「アウトソーシングを過信する」とは(その2)

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SCM 前回のその1に続いて解説します。
 

4. アウトソース化のステップ

 物流アウトソースをするにあたって仕様書を作成することや物流会社を評価するなど、荷主会社としてやるべきことについてお話させていただきました。今回は物流アウトソースの手順についてお話をさせていただきたいと思います。物流アウトソースするにあたり最初にすべきことは候補会社の選定です。荷主会社が仕様書を提示して物流会社から提案してもらうのですが、その提案の依頼先を決めなければなりません。
 
 まず候補会社になりうる会社に対してRFIを行います。このRFIは Request for information の略で情報提供依頼という意味です。その会社がどのような会社なのかがわからなければ不安で仕方ありませんよね。ですから自分たちの知りたいと思っていることを情報提供依頼書で物流会社にお願いするのです。このRFIのカテゴリー的にはSQDCM、つまり安全、品質、デリバリー、コスト、マネジメントが良いと思います。そしてそれぞれのカテゴリーごとに質問を作成します。前回ご紹介した物流会社の評価項目とラップしても構いませんので、質問項目を設定していきましょう。評価方法も前回ご紹介した方法と同様で問題ありません。つまりRFIでいったん物流会社の回答を集めることで、その会社の評価ができてしまうのです。回答をもらう時には評価と同様にその回答を裏付ける書類を付けてもらいましょう。
 
 このRFIの段階でぜひ併せて実施しておきたいことがあります。それが物流会社訪問です。物流会社を実際に訪問し、物流現場を見せてもらうとともに経営者へのインタビューを行います。物流現場を見せてもらうことで実際に業務を発注した時に安心して仕事を任せることができるかどうかを判断します。また経営者インタビューを行うことで、自社の物流を責任もってやっていただけるか、自社のポリシーと合っているかどうかを確認するのです。
 

5. RFPの実行と物流現場訪問

 物流アウトソースは時間をかけてでも慎重に実施していきましょう。面倒くさいから丸投げ、では失敗することは必至です。RFIの提出と物流会社訪問のプロセスは大変重要です。物流会社の物流現場に行ってみたら5Sができていない、管理帳票も張り出されていない、床にはフォークリフトのスリップ跡、フォークリフトは傷だらけ・・・、こんな会社が多数あることも事実なのです。訪問した際にこういった現象が見られたら、いくらRFIの回答が立派だったとしても取引はやめておきましょう。自社の荷物がどう扱われるかは明らかです。物流現場を見る際には必ずチェックシートを持っていきましょう。そこで一つ一つ物流のパフォーマンスを確認していきます。
 
 在庫管理の4原則はできているか、安全に関する標語が掲示されているか、品質のポイントが急所として掲示されているか、仕事は標準時間が決められているか等々、物流会社評価表と同様に4段階または5段階で採点できるようにチェックシートを作成しておくと良いと思います。RFIの回答、物流現場チェックシートによる現場評価、物流会社経営者との面談を通した経営者の思いなどを総合し、仕様書を提示すべき会社を絞り込みましょう。そしていよいよ仕様書の提示になります。この目的は価格を提示してもらうことですが、同時に自社に対してどのような提案ができるかについてもプレゼンテーションしてもらうと良いでしょう。価格提示を求めることをRFQ(Request for quotation)と言います。そして物流会社からどのようなサービスや改善を提供してもらえるかどうかについて提示を求めることをRFP(Request for proposal)と言います。
 
 このRFPはその物流会社の意気込みやレベルを把握できますので、単なる見積書だけではなく、プレゼンテーションを実施してもらうことをお勧めします。このプレゼンテーションの中で今まで自分たちが気づかなかったような改善アイデアが出てくるかどうかがポイントですね。物流のプロの視点から的確なアドバイスができる会社を選んでおけば、後々アウトソースの効果を実感できると思います。
 

6. アウトソース先の総合的に判断

 物流会社に仕様書を提示する際には必ず対象会社を集めて「仕様説明会」を実施しましょう。すべての会社に同じ情報を流すことで理解の共通化と公平性を確保することが可能となるからです。できればその場で質問を受け付け、すべての会社にその回答が伝わるようにした方が良いと思います。後日物流会社からプレゼンテーションを受けるとともに価格見積もりをもらった段階で最終選考に入ります。ここでしっかりと準備しておかなければならないことがあります。それが選考評価基準です。その基準に従って、公正に評価を行うことが重要です。この評価に恣意性を入れないことを心がけておきましょう。
 
 よくアウトソース先を選定する際に価格だけで決めてしまう会社を見かけます。しかしこれは非常に危険です。なぜなら初めての取引先であれば「ハネムーン価...
SCM 前回のその1に続いて解説します。
 

4. アウトソース化のステップ

 物流アウトソースをするにあたって仕様書を作成することや物流会社を評価するなど、荷主会社としてやるべきことについてお話させていただきました。今回は物流アウトソースの手順についてお話をさせていただきたいと思います。物流アウトソースするにあたり最初にすべきことは候補会社の選定です。荷主会社が仕様書を提示して物流会社から提案してもらうのですが、その提案の依頼先を決めなければなりません。
 
 まず候補会社になりうる会社に対してRFIを行います。このRFIは Request for information の略で情報提供依頼という意味です。その会社がどのような会社なのかがわからなければ不安で仕方ありませんよね。ですから自分たちの知りたいと思っていることを情報提供依頼書で物流会社にお願いするのです。このRFIのカテゴリー的にはSQDCM、つまり安全、品質、デリバリー、コスト、マネジメントが良いと思います。そしてそれぞれのカテゴリーごとに質問を作成します。前回ご紹介した物流会社の評価項目とラップしても構いませんので、質問項目を設定していきましょう。評価方法も前回ご紹介した方法と同様で問題ありません。つまりRFIでいったん物流会社の回答を集めることで、その会社の評価ができてしまうのです。回答をもらう時には評価と同様にその回答を裏付ける書類を付けてもらいましょう。
 
 このRFIの段階でぜひ併せて実施しておきたいことがあります。それが物流会社訪問です。物流会社を実際に訪問し、物流現場を見せてもらうとともに経営者へのインタビューを行います。物流現場を見せてもらうことで実際に業務を発注した時に安心して仕事を任せることができるかどうかを判断します。また経営者インタビューを行うことで、自社の物流を責任もってやっていただけるか、自社のポリシーと合っているかどうかを確認するのです。
 

5. RFPの実行と物流現場訪問

 物流アウトソースは時間をかけてでも慎重に実施していきましょう。面倒くさいから丸投げ、では失敗することは必至です。RFIの提出と物流会社訪問のプロセスは大変重要です。物流会社の物流現場に行ってみたら5Sができていない、管理帳票も張り出されていない、床にはフォークリフトのスリップ跡、フォークリフトは傷だらけ・・・、こんな会社が多数あることも事実なのです。訪問した際にこういった現象が見られたら、いくらRFIの回答が立派だったとしても取引はやめておきましょう。自社の荷物がどう扱われるかは明らかです。物流現場を見る際には必ずチェックシートを持っていきましょう。そこで一つ一つ物流のパフォーマンスを確認していきます。
 
 在庫管理の4原則はできているか、安全に関する標語が掲示されているか、品質のポイントが急所として掲示されているか、仕事は標準時間が決められているか等々、物流会社評価表と同様に4段階または5段階で採点できるようにチェックシートを作成しておくと良いと思います。RFIの回答、物流現場チェックシートによる現場評価、物流会社経営者との面談を通した経営者の思いなどを総合し、仕様書を提示すべき会社を絞り込みましょう。そしていよいよ仕様書の提示になります。この目的は価格を提示してもらうことですが、同時に自社に対してどのような提案ができるかについてもプレゼンテーションしてもらうと良いでしょう。価格提示を求めることをRFQ(Request for quotation)と言います。そして物流会社からどのようなサービスや改善を提供してもらえるかどうかについて提示を求めることをRFP(Request for proposal)と言います。
 
 このRFPはその物流会社の意気込みやレベルを把握できますので、単なる見積書だけではなく、プレゼンテーションを実施してもらうことをお勧めします。このプレゼンテーションの中で今まで自分たちが気づかなかったような改善アイデアが出てくるかどうかがポイントですね。物流のプロの視点から的確なアドバイスができる会社を選んでおけば、後々アウトソースの効果を実感できると思います。
 

6. アウトソース先の総合的に判断

 物流会社に仕様書を提示する際には必ず対象会社を集めて「仕様説明会」を実施しましょう。すべての会社に同じ情報を流すことで理解の共通化と公平性を確保することが可能となるからです。できればその場で質問を受け付け、すべての会社にその回答が伝わるようにした方が良いと思います。後日物流会社からプレゼンテーションを受けるとともに価格見積もりをもらった段階で最終選考に入ります。ここでしっかりと準備しておかなければならないことがあります。それが選考評価基準です。その基準に従って、公正に評価を行うことが重要です。この評価に恣意性を入れないことを心がけておきましょう。
 
 よくアウトソース先を選定する際に価格だけで決めてしまう会社を見かけます。しかしこれは非常に危険です。なぜなら初めての取引先であれば「ハネムーン価格」を提示してくることがよくあるからです。
価格以外の要素はRFIや現場チェックなどである程度は把握できていますので、それほど危険度は高いわけではないのかもしれません。しかし最終的には価格だけではなく、総合的に判断することをお勧めします。判断材料として、「技術点」「価格点」「提案点」の3つのカテゴリーを設けると良いのではないかと思います。
 
 「技術点」では自社の業務を行ってもらうための物流インフラの状況や物流技術力などを評価します。このウエイトは30%くらいでいかがでしょうか。「価格点」はそれだけの評価は危険ですが一方で重要な要素であることに変わりはありません。提示した仕様に合わせた価格なので、各社のレベルを比較しやすい順に評価します。ウエイトは40%くらいで良いと思います。「提案点」はプレゼンテーションの中で報告してもらう提案の内容を評価します。今後長い付き合いを行っていくに当たってはこの提案を重視すべきです。ウエイトは30%くらいに置いておきましょう。これらのカテゴリーの点数を合計して「数字」で判断します。繰り返しになりますが、恣意性を排除し評価するための基準が大切です。あらかじめの準備をしっかりと行うことで物流アウトソースの成功につながるのです。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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