『わかりにくい案内図』から学ぶこと

1. 案内図の表示が上下逆さま

 弊社は埼玉県所沢市にあります。昨年の夏頃、所沢駅西口の駅前の交差点に写真①のような案内板が設置されました。この案内は「廃道のお知らせ」です。案内板の中には、廃道の位置を示す案内図も表示されていました。
 
 
 この案内図がわかりにくいのです。それは、この案内図が見る人の立場に立って表示されていないからです。なぜ、わかりにくいのか?・・・、それは、案内図の表示が上下逆さまだからです。写真①を再度見てください。案内板の右上の方向に信号機が見えます(小さい表示ですが、青信号になっています)。写真①の案内板の位置からこの信号機の方向に向かって歩くことを考えてください。
 
 ここで、案内板の中に表示されている案内図を拡大した写真を示します。以下の左側に示した写真②です。写真②で赤く着色してある部分が廃道です。
 
 
 先ほど書いた、写真①の案内板の位置から信号機に向かって歩く方向をこの写真②の案内図で考えると、この方向は、案内図の中で上から下に向かって歩く方向です。すなわち、これは、案内図の中の「現在地(赤丸)」と書いてある地点から、「ワルツ所沢」と書いてある方向に久米所沢線上を歩くことです。
 
 そのため、写真①の案内板の位置に立って廃道の位置(赤く着色してある部分)を確認するためには、頭の中で案内図の上下を逆さまにする必要があります。写真①の案内板の位置から見ると廃道はその先にあります。しかし、案内図では廃道が現在地の手前にあるようになっているからです。これでは頭の中が混乱します。写真②と写真①を並べで表示したのでこのことを確認してください。
 
 しかし、写真①の位置で、以下の左側に示した写真③のような向きで案内図が表示されていたらどうでしょうか。
 
 
 
 このように表示された案内図ならば廃道の位置(赤く着色してある部分)がすぐにわかります。写真①の案内板の位置から見ると廃道はその先にあります。案内図でも廃道の位置が現在地の先にあるからです。写真③と写真①を並べで表示したのでこのことを確認してください。
 

2. 北を上にして案内図を描く

 写真②に示したようなわかりにくい案内図を表示した理由は、「北を上にして地図を描く」という考え方に基づき描かれた案内図を表示したからです。通常、北を上にして地図を描きます。この案内図は、この通常の考え方に基づき描かれたのだと思います。
 
 しかし、これは、地図を描くときの絶対条件(ルール)ではありません。どのような方向を上にして地図を描いても問題はありません。案内図を見る人の立場に立ち、見る人がわかりやすいように案内図を描くことを優先すれば、写真③のように、今回の場合には北を下にして案内図を描くべきです。
 
 「この案内図は北が下になっている。間違っているから修正しろ」のようなクレームが市役所にくることを心配するならば、北を下にして案内図を描いた理由を簡単に案内板に書いておけば問題はありません。
 

3. 『わかりにくい案内図』から学ぶこと

 今回の『わかりにくい案内図』から学ぶことは、「見る人の立場に立って案内図を描くことが重要」ということです。これは、前回の記事:「わかりやすい文書を書くうえで最も重要なこと(2017年12月27日に掲載)」の中で書いたことと同じ考え方です(以下参照)。
 
 わかりやすい文書を書くうえで最も重要なことは、“書き手”と“読み手”の違いを認識したうえで、読み手の立場に立って文書を書くことです。
...
 
 ◎例えば、以下のような文を書いたとします。
 
 “今月販売予定のスマートフォンは、高齢者のお客様の利便性を考えて設計された製品です。”
 
 読み手の立場でこれを読むことを考えると、「“お客様の利便性”と書いたらこの意味がわかりにくいだろうな」と気が付くと思います。そこで、例えば、以下のような文に修正すると思います。
 
 “今月販売予定のスマートフォンは、高齢者のお客様が使いやすいように、テンキーが、従来型に比べて1.2倍大きく表示されように設計された製品です。”
 
 今回の“わかりにくい案内図”から、読み手の立場に立って文書を書くことの重要性を改めて認識してください。
 
 JTAPCOブログ、2017年8月19日(ブログのテーマ「わかりにくい案内図」)のブログに基づき、筆者がこれを改変して本稿をまとめました。
  

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