物流は認知されているか、地位向上を考える(その1)

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サプライチェーンマネジメント

 

1. 物流業界

◆ 物流の認知度

日本で物流業界はあまり注目されることはないかもしれません。会社の中に物流部門がないという場合もあるでしょう。日本では「物流の地位」という言葉が交わされることがあります。しかも、どちらかというとネガティブな使われ方をする方が多いと思われます。 

 

一般的に「物」は黙っていても届くものという認識があるかもしれません。会社で仕入れを行った場合、仕入れ先がトラックを仕立てて納入してきます。つまりこの場合物流を気にしなくても物は届くのです。

 

欧米では「買う側」が物を引き取ることが一般的ですから、物流を常に気にします。その関係があるのかどうかは分かりませんが、物流を一つの学問として取り扱っています。若い人も物流を学ぼうと、物流やロジスティクスの専門学科に進みます。そこできちんとした理論を学んだうえで、物流会社やメーカーに就職して物流の業務に就くのです。

 

このように物流が認知されている場合は「物流の地位」などといった言葉を使い、わざわざ話をする必要ないのですが、日本は少々状況が異なりますのでこの点について解説します。

 

先ほど「調達物流」の話を出しました。日本は仕入先が物を届けてくれますので「日本には調達物流はない」といわれます。これも物流の注目度を低下させている一つの要因ではあります。しかし物流というと、それは調達物流だけではありません。「物」がある限りそれを動かす行為は必ず発生しますので、至る所に物流が存在しているわけです。工場の中でも物流業務は存在します。

 

工場ではものづくりのため物流は非常に重要な役割を担っています。しかし物流に対する認知度はいかがでしょうか。どちらかというと、それほど認められていないというケースの方が多いのではないでしょうか。ではなぜ物流の認知度が低いのでしょうか。明らかに物流業務が存在しているにもかかわらず、それに対する評価が高くないことについて、私たちは考えてみる必要があると思います。

 

物流評価の内、最初に考えなければならないことは「物流サービス」ではないでしょうか。例えば、通信販売が最近よく話題に上りますが、注文した商品が間違って届くということはほとんどないと聞いたことがあります。これは「物流サービス」の典型事例ではないでしょうか。通信販売の購入者にアンケートを取ると、ほとんどの人が「満足」と答えると思います。

 

つまり通信販売における物流は、一般消費者から評価されているということになります。ここで通信販売における「物流」を消費者が意識しているかというとそうではないかもしれません。

 

サプライチェーンマネジメント

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2. 通信販売と物流

◆ 物流サービス水準の評価

通信販売について大抵のお客さんは満足していると思います。そのカギを握るのが物流であることは言うまでもありません。

 

顧客からの注文を受けるとそのオーダーを倉庫に伝え「品出し(ピッキング)」を行います。ピッキングされた商品は、ふさわしい荷姿に包装され出荷場へと運ばれます。それを方面別のトラックに積み込みます。積み込みの際は荷降ろし順序を頭に入れながら実施していきます。これはドライバーが効率よく荷降ろしができるようにするためです。後はドライバーが各顧客を訪問し、商品を手渡していくということになります。

 

いかがでしょうか。今お示しした内容はすべて「物流業務」です。つまり通信販売は物流業務の塊(かたまり)なのです。

 

これについてお客さんが満足しているということは「物流」に満足していることに他ならないのです。あとは通信販売のサービスが「物流」だということを顧客に認識してもらうことがポイントになると思います。顧客も注文すれば、何となく物が届くと考えているかもしれません。なぜなら通信販売の業務プロセスが物流業務だということを顧客は知らないからです。

何も先ほど挙げたようなプロセスを細かく説明する必要はありませんが、正確な物流をもって商品をお届けしているという程度の認識を、顧客に持ってもらえるようPRすることは必要だと思います。これは誰が実施するかというと、物流を提供している側です。このケースでは通販事業者ということになります。

 

物流の地位向上のためにはより「質の高い物流業務」を行っていかなければならないことは言うまでもありません。そこでまず、物流品質の実態について振り返ってみる必要がありそうです。先ほどの例では高品質であることは誰もが認めるところでしょうから、こういったケースは問題ありません。それ以外について自社が提供している物流サービスの水準がどうなのか、一度自己採点してみる必要がありそうです。

 

私たちは物流に携わっている側ですからどうしても自分たちを認めてほしい、もっと評価してほしいと考えがちです。でもそれに値する仕事ができているかどうかは冷静に考えてみる必要がありそうです。

サプライチェーンマネジメント

 

3. ドライバーの人的資源マネジメント

◆ 物流事業者の努力とは

「物流はいつも底辺でなかなか評価されない」と嘆いている人が数多くいます。最近ではテレビ番組でもドライバー不足に絡め、物流の重要性をPRしていますが、この「PR」という部分で、私たちは努力不足だということを認識する必要があると思います。そして物流の重要性をPRする前に、物流の価値を上げていく努力が必要なのです。この価値は顧客からいただく対価にもつながります。

 

何事でもいえることですが「結果には必ずそこに至る原因」が存在します。私たちが携わる物流にもこの法則が当てはまります。よりバリュー(価値)の高い物流を提供すれば、それに見合った対価をいただくことができます。一方で顧客から価値を感じていただけなければ、対価は低いものにならざるを得ません。これは経済の上では至極当たり前のことです。鉛筆と万年筆では当然バリューが異なります。その結果として売価に差がつくのです。

 

物流事業者は「なかなか価格が上がらない」という言葉を口にします。でも「なかなか上がらない」のではなく「価格を上げられる仕事ができていない」と解釈すべきではないでしょうか。

 

少々厳しい言い方かもしれませんが、6万2000社がひしめく運送業では同じサービス...

サプライチェーンマネジメント

 

1. 物流業界

◆ 物流の認知度

日本で物流業界はあまり注目されることはないかもしれません。会社の中に物流部門がないという場合もあるでしょう。日本では「物流の地位」という言葉が交わされることがあります。しかも、どちらかというとネガティブな使われ方をする方が多いと思われます。 

 

一般的に「物」は黙っていても届くものという認識があるかもしれません。会社で仕入れを行った場合、仕入れ先がトラックを仕立てて納入してきます。つまりこの場合物流を気にしなくても物は届くのです。

 

欧米では「買う側」が物を引き取ることが一般的ですから、物流を常に気にします。その関係があるのかどうかは分かりませんが、物流を一つの学問として取り扱っています。若い人も物流を学ぼうと、物流やロジスティクスの専門学科に進みます。そこできちんとした理論を学んだうえで、物流会社やメーカーに就職して物流の業務に就くのです。

 

このように物流が認知されている場合は「物流の地位」などといった言葉を使い、わざわざ話をする必要ないのですが、日本は少々状況が異なりますのでこの点について解説します。

 

先ほど「調達物流」の話を出しました。日本は仕入先が物を届けてくれますので「日本には調達物流はない」といわれます。これも物流の注目度を低下させている一つの要因ではあります。しかし物流というと、それは調達物流だけではありません。「物」がある限りそれを動かす行為は必ず発生しますので、至る所に物流が存在しているわけです。工場の中でも物流業務は存在します。

 

工場ではものづくりのため物流は非常に重要な役割を担っています。しかし物流に対する認知度はいかがでしょうか。どちらかというと、それほど認められていないというケースの方が多いのではないでしょうか。ではなぜ物流の認知度が低いのでしょうか。明らかに物流業務が存在しているにもかかわらず、それに対する評価が高くないことについて、私たちは考えてみる必要があると思います。

 

物流評価の内、最初に考えなければならないことは「物流サービス」ではないでしょうか。例えば、通信販売が最近よく話題に上りますが、注文した商品が間違って届くということはほとんどないと聞いたことがあります。これは「物流サービス」の典型事例ではないでしょうか。通信販売の購入者にアンケートを取ると、ほとんどの人が「満足」と答えると思います。

 

つまり通信販売における物流は、一般消費者から評価されているということになります。ここで通信販売における「物流」を消費者が意識しているかというとそうではないかもしれません。

 

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◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

2. 通信販売と物流

◆ 物流サービス水準の評価

通信販売について大抵のお客さんは満足していると思います。そのカギを握るのが物流であることは言うまでもありません。

 

顧客からの注文を受けるとそのオーダーを倉庫に伝え「品出し(ピッキング)」を行います。ピッキングされた商品は、ふさわしい荷姿に包装され出荷場へと運ばれます。それを方面別のトラックに積み込みます。積み込みの際は荷降ろし順序を頭に入れながら実施していきます。これはドライバーが効率よく荷降ろしができるようにするためです。後はドライバーが各顧客を訪問し、商品を手渡していくということになります。

 

いかがでしょうか。今お示しした内容はすべて「物流業務」です。つまり通信販売は物流業務の塊(かたまり)なのです。

 

これについてお客さんが満足しているということは「物流」に満足していることに他ならないのです。あとは通信販売のサービスが「物流」だということを顧客に認識してもらうことがポイントになると思います。顧客も注文すれば、何となく物が届くと考えているかもしれません。なぜなら通信販売の業務プロセスが物流業務だということを顧客は知らないからです。

何も先ほど挙げたようなプロセスを細かく説明する必要はありませんが、正確な物流をもって商品をお届けしているという程度の認識を、顧客に持ってもらえるようPRすることは必要だと思います。これは誰が実施するかというと、物流を提供している側です。このケースでは通販事業者ということになります。

 

物流の地位向上のためにはより「質の高い物流業務」を行っていかなければならないことは言うまでもありません。そこでまず、物流品質の実態について振り返ってみる必要がありそうです。先ほどの例では高品質であることは誰もが認めるところでしょうから、こういったケースは問題ありません。それ以外について自社が提供している物流サービスの水準がどうなのか、一度自己採点してみる必要がありそうです。

 

私たちは物流に携わっている側ですからどうしても自分たちを認めてほしい、もっと評価してほしいと考えがちです。でもそれに値する仕事ができているかどうかは冷静に考えてみる必要がありそうです。

サプライチェーンマネジメント

 

3. ドライバーの人的資源マネジメント

◆ 物流事業者の努力とは

「物流はいつも底辺でなかなか評価されない」と嘆いている人が数多くいます。最近ではテレビ番組でもドライバー不足に絡め、物流の重要性をPRしていますが、この「PR」という部分で、私たちは努力不足だということを認識する必要があると思います。そして物流の重要性をPRする前に、物流の価値を上げていく努力が必要なのです。この価値は顧客からいただく対価にもつながります。

 

何事でもいえることですが「結果には必ずそこに至る原因」が存在します。私たちが携わる物流にもこの法則が当てはまります。よりバリュー(価値)の高い物流を提供すれば、それに見合った対価をいただくことができます。一方で顧客から価値を感じていただけなければ、対価は低いものにならざるを得ません。これは経済の上では至極当たり前のことです。鉛筆と万年筆では当然バリューが異なります。その結果として売価に差がつくのです。

 

物流事業者は「なかなか価格が上がらない」という言葉を口にします。でも「なかなか上がらない」のではなく「価格を上げられる仕事ができていない」と解釈すべきではないでしょうか。

 

少々厳しい言い方かもしれませんが、6万2000社がひしめく運送業では同じサービスを提供している以上、顧客は「より安い業者を選ぶ」ことになります。もしかしたら、この会社数が価格面での過当競争を招いているのかもしれません。

 

しかしこの事実は物流業に限ったことではありません。コンビニエンスストアでも歯科医師でも同様です。いかに他社に比べて差をつけるかがポイントになることは言うまでもありません。価格に限らず、私たちの提供する仕事が社会に認められるようになるため、いろいろな努力が必要であることは間違いないことなのです。

 

ではどのような取り組みが必要になってくるのでしょうか?私たちが取り組むべき努力の方向性について、少し考えていきたいと思います。

 

最初に考えるべきことはドライバーの品質ではないでしょうか。通信販売が消費者の高い満足度を得ている要因の一つとして、ドライバー品質が挙げられます。彼ら、彼女らはドライバーというより、通信販売会社の最終販売員なのです。よくドライバー、ドライバーといいますがそうではなく、商品をお届けするセールスパーソンなのです。この印象次第でその通信販売業者の印象がガラッと変わってしまうのです。そこでこの部分での人材教育は、極めて重要だといえるでしょう。

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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