物流協力会社の育て方、事業者を評価しフィードバックする

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1. 物流エラーの水準

日本の物流品質は海外に比べて比較的に高いということを何度もお話させて来ていただいております。そのレベルはエラーの発生が30ppm程度だと言われています。これが日本における物流エラーの水準です。このppm(百万分のいくつ)の分子・分母は分子がエラーを含むオーダー数、分母が総オーダー数ということになります。

 

オーダーの中には複数の商品があり、それぞれオーダー数量も異なるわけですが、この内一つでも間違いがあれば先ほどの分子に「一」とカウントされるのです。例えば一オーダーの中にA~Eの5点の商品があり、それぞれ4個ずつだとしましょう。この内Bが一個少なかったとしたらエラー一件ということになります。

 

極端な話、5点の商品すべてにおいて数量が違っていてもエラーは一件となります。このようなカウントの仕方をして30ppmが日本の実力だと言われています。この値が良いのか悪いのかは皆さんそれぞれ感じ方が違うかもしれません。メーカーであれば2桁ppmは悪い値ととらえるかもしれません。

 

しかし上記の通り当ppmは「個数率」ではなく「件数率」です。その意味でやや大きめに出ることが考えられますので、極端に悪いレベルとは言えないのではないでしょうか。特定の運送会社のレベルが2000ppmですと、1000件のオーダーの中に2件のミスが含まれるという計算になります。

 

さすがにこのレベルは悪い例です。筆者もかつて中国に駐在していたことがありますがこれほどまでに悪いレベルは経験したことがありません。しかし事実として物流エラーが発生している場合、これを是正する活動を取らなければまったく改善はしません。

 

ではどのようにアプローチしていくべきでしょうか。または思い切って運送会社を切り替えるべきでしょうか。

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2. 物流事業者連絡会

少し会社が大きくなると受注した営業所と送り先の営業所が異なり情報連携がおろそかになることが考えられます。着荷主から指摘されて初めて誤配がわかるような管理水準の会社もあるので、まずはその要因をきちんと調べてもらい二度と同じ過ちを繰り返さないように指導する必要があります。

 

この時にもしかしたら誤配の真の要因をその物流事業者が把握できない可能性があります。表面上の現象だけをとらえてそれだけに手を打つケースがあるのです。私たちの改善でもこのようなことが無いように注意が必要ですが、あまり改善活動に取り組んだことの無い事業者であれば改善の仕方を教えてあげることも必要かもしれません。

 

物流エラーが発生している場合その実態をきちんと物流事業者に伝え、改善施策を提出してもらう必要があります。

 

メーカーと物流事業者とではこの改善ノウハウに大幅なギャップがあります。「改善して欲しい」と言われれば「はい、わかりました」と答えが返ってきますがもし何度もエラーを繰り返す会社であればノウハウに問題があると考えた方がよいと思います。

 

一度一緒になって改善活動に取り組んであげるような大きな心で対応してあげましょう。もしそれを受け入れない会社であれば会社を変えればよいだけです。もし複数の物流事業者と取引があるのであれば月次で物流事業者連絡会を開催してみてはいかがでしょうか。

 

この物流事業者連絡会では荷主会社の生産状況、将来の見通し、イベント情報などを通知する一方、物流事業者の改善状況報告や要望事項などの話をしてもらい情報の共有化を図ります。そして併せてこの連絡会の中で各社の物流品質の状況を報告します。もちろん全取引会社が参加していますのでそこで恥をかきたくありません。

 

このような形でそれとなくプレッシャーをかけることも重要ではないでしょうか。物流事業者もうるさい客の方に目が向くのは当然です。問題があっても何もアクションをとらないような顧客は軽視される可能性もあるのです。そうならないように荷主側としても物流品質向上のための活動は確立しておかなければなりません。

 

これが一般的に言われているサプライヤーマネジメントというものです。取引先をマネジメントできないのであれば求める品質を享受できない可能性もあるのです。

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3. 物流現場改善

物流事業者の物流現場を取引開始前に見ておくことは重要です。さらにその会社の経営層の話を聞いておくことも必要な要素です。荷主会社が物流事業者と毎月連絡会を持つとともに改善活動の推進をフォローしていきたいものです。より具体的に実施していくことが望ましいでしょう。

 

もしその物流事業者が目的地までの途中で荷の載せ替えを行っているとするとその物流現場を一緒に見に行くことをお勧めします。意外とその現場では明確な作業ルールなど無く作業者任せの仕事の仕方になっている可能性があります。

 

その物流事業者が物流品質を十分に保証してくれていないのであれば、具体的な改善指導を行ってその通りに仕事をしてもらうように仕向けていくことも必要かもしれません。その延長線で物流作業の標準化などを指導してみてはいかがでしょうか。物流事業者は物流作業を標準化できていないケースが多いようです。そもそも作業を標準化すること自体認識していない可能性もあります。メーカーの方にしてみると「えっ?」と感じるかもしれませんがこれが実態なのです。

 

新たに取引を始めるのであればあらかじ...

 
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1. 物流エラーの水準

日本の物流品質は海外に比べて比較的に高いということを何度もお話させて来ていただいております。そのレベルはエラーの発生が30ppm程度だと言われています。これが日本における物流エラーの水準です。このppm(百万分のいくつ)の分子・分母は分子がエラーを含むオーダー数、分母が総オーダー数ということになります。

 

オーダーの中には複数の商品があり、それぞれオーダー数量も異なるわけですが、この内一つでも間違いがあれば先ほどの分子に「一」とカウントされるのです。例えば一オーダーの中にA~Eの5点の商品があり、それぞれ4個ずつだとしましょう。この内Bが一個少なかったとしたらエラー一件ということになります。

 

極端な話、5点の商品すべてにおいて数量が違っていてもエラーは一件となります。このようなカウントの仕方をして30ppmが日本の実力だと言われています。この値が良いのか悪いのかは皆さんそれぞれ感じ方が違うかもしれません。メーカーであれば2桁ppmは悪い値ととらえるかもしれません。

 

しかし上記の通り当ppmは「個数率」ではなく「件数率」です。その意味でやや大きめに出ることが考えられますので、極端に悪いレベルとは言えないのではないでしょうか。特定の運送会社のレベルが2000ppmですと、1000件のオーダーの中に2件のミスが含まれるという計算になります。

 

さすがにこのレベルは悪い例です。筆者もかつて中国に駐在していたことがありますがこれほどまでに悪いレベルは経験したことがありません。しかし事実として物流エラーが発生している場合、これを是正する活動を取らなければまったく改善はしません。

 

ではどのようにアプローチしていくべきでしょうか。または思い切って運送会社を切り替えるべきでしょうか。

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

2. 物流事業者連絡会

少し会社が大きくなると受注した営業所と送り先の営業所が異なり情報連携がおろそかになることが考えられます。着荷主から指摘されて初めて誤配がわかるような管理水準の会社もあるので、まずはその要因をきちんと調べてもらい二度と同じ過ちを繰り返さないように指導する必要があります。

 

この時にもしかしたら誤配の真の要因をその物流事業者が把握できない可能性があります。表面上の現象だけをとらえてそれだけに手を打つケースがあるのです。私たちの改善でもこのようなことが無いように注意が必要ですが、あまり改善活動に取り組んだことの無い事業者であれば改善の仕方を教えてあげることも必要かもしれません。

 

物流エラーが発生している場合その実態をきちんと物流事業者に伝え、改善施策を提出してもらう必要があります。

 

メーカーと物流事業者とではこの改善ノウハウに大幅なギャップがあります。「改善して欲しい」と言われれば「はい、わかりました」と答えが返ってきますがもし何度もエラーを繰り返す会社であればノウハウに問題があると考えた方がよいと思います。

 

一度一緒になって改善活動に取り組んであげるような大きな心で対応してあげましょう。もしそれを受け入れない会社であれば会社を変えればよいだけです。もし複数の物流事業者と取引があるのであれば月次で物流事業者連絡会を開催してみてはいかがでしょうか。

 

この物流事業者連絡会では荷主会社の生産状況、将来の見通し、イベント情報などを通知する一方、物流事業者の改善状況報告や要望事項などの話をしてもらい情報の共有化を図ります。そして併せてこの連絡会の中で各社の物流品質の状況を報告します。もちろん全取引会社が参加していますのでそこで恥をかきたくありません。

 

このような形でそれとなくプレッシャーをかけることも重要ではないでしょうか。物流事業者もうるさい客の方に目が向くのは当然です。問題があっても何もアクションをとらないような顧客は軽視される可能性もあるのです。そうならないように荷主側としても物流品質向上のための活動は確立しておかなければなりません。

 

これが一般的に言われているサプライヤーマネジメントというものです。取引先をマネジメントできないのであれば求める品質を享受できない可能性もあるのです。

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3. 物流現場改善

物流事業者の物流現場を取引開始前に見ておくことは重要です。さらにその会社の経営層の話を聞いておくことも必要な要素です。荷主会社が物流事業者と毎月連絡会を持つとともに改善活動の推進をフォローしていきたいものです。より具体的に実施していくことが望ましいでしょう。

 

もしその物流事業者が目的地までの途中で荷の載せ替えを行っているとするとその物流現場を一緒に見に行くことをお勧めします。意外とその現場では明確な作業ルールなど無く作業者任せの仕事の仕方になっている可能性があります。

 

その物流事業者が物流品質を十分に保証してくれていないのであれば、具体的な改善指導を行ってその通りに仕事をしてもらうように仕向けていくことも必要かもしれません。その延長線で物流作業の標準化などを指導してみてはいかがでしょうか。物流事業者は物流作業を標準化できていないケースが多いようです。そもそも作業を標準化すること自体認識していない可能性もあります。メーカーの方にしてみると「えっ?」と感じるかもしれませんがこれが実態なのです。

 

新たに取引を始めるのであればあらかじめ作業が標準化できているかどうかはチェックポイントの一つです。すでに取引を開始しているのであれば前述したような連絡会や共同改善の取組を進めていくことです。その中で物流事業者を評価しフィードバックすることです。

 

このような取組を行っている会社はそれほど多くないかもしれません。それだけに活動を開始すればお互いに今まで以上に関心を持つことが考えられます。物流品質不良が出てそれに対して荷主として何のアクションも取らなければ状況は好転しません。むしろほっておけば悪化する可能性が大きいのではないでしょうか。

 

何も難しいことを言っているわけではありません。物流協力会社を育ててあげようという気持ちが大切なのです。このような考え方で活動すれば、いらいらすることは無いでしょう。ぜひ一定の時間をかけて改善していきましょう。きっと物流事業者からは喜ばれることでしょう。

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


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