品質問題をゼロにする方法(その1)

投稿日

品質マネジメント

 

1. 品質問題の未然防止

 品質問題は次のような一連の流れで起こります。

 

  ストレスがかかり ➡ 故障メカニズムにより ➡ 故障モードが発生する

 

 例えば樹脂の事例で言えば、

 ストレス:高温、 故障メカニズム:熱劣化で亀裂、 故障モード:液漏れで、ガソリンなら 火災。 (製品によって変わる)

 電子回路絶縁樹脂の場合は、ショートで機能停止という事になります。

 このような背景で、品質問題を未然に防止するには、まずストレスの調査が必要になります。

 

 製品がどんな使われ方をするのか、上記事例で言えば、温度は何度まで上がる可能性があるか、調査する事が重要になります。ストレスが無ければ故障は起きません。高温にならなければ熱劣化で亀裂が発生することはありません。

 ストレスを調べたら、次はどんな故障メカニズムがあるか、問題が起こる可能性のある故障メカニズムを取り上げることです。樹脂の場合、熱劣化、加水分解、クリープ、環境応力割れ、銅害、低温脆性など、たくさんの故障メカニズムがあります。

 この起こりうる故障メカニズムを全て取り上げる事が非常に難しい点です。樹脂の専門家がチェックリストで全て取り上げればできるかもしれません。ストレスも故障メカニズムごとに違いますから、例えば応力はどの位かかるのか、溶剤や水はかかるのかなど、調査する必要があります。

 故障メカニズムが分かれば、自分の設計した製品の故障モードは容易にわかると思います。

 

 品質問題を未然に防止するには、これらの沢山の情報収集と集約、記述が必要となります。誰でも理解できるように、ストレス、故障メカニズム、故障モードが分かるように表記し、用語、定義、キーワードの設定を統一する必要があります。また、過去のトラブル事例が集まる組織体制も必要です。私が所属していた(株)デンソーでは、私は部の品質関係業務を実施する、品質リーダーという業務を実施していましたが、全社のトラブル事例も、担当事業部のトラブル事例もすべて品質リーダーに連絡が来る組織でした。

 また、品質問題の発生原因を明確化すると、ハード面とソフト面の原因があることが分かります。樹脂の熱劣化の事例で言えば、ハード面は”熱劣化で亀裂”という故障メカニズムに気づかなかっ...

品質マネジメント

 

1. 品質問題の未然防止

 品質問題は次のような一連の流れで起こります。

 

  ストレスがかかり ➡ 故障メカニズムにより ➡ 故障モードが発生する

 

 例えば樹脂の事例で言えば、

 ストレス:高温、 故障メカニズム:熱劣化で亀裂、 故障モード:液漏れで、ガソリンなら 火災。 (製品によって変わる)

 電子回路絶縁樹脂の場合は、ショートで機能停止という事になります。

 このような背景で、品質問題を未然に防止するには、まずストレスの調査が必要になります。

 

 製品がどんな使われ方をするのか、上記事例で言えば、温度は何度まで上がる可能性があるか、調査する事が重要になります。ストレスが無ければ故障は起きません。高温にならなければ熱劣化で亀裂が発生することはありません。

 ストレスを調べたら、次はどんな故障メカニズムがあるか、問題が起こる可能性のある故障メカニズムを取り上げることです。樹脂の場合、熱劣化、加水分解、クリープ、環境応力割れ、銅害、低温脆性など、たくさんの故障メカニズムがあります。

 この起こりうる故障メカニズムを全て取り上げる事が非常に難しい点です。樹脂の専門家がチェックリストで全て取り上げればできるかもしれません。ストレスも故障メカニズムごとに違いますから、例えば応力はどの位かかるのか、溶剤や水はかかるのかなど、調査する必要があります。

 故障メカニズムが分かれば、自分の設計した製品の故障モードは容易にわかると思います。

 

 品質問題を未然に防止するには、これらの沢山の情報収集と集約、記述が必要となります。誰でも理解できるように、ストレス、故障メカニズム、故障モードが分かるように表記し、用語、定義、キーワードの設定を統一する必要があります。また、過去のトラブル事例が集まる組織体制も必要です。私が所属していた(株)デンソーでは、私は部の品質関係業務を実施する、品質リーダーという業務を実施していましたが、全社のトラブル事例も、担当事業部のトラブル事例もすべて品質リーダーに連絡が来る組織でした。

 また、品質問題の発生原因を明確化すると、ハード面とソフト面の原因があることが分かります。樹脂の熱劣化の事例で言えば、ハード面は”熱劣化で亀裂”という故障メカニズムに気づかなかったことが原因です。ソフト面は耐久試験品に亀裂の兆候があったのに、現地現物でよく見なかったので気づかなかったことが原因です。チーム活動で物を見るという会議のやり方が良くなかった、こういうやり方をすれば、この問題は防げたという事例が多いのです。人材育成、守れないルールの改善、マネジメント、会議のやり方改善をしておけば、この問題は防げたという事例が多いのも事実です。ソフト面の改善もしないと、品質問題はゼロになりません。

 次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

本田 陽広

品質問題を“0”にする設計と設計審査の考え方をお伝えします 

品質問題を“0”にする設計と設計審査の考え方をお伝えします 


「品質マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
日本のものづくり品質を再確認しよう

 最近、日本のものづくり企業の品質問題の多さに危機感を感じています。日本は資源の乏しい国であり、資源を輸入し製品加工して輸出する、加工貿易型の国です。その...

 最近、日本のものづくり企業の品質問題の多さに危機感を感じています。日本は資源の乏しい国であり、資源を輸入し製品加工して輸出する、加工貿易型の国です。その...


工場の問題解決と4M要素

 4Mとは、人(Man)機械(Machine)方法(Method)材料(Material)のこと、5Mとは、4Mに測定・検査(Measurement)を加...

 4Mとは、人(Man)機械(Machine)方法(Method)材料(Material)のこと、5Mとは、4Mに測定・検査(Measurement)を加...


相次ぐ品質問題 中小製造業の課題と解決への道筋(その2)

  【中小製造業の課題と解決への道筋 連載目次】 1. 世界一の品質はなぜ生まれたか 2. 相次ぐ品質問題 3. モグラ叩きの品...

  【中小製造業の課題と解決への道筋 連載目次】 1. 世界一の品質はなぜ生まれたか 2. 相次ぐ品質問題 3. モグラ叩きの品...


「品質マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
品質管理 中国工場管理の基本事例(その16)

  ◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その6)  中国工場のスタッフについてみています。これまで作業者や管理者を取り上げ...

  ◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その6)  中国工場のスタッフについてみています。これまで作業者や管理者を取り上げ...


[エキスパート会員インタビュー記事]現実的な改善を通じたものづくり支援の実践(福富 昇 氏)

    ●はじめに● 日本の産業界は、多様な課題を抱える中小企業の存在によって支えられています。これらの企業が直面する様々な...

    ●はじめに● 日本の産業界は、多様な課題を抱える中小企業の存在によって支えられています。これらの企業が直面する様々な...


品質確保の方法は作業者レベルで変わる 中国企業の壁(その14)

   天津工場の作業者レベルは、東莞やシンセンのそれに比べると低いという内容の話を前に書きました。ただし、これは作業者たちがさぼっているとかではあり...

   天津工場の作業者レベルは、東莞やシンセンのそれに比べると低いという内容の話を前に書きました。ただし、これは作業者たちがさぼっているとかではあり...