酵素反応による脂肪酸製造のパラメータ設計事例

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 これは2012年の品質工学研究発表大会で、ヱスケー石鹸株式会社秋元美由紀さんが発表した「酵素反応による脂肪酸製造のパラメータ設計」を、要約掲載したものです。化学反応の事例は多くなく貴重です。

1.技術と課題

 石鹸の製造法の一つである中和法で使う脂肪酸は、従来外部から購入していましたが、油脂産地の特定、コスト削減のために、油脂からの社内加工を試みる事としました。

2.酵素反応の原理と機能、実験

 初めに酵素による牛脂の分解反応において、脂肪酸を高収率で得ることを目的に、制御因子と誤差因子を直交表の内側に配置して実験し、ある程度の傾向は掴めました。

 次に反応速度が牛脂の残存率に比例することを基本機能とし、反応時間を信号因子、牛脂の精製度を誤差因子として、動特性の実験を行いました。 評価特性である残存率pは反応時間に対して対数的に減少するため、Y=-logpという変換値Yを使って直線性を出しました。

3.実験結果

  解析の結果、感度に関しては撹拌速度の影響が極めて大きく、その他の因子含めて最適組み合わせを設定して確認実験したところ、比較条件に対するSN比の利得が8.96dbでほぼ推定値と一致し、感度の利得5.37dbは推定値より22dbも小さかったものの、大きな改善が達成できました。 

4.パラメータ設計の成果

  感度の向上による処理時間短縮で1トン当たりのコスト78400円が43400円になっただけでなく、SN比向上による...

 これは2012年の品質工学研究発表大会で、ヱスケー石鹸株式会社秋元美由紀さんが発表した「酵素反応による脂肪酸製造のパラメータ設計」を、要約掲載したものです。化学反応の事例は多くなく貴重です。

1.技術と課題

 石鹸の製造法の一つである中和法で使う脂肪酸は、従来外部から購入していましたが、油脂産地の特定、コスト削減のために、油脂からの社内加工を試みる事としました。

2.酵素反応の原理と機能、実験

 初めに酵素による牛脂の分解反応において、脂肪酸を高収率で得ることを目的に、制御因子と誤差因子を直交表の内側に配置して実験し、ある程度の傾向は掴めました。

 次に反応速度が牛脂の残存率に比例することを基本機能とし、反応時間を信号因子、牛脂の精製度を誤差因子として、動特性の実験を行いました。 評価特性である残存率pは反応時間に対して対数的に減少するため、Y=-logpという変換値Yを使って直線性を出しました。

3.実験結果

  解析の結果、感度に関しては撹拌速度の影響が極めて大きく、その他の因子含めて最適組み合わせを設定して確認実験したところ、比較条件に対するSN比の利得が8.96dbでほぼ推定値と一致し、感度の利得5.37dbは推定値より22dbも小さかったものの、大きな改善が達成できました。 

4.パラメータ設計の成果

  感度の向上による処理時間短縮で1トン当たりのコスト78400円が43400円になっただけでなく、SN比向上による品質損失を損失関数で導くと1トンあたり2,573,000円の改善効果が見込まれました。

 社内で初めての技術開発であったにも関わらず、この後の実機試作では、実験で判明した影響の大きな因子に集中した条件設定で、円滑に立ち上げる事ができました。

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

 

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