目標を決めて取り組むやり方は、日常の業務では行いません。QCストーリーに沿った活動は、大きな問題、課題に取り組む「プロジェクト活動」の改善に適用します。
 
 例えば、次のように部門間の協力が必要、費用が掛かる、長い期間が掛かるなどの問題解決に遭遇します。このようなプロジェクト活動のテーマは、小集団には荷が重すぎて途中で挫折してしまいます。
 
 ・工場のしくみを新しく作る、今までのしくみを大幅に変える
 ・新しい設備を導入し、飛躍的に生産性を向上させる
 ・一部署だけでは取り組みが難しい慢性不良を解決する
  

2. QCサークル活動の変遷

 それにもかかわらず、QCストーリーに当てはめて活動を進めるのはなぜでしょうか。確かに問題解決のプロセスは、「問題を見つけ」「現状を把握し」「原因究明」「対策案立案」「試行」であり、ストーリーを整理し分かり易くするために必要な手段です。QCサークル活動が活発になった1980年代の頃は、だれもQCストーリーやQC七つ道具のことを知りませんでした。各企業は、統計的品質管理、TQCなども含め、積極的に「品質管理手法」の導入を進める中、QCサークル活動が取り入れられました。QCストーリーはその根幹を成す手法として、指導機関も積極的に普及を図って来ました。
 
 確かに導入当初は、品質管理手法を学ぶという点で一定の効果が上がり、生産現場の「カイゼン」意識が高まり、品質は世界トップレベルとなりました。しかし冒頭で解説したように、日常の問題解決の実際の姿は試行錯誤の繰り返しであり、問題が発生したら放置することなく、すぐに取り組みを開始しなければなりません。発表することが目的化した活動は、最初からQCストーリー通りに進めようとするために、日常業務とかけ離れた建前の活動に陥ってしまったのです。
 
 QC
 

3. QCサークルに何を期待するのか

 グローバル化した競争環境で生き残るために、より厳しい生産性向上や価格低減などが企業に求められるようになりました。また、労働時間の短縮にも取り組まなければならず、従来のQCサークル活動は成り立たなくなってきたのです。では一体企業は、QCサークルに何を期待しているでしょう。学習のためのサークル活動、発表のためのサークル活動から、本当の意味で日常の業務を改善するサークルへ活動のあり方を変えなければ、企業にとっても百害あって一利なしです。放置されたままになっている様々な職場の問題・課題を今すぐ解決するには、現場の管理監督層、スタッフの問題解決能力の向上が欠かせません。小集団活動は、実践的な能力を磨く絶好の教育の場と考えられます。
 
 QC
 

4. 新しい改善活動の提案

 それでは、正しい改善活動を考えてみましょう。
 
(1) 改善活動の枠組み
  • 活動期間: 特に設けない
  • 発表会: 半年に一回程度
  • 事務局: 毎月のサークルリーダー会議、サークル発表会主催
  • サークル構成: 4~5人で、リーダーとメンバー
  • 工場長: 活動全体を統括する
 

(2) 改善活動の手順

  • サークルは、年間を通して日常の仕事の中で発生する問題(ムリムラムダ・非効率・不明確など)を見つけて改善する
  • 事務局は月一回リーダー会議を開催し、各サークルの改善活動の進捗状況を確認、進捗の遅れている問題の対策を検討し工場長に報告する
  • 工場長は、サークルだけでは解決が難し問題のフォローを行う。難しい問題も放...
 
 

 QCサークル活動は、なぜ効果の出ないマンネリ化した活動になってしまうのでしょうか。多くの工場では、多品種少量、受注生産で忙しい状態が常態化しています。しかし、間接工数の増大、取引先の値下げ要求など、売り上げや利益は伸び悩んでいます。そんな中で、日常業務と別に片手間で行う小集団活動にどんな効果が期待できるでしょうか。

 製造業の改善活動の種類は、ボトムアップの小集団活動、トップダウンで行う部門共通課題を解決するプロジェクト活動、社長の方針展開の3つです。すべての問題をQCサークル活動で解決するという考え方は間違いです。3つの活動はそれぞれ独立して行うのではなく、密接に関連しあっています。そして、改善活動は現場の一人一人が、身の回りの小さな問題を解決できる力を持っていなければ、工場としての大きな問題は解決できません。

 品質向上を目指してのQCストーリー活用は、もうおなじみのステップですが、小集団による改善活動は必ずしもこの通り進みません。その理由は、テーマを設定して活動を始めるのは、なかなか解決が難しい共通の問題や、工場全体の問題に限られるからです。このような問題は、職場の小集団の力だけでは解決しません。

 最近、企業ぐるみのデーターねつ造・改ざんの問題が大きく報道されています。実は、QCサークル活動でも一部の企業で、体裁を重視した発表用のQCストーリー作りが何の疑問もなく続けられています。サークル活動を経験された方なら、データーねつ造問題は、実は決して他人事ではない事が理解できると思います。

 QCサークル活動が、今起こっている様々なデーター改ざんにつながっていないとも限りません。もし同様な体質の上に成り立っているのであれば、すぐに「嘘のない真実の姿」のQCサークル活動に戻さなければなりません。

 QCサークル活動の目的は、職場内に結成されたサークルによる日常業務も改善活動であり、自己研さん、相互啓蒙により、「人材の育成」を図ることを目的とします。

 ものづくり現場の日常業務は、生産活動、およびその支援業務から成り立っています。その業務は毎日順調に進むとは限らず、様々な問題が発生しますが、それらに対処しながら生産を続けなければなりません。その障害は、放置することなく、解決に向けた動きも同時並行で行っていかなければなりません。そのための活動が、QCサークル活動であり、毎日の日常業務と密接に結びついています。

 多くの工場では、多品種少量、受注生産で忙しい状態が常態化しているにも関わらず、生産性は頭打ち。一人当たり売上高は伸び悩んでいます。そんな中で、日常業務とは別に改善テーマを設定して、QCストーリー作りに専念する小集団活動にどんな効果が期待できるでしょうか。
 

1. 現実とは違うQCストーリーによる改善

 QCストーリーはもうおなじみのステップですが、小集団による改善活動は必ずしもこの通り進みません。
 
QC
 
 それはなぜでしょうか。日常発生するほとんどの問題は、解決までに試行錯誤を繰り返しながら別の方法で試してみるなど、泥臭い方法で一つ一つ解決していきます。
 
QC
 
 また毎日の業務の中で「異常」や「問題」を見つけたら、すぐに解決に向けて取り組むのが正しい改善活動のやり方です。テーマを設定し目標を決めて取り組むやり方は、日常の業務では行いません。QCストーリーに沿った活動は、大きな問題、課題に取り組む「プロジェクト活動」の改善に適用します。
 
 例えば、次のように部門間の協力が必要、費用が掛かる、長い期間が掛かるなどの問題解決に遭遇します。このようなプロジェクト活動のテーマは、小集団には荷が重すぎて途中で挫折してしまいます。
 
 ・工場のしくみを新しく作る、今までのしくみを大幅に変える
 ・新しい設備を導入し、飛躍的に生産性を向上させる
 ・一部署だけでは取り組みが難しい慢性不良を解決する
  

2. QCサークル活動の変遷

 それにもかかわらず、QCストーリーに当てはめて活動を進めるのはなぜでしょうか。確かに問題解決のプロセスは、「問題を見つけ」「現状を把握し」「原因究明」「対策案立案」「試行」であり、ストーリーを整理し分かり易くするために必要な手段です。QCサークル活動が活発になった1980年代の頃は、だれもQCストーリーやQC七つ道具のことを知りませんでした。各企業は、統計的品質管理、TQCなども含め、積極的に「品質管理手法」の導入を進める中、QCサークル活動が取り入れられました。QCストーリーはその根幹を成す手法として、指導機関も積極的に普及を図って来ました。
 
 確かに導入当初は、品質管理手法を学ぶという点で一定の効果が上がり、生産現場の「カイゼン」意識が高まり、品質は世界トップレベルとなりました。しかし冒頭で解説したように、日常の問題解決の実際の姿は試行錯誤の繰り返しであり、問題が発生したら放置することなく、すぐに取り組みを開始しなければなりません。発表することが目的化した活動は、最初からQCストーリー通りに進めようとするために、日常業務とかけ離れた建前の活動に陥ってしまったのです。
 
 QC
 

3. QCサークルに何を期待するのか

 グローバル化した競争環境で生き残るために、より厳しい生産性向上や価格低減などが企業に求められるようになりました。また、労働時間の短縮にも取り組まなければならず、従来のQCサークル活動は成り立たなくなってきたのです。では一体企業は、QCサークルに何を期待しているでしょう。学習のためのサークル活動、発表のためのサークル活動から、本当の意味で日常の業務を改善するサークルへ活動のあり方を変えなければ、企業にとっても百害あって一利なしです。放置されたままになっている様々な職場の問題・課題を今すぐ解決するには、現場の管理監督層、スタッフの問題解決能力の向上が欠かせません。小集団活動は、実践的な能力を磨く絶好の教育の場と考えられます。
 
 QC
 

4. 新しい改善活動の提案

 それでは、正しい改善活動を考えてみましょう。
 
(1) 改善活動の枠組み
  • 活動期間: 特に設けない
  • 発表会: 半年に一回程度
  • 事務局: 毎月のサークルリーダー会議、サークル発表会主催
  • サークル構成: 4~5人で、リーダーとメンバー
  • 工場長: 活動全体を統括する
 

(2) 改善活動の手順

  • サークルは、年間を通して日常の仕事の中で発生する問題(ムリムラムダ・非効率・不明確など)を見つけて改善する
  • 事務局は月一回リーダー会議を開催し、各サークルの改善活動の進捗状況を確認、進捗の遅れている問題の対策を検討し工場長に報告する
  • 工場長は、サークルだけでは解決が難し問題のフォローを行う。難しい問題も放置することなく、解決に向けて何らかの方策を講ずる
  • 事務局は半年に一回程度発表会を開催し、開催1か月前に、各サークルはそれまでの期間で取り組んだ問題の中から一つを選び、発表テーマとして登録する
  • 事務局は、発表会を開催する
  • 発表内容は、問題、原因、試行・対策結果(経過)を含む内容とし、資料作りに時間を掛けない(無理にQCストーリーにまとめると必ず虚偽の内容が盛り込まれる)
  • 事務局は、年間を通して解決済みの問題、未解決の問題を層別して工場長、経営層へ報告する(すべての問題を放置せず解決方向へ持っていく)
 
 上記提案のポイントは、目的を発表のための活動ではなく、問題を放置させない活動に持っていく事です。そのことによって、小集団として本当の意味での問題解決力が養われます。また、小集団では解決が難しい問題も、管理層や工場のトップがフォローし工場全体の問題として取り上げ、放置されることなく解決を図って行く仕組み作りも重要なポイントです。
 

 日常業務と密着した新しいサークル活動が必要です。ものづくり現場の忙しい業務の中で、このような活動を根付かせることは容易ではありません。それには経営層、管理層の一層の支援、アドバイスが必要であることも付け加えておきたいと思います。   

 

 最後に、次の記事:新しいQCサークル活動の在り方とはを参考にご覧ください。

 

 
 
 

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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