インテリジェンス・サイクルと特許情報調査活動(その1)

更新日

投稿日

 インテリジェンス・サイクルと特許情報調査活動について、1.インテリジェンス・サイクル、2. A社における特許情報調査活動に分けて解説します。今回はその1です。

1.インテリジェンス・サイクル

 
 インテリジェンスという言葉は一般の読者にとって、米国の政府情報機関CIA(セントラル・インテ リジェンス・エージェンシー)等を想起させるかも知れなません。ややおどろおどろしい響きを持った言葉でしょうか。
 
 米国企業では、コンペティティブ・イ ンテリジェンス活動なるものの導入が盛んに行われています。そして、米国におけるコンペティティブ・インテリジェンス専門家の養成機関であるACI (Academy of Competitive Intelligence)の定義によれば、コンペティティブ・インテリジェンスとは、「イ ンフォメーションを体系化して現れる知識で、企業の判断を可能とするもの」を意味します。[1]
 
 そのリーダーの多くは、CIAをはじめとする米国政府の情報組織の出身者であると聞くと、驚かれるむきも多いのではないでしょうか。しかしながら、翻って考えれば東洋には古くからインテリジェンスを尊ぶ思想が存在しました。
 
 日本の経営者もしきりにインテリジェンスの重要性を口にしています。曰く、「彼を知り己を知れば、百戦して殆 あやうからず」[2]とでは、実際に日本企業はどれだけインテリジェンスを重視し、企業活動に活用しているでしょうか。
 
 筆者は残念ながら十分な情報を持ち合わせていませんが、「インテリジェンスを作成する部門」コンペティティブ・インテリジェンス領域での呼称に従って、以下、「情報サイド」と呼ぶを正式に持ち、組織的な活動を行っている事例は極めて少ないでしょう。
 
  生の素材であるインフォメーションをインテリジェンスに転化させるためには、インフォメーションの収集、加工、分析を行わなければなりません。グローバル化した世界経済の下で企業活動に役立つインテリジェンスを作りだすためには、大量のインフォメー ションを処理することが必要です。したがって、 インテリジェンスを必要とする経営者(コンペティ ティブ・インテリジェンス領域では彼らを「カスタ マー」と呼称している)が自ら、この作業を実施するのは不可能でしょう。そこで、インテリジェンスを作成する情報サイドの設置が必要となります。図1は、カスタマーの要求に基づいて情報サイドがインテリジェンスを作成するプロセス(以下、インテリ ジェンス・サイクルと呼ぶ)を示したものです。
 
               情報セキュリテイ
図1.インテリジェンス・サイクル   
 
 次回のその2では、今回のイ...
 インテリジェンス・サイクルと特許情報調査活動について、1.インテリジェンス・サイクル、2. A社における特許情報調査活動に分けて解説します。今回はその1です。

1.インテリジェンス・サイクル

 
 インテリジェンスという言葉は一般の読者にとって、米国の政府情報機関CIA(セントラル・インテ リジェンス・エージェンシー)等を想起させるかも知れなません。ややおどろおどろしい響きを持った言葉でしょうか。
 
 米国企業では、コンペティティブ・イ ンテリジェンス活動なるものの導入が盛んに行われています。そして、米国におけるコンペティティブ・インテリジェンス専門家の養成機関であるACI (Academy of Competitive Intelligence)の定義によれば、コンペティティブ・インテリジェンスとは、「イ ンフォメーションを体系化して現れる知識で、企業の判断を可能とするもの」を意味します。[1]
 
 そのリーダーの多くは、CIAをはじめとする米国政府の情報組織の出身者であると聞くと、驚かれるむきも多いのではないでしょうか。しかしながら、翻って考えれば東洋には古くからインテリジェンスを尊ぶ思想が存在しました。
 
 日本の経営者もしきりにインテリジェンスの重要性を口にしています。曰く、「彼を知り己を知れば、百戦して殆 あやうからず」[2]とでは、実際に日本企業はどれだけインテリジェンスを重視し、企業活動に活用しているでしょうか。
 
 筆者は残念ながら十分な情報を持ち合わせていませんが、「インテリジェンスを作成する部門」コンペティティブ・インテリジェンス領域での呼称に従って、以下、「情報サイド」と呼ぶを正式に持ち、組織的な活動を行っている事例は極めて少ないでしょう。
 
  生の素材であるインフォメーションをインテリジェンスに転化させるためには、インフォメーションの収集、加工、分析を行わなければなりません。グローバル化した世界経済の下で企業活動に役立つインテリジェンスを作りだすためには、大量のインフォメー ションを処理することが必要です。したがって、 インテリジェンスを必要とする経営者(コンペティ ティブ・インテリジェンス領域では彼らを「カスタ マー」と呼称している)が自ら、この作業を実施するのは不可能でしょう。そこで、インテリジェンスを作成する情報サイドの設置が必要となります。図1は、カスタマーの要求に基づいて情報サイドがインテリジェンスを作成するプロセス(以下、インテリ ジェンス・サイクルと呼ぶ)を示したものです。
 
               情報セキュリテイ
図1.インテリジェンス・サイクル   
 
 次回のその2では、今回のインテリジェンス・サイクルの続きとして、改良されたインテリジェンス・サイクルを解説します。
 
参考文献
[1] 北岡元: ビジネス・インテリジェンス-未来を予想するシナリオ分析の技法,、東洋経済新報社、p.18(2009)
[2] 守屋洋: 孫子の兵法、 産能大出版部、 p.61(1979)
 
  この文書は、科学技術振興機構:「情報管理」vol.53の記事より、筆者が改変したものです。
       

   続きを読むには・・・


この記事の著者

鶴見 隆

三位一体の特許情報活動のパイオニア、戦略的データベースの構築を通じて企業の知財力アップを支援します!

三位一体の特許情報活動のパイオニア、戦略的データベースの構築を通じて企業の知財力アップを支援します!


「知的財産マネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
商標調査 知財経営の実践(その32)

  1. 知財の持つ価値   知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営...

  1. 知財の持つ価値   知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営...


商標権の活用戦略 知財経営の実践(その30)

  1. 知財の持つ価値   知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営...

  1. 知財の持つ価値   知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営...


ブランドの権利を調べるときの考え方

◆ブランドの権利を調べるときの考え方         ~ブランドの権利は、商標、意匠、品種登録のどれを調べるのか~  「ある農産物をブランド化した...

◆ブランドの権利を調べるときの考え方         ~ブランドの権利は、商標、意匠、品種登録のどれを調べるのか~  「ある農産物をブランド化した...


「知的財産マネジメント」の活用事例

もっと見る
知的財産における三位一体の戦略について【食品業界の事例】

1.はじめに  今年(2012年)の6月に切り餅の特許権侵害訴訟についてご紹介させていただきましたが、12月になり、またも食品業界において特許権侵害訴訟...

1.はじめに  今年(2012年)の6月に切り餅の特許権侵害訴訟についてご紹介させていただきましたが、12月になり、またも食品業界において特許権侵害訴訟...


中小企業の特許技術導入について ―森田テックの事例―

1.はじめに  経済のグローバル化など外部環境が大きな変革期を迎える中で、中小企業も、下請け型を脱して、自社固有製品の開発を行うことが必要となりつつあり...

1.はじめに  経済のグローバル化など外部環境が大きな変革期を迎える中で、中小企業も、下請け型を脱して、自社固有製品の開発を行うことが必要となりつつあり...


特許解析、ミクロマップの面白さ

◆ 特許解析、マクロマップからミクロマップへ  わたくしが研究開発から離れ、知的財産部(知財部)に異動してきたきっかけは、世界中から集まる発明情報を...

◆ 特許解析、マクロマップからミクロマップへ  わたくしが研究開発から離れ、知的財産部(知財部)に異動してきたきっかけは、世界中から集まる発明情報を...