サプライチェーンマネジメントにおける自律分散と情報共有のインサイト

 組織のマネジメントを「意思決定は自律分散的か中央集権的か」と、「情報の共有化がなされているか否か」との2つの視点によって分類してみましょう。

 近代経営や政治社会において経営の合理化やシステム化は、中央集権化を意味しました。情報・意思決定・計画立案のすべてを中央に集中させることによって最も効率のよいシステムや恩恵を享受できると信じられてきたからです。

 しかし全体主義・官僚主義・社会主義・大本営方式にみられる中央集権化の弊害が前世紀に露呈しました。各人の勝手なふるまいから無駄が生まれると認識し、その排除を目指した改革の動きの結果でしたが、むしろ社会全体に中央集権化の弊害という大きな無駄を生み出したことになります。

 ここで自律分散の例としてトヨタ生産方式をみてみましょう。トヨタ生産方式は、生産現場の自律的な意思決定に基づき生産活動がおこなわれる考え方に基づいており、まさしく自律分散の典型といえます。生産管理部門をふくめた本社機能などは情報やモノの流れのなかでむしろ本流ではありません。

サプライチェーンマネジメントにおける情報共有と文献組織

図1 サプライチェーンマネジメントにおける情報共有と文献組織

  次に情報の共有も交えて検討します。独自の先行技術が世界的な事実上の標準にまでのぼりつめ、収益逓増となったビジネスモデルが多くあります。オラクルによるリレーショナル・データベースも標準となりましたしビル=ゲイツの設けたマイクロソフトのOS (Windowsシリーズ)も世界標準となっています。これらは産学官を含めた複数の経営体の共同があったわけではなく、単独事業とそのブラッシュアップによるもので、情報の公開と共有が浸透したため販売数の多寡を超え社会資本(インフラストラクチャ―)にまでなりえました。

 もしこれらの独自技術がガイドラインやルールなど国際的な基準をもうけてからつくられることとなれば(中央集権的価値観でモノサシをあてがわれたならば)、ソフトウェアに類する産業自体の進展は非常にゆるやかで精彩に欠くこととなり、いまほどは社会に貢献できなかったかもしれません。

 ここまでで、情報の共有を進展させることにくわえ、全体を俯瞰した自律した個人や組織が著しい進化をもたらしてきたことがわかります。 

 以上のことから小口多頻度の納入を事例としてサプライチェーンの洞察(インサイト)を得ることができます。社会的には大きな無駄と安易に判じ小口多頻度の仕組みの実現を躊躇するか、それとも具体的なビジョンを描き実現を創発させるかによって、経営体の未来は大きく左右されることでしょう。後者で具体例を挙げれば共同配送やクロスドッキングなどのシステムを駆使することでむしろ顧客を創造するポジショニングに達することを示すことができます。

 情報が間断なく共有された上で自律したチームの知識創造が組織内のいたるところで発揮されるのであれば、これに勝る組織はありません。 

情報共有と自律分散の対比

図2.情報共有と自律分散の対比

 J. W. フォレスターは、インダストリアル・ダイナミクスを通じ、自律分散の組織が情報を共有しない状態におかれたときに意思決定をすることで直観にはとらえにくい問題をひきおこすことを指摘しました。このことは単純に組織内を超え、連動してより大きな問題に発展していくことも数値実験で明確にしました。まさしくサプライチェーンに生じる問題であり、川下のオーダーが情報の分断された状態で卸、メーカーとさかのぼることにより拡大し、販売機会喪失と過剰在庫を拡散させてしまう現象のことをいっています。

 逆に自律分散をさえぎれば、どれだけ情報を共有していても単なるトップダウンのみの中央集権の極みに映るマネジメントとなります。これはビジネスを超えスポーツや様々な分野でいまだにみられるのではないでしょうか。 

 情報共有の有無と自律分散の有無の2つの視点でみてみると、御自身の所属する組織を理解しやすくなる方も少なくはないと考えられます。双方をともに有する組織は理想にすぎないとそしりをうけるかもわかりませんがサプライチェーンのインサイトとしていいえることは、情報共有と自律分散からホメオスタシス(恒常性の維持)を成立させている生命の在り方そのものが、サプライチェーンのもっとも目指すべき方向のひとつであり調達・生産・販売の同期化はまさしくその在り方なのです。

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