物流と内部統制活動

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物流事業者も発注している会社も内部統制に対する取り組みは必要です。しかし内部統制にあまり馴染みのない会社も多いと思います。ということで今回は内部統制をテーマにお話をしてみたいと思います。内部統制は会社経営上のリスクをコントロールするための一つの方法であると考えられます。一般的に次の三つの分野で構成されます。

  • リスクマネジメント
  • コンプライアンス
  • 財務報告

◆関連解説記事 危機管理の難しさ、リスクマネジメント【連載記事紹介】

 

1.リスクマネジメント

それでは、リスクマネジメントについて考えてみましょう。

 

物流のリスクマネジメントは、さまざまな業種に影響を与える極めて重要度の高いものと考えるべきです。東日本大震災でも経験していますとおり、サプライチェーンの寸断が私たちの生活に多大な影響を及ぼしました。交通インフラ被災による通行止めや燃料不足ほか、ドライバーが出勤できないことから、輸送力が不足することもサプライチェーン寸断の一つの要因となります。

 

もし道路が通れなくなったらどのようにルート変更するか、大型車が通行できない場合は車種変更をどうするかなど、事前に対策を考えておくこともリスクマネジメントの一つです。大切なことは、想定されるリスクをできるだけ数多く挙げることです。前もって物流に携わっている方にリスクの抽出をお願いしてみましょう。

 

BCP( Business Continuity Plan )といわれるものがあります。これは日本語では事業継続計画と呼ばれるものですが、大きなリスクを想定し、会社を継続していくためにとるべき施策を考えていく計画のことを指します。

 

物流事業者の場合、大きな災害があった際は使える資源が少なくなります。稼働できるドライバーやトラックが限定される可能性があるからです。その時にはすべての顧客に対し、同じサービスを提供することはできないと思われます。では会社としてどの顧客に対する仕事を優先するのでしょうか。

 

BCPでは最優先顧客を決めておく必要があるのです。それが物流のリスクマネジメントというものです。

◆関連解説記事 BCP策定と訓練

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2.コンプライアンス

BCPでは事業を継続するため「優先業務の絞り込み」が必要になります。物流事業者の場合は、サービスを継続する顧客の絞り込みです。

 

優先業務の絞り込みはやむを得ない措置でしょう。最も重要な顧客にだけ、サービスを提供することは当然の措置です。今後も継続的にビジネスを実施していきたい顧客を選ぶことになりますが、その選定基準は会社でまちまちになると思われます。一般的には取引規模と収益性ではないでしょうか。

 

リスクマネジメントにはさまざまなリスクが想定され、その中に「コンプライアンスリスク」があります。コンプライアンスは法令遵守のみならず、会社のルールを守ることや社会一般の倫理を守ることなども対象ということになります。

 

物流におけるコンプライアンスといえば、これも盛りだくさんですが、下請法や労働基準法などの法令遵守を最初に考えるべきではないでしょうか。

 

顧客は物流事業者のことをよくみています。コンプライアンス違反、特に法令に反する行為を行っている会社とは取り引きをしないことを宣言している会社は多々あります。法令についてあまり知識のない会社は要注意です。何かしらの方法で法令知識を得ることが求められます。

 

法令遵守は何としても行わなければならないと思います。法令について「知らなかった」ということは許されないのです。できれば会社のコンプライアンス基本方針を定め、それをホームページに載せたら良いのではないでしょうか。

 

顧客は物流事業者を探す時にまずホームページを検索します。その時に内部統制、とりわけコンプライアンスに関する取り組みを気にする傾向があります。間違ってもコンプライアンス違反を犯した会社には発注しませんが、前向きにコンプライアンス活動に取り組んでいる会社とは取り引きしたいと思っているのです。

◆関連解説記事 物流コンプライアンスとは

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3.行動規範

内部統制において、社員のコンプライアンス意識を高めることはとても重要なことです。トップから末端の社員まで統一して高い意識を持てば、それだけコンプライアンスへの意識は上がっていくものと思われます。

 

コンプライアンス意識を高めるためには、何かしらの仕掛けが必要になってきます。例えば、社内研修実施は必須でしょう。可能であれば研修後に「理解度チェック」を行うことで効果が大きくなると考えられます。

 

また、役員から一般社員、パート、アルバイトまでコンプライアンス意識を浸透させるため、会社としての「行動規範」を設定してみてはいかがでしょうか。就業規則にいくつかコンプライアンスのポイントは記されていると思いますが、もう少し詳しく、事例を交えながら行動規範という小冊子に作り上げることも効果的です。

 

その中には特に知っていなければならない法令以外に、最近問題になっているセクハラやパワハラ事例、公務員との付き合い方や反社会勢力の排除など、それぞれのトピックを1アイテムに対し見開き2ページくらいで作っていくのです。そして新入社員が入ってきた時には、この冊子に基づいて教育を行い、それを理解した旨のサインをしてもらうようにします。何年...

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物流事業者も発注している会社も内部統制に対する取り組みは必要です。しかし内部統制にあまり馴染みのない会社も多いと思います。ということで今回は内部統制をテーマにお話をしてみたいと思います。内部統制は会社経営上のリスクをコントロールするための一つの方法であると考えられます。一般的に次の三つの分野で構成されます。

  • リスクマネジメント
  • コンプライアンス
  • 財務報告

◆関連解説記事 危機管理の難しさ、リスクマネジメント【連載記事紹介】

 

1.リスクマネジメント

それでは、リスクマネジメントについて考えてみましょう。

 

物流のリスクマネジメントは、さまざまな業種に影響を与える極めて重要度の高いものと考えるべきです。東日本大震災でも経験していますとおり、サプライチェーンの寸断が私たちの生活に多大な影響を及ぼしました。交通インフラ被災による通行止めや燃料不足ほか、ドライバーが出勤できないことから、輸送力が不足することもサプライチェーン寸断の一つの要因となります。

 

もし道路が通れなくなったらどのようにルート変更するか、大型車が通行できない場合は車種変更をどうするかなど、事前に対策を考えておくこともリスクマネジメントの一つです。大切なことは、想定されるリスクをできるだけ数多く挙げることです。前もって物流に携わっている方にリスクの抽出をお願いしてみましょう。

 

BCP( Business Continuity Plan )といわれるものがあります。これは日本語では事業継続計画と呼ばれるものですが、大きなリスクを想定し、会社を継続していくためにとるべき施策を考えていく計画のことを指します。

 

物流事業者の場合、大きな災害があった際は使える資源が少なくなります。稼働できるドライバーやトラックが限定される可能性があるからです。その時にはすべての顧客に対し、同じサービスを提供することはできないと思われます。では会社としてどの顧客に対する仕事を優先するのでしょうか。

 

BCPでは最優先顧客を決めておく必要があるのです。それが物流のリスクマネジメントというものです。

◆関連解説記事 BCP策定と訓練

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2.コンプライアンス

BCPでは事業を継続するため「優先業務の絞り込み」が必要になります。物流事業者の場合は、サービスを継続する顧客の絞り込みです。

 

優先業務の絞り込みはやむを得ない措置でしょう。最も重要な顧客にだけ、サービスを提供することは当然の措置です。今後も継続的にビジネスを実施していきたい顧客を選ぶことになりますが、その選定基準は会社でまちまちになると思われます。一般的には取引規模と収益性ではないでしょうか。

 

リスクマネジメントにはさまざまなリスクが想定され、その中に「コンプライアンスリスク」があります。コンプライアンスは法令遵守のみならず、会社のルールを守ることや社会一般の倫理を守ることなども対象ということになります。

 

物流におけるコンプライアンスといえば、これも盛りだくさんですが、下請法や労働基準法などの法令遵守を最初に考えるべきではないでしょうか。

 

顧客は物流事業者のことをよくみています。コンプライアンス違反、特に法令に反する行為を行っている会社とは取り引きをしないことを宣言している会社は多々あります。法令についてあまり知識のない会社は要注意です。何かしらの方法で法令知識を得ることが求められます。

 

法令遵守は何としても行わなければならないと思います。法令について「知らなかった」ということは許されないのです。できれば会社のコンプライアンス基本方針を定め、それをホームページに載せたら良いのではないでしょうか。

 

顧客は物流事業者を探す時にまずホームページを検索します。その時に内部統制、とりわけコンプライアンスに関する取り組みを気にする傾向があります。間違ってもコンプライアンス違反を犯した会社には発注しませんが、前向きにコンプライアンス活動に取り組んでいる会社とは取り引きしたいと思っているのです。

◆関連解説記事 物流コンプライアンスとは

SCM

 

3.行動規範

内部統制において、社員のコンプライアンス意識を高めることはとても重要なことです。トップから末端の社員まで統一して高い意識を持てば、それだけコンプライアンスへの意識は上がっていくものと思われます。

 

コンプライアンス意識を高めるためには、何かしらの仕掛けが必要になってきます。例えば、社内研修実施は必須でしょう。可能であれば研修後に「理解度チェック」を行うことで効果が大きくなると考えられます。

 

また、役員から一般社員、パート、アルバイトまでコンプライアンス意識を浸透させるため、会社としての「行動規範」を設定してみてはいかがでしょうか。就業規則にいくつかコンプライアンスのポイントは記されていると思いますが、もう少し詳しく、事例を交えながら行動規範という小冊子に作り上げることも効果的です。

 

その中には特に知っていなければならない法令以外に、最近問題になっているセクハラやパワハラ事例、公務員との付き合い方や反社会勢力の排除など、それぞれのトピックを1アイテムに対し見開き2ページくらいで作っていくのです。そして新入社員が入ってきた時には、この冊子に基づいて教育を行い、それを理解した旨のサインをしてもらうようにします。何年か経った時に、コンプライアンス教育を受けたことを思い出してもらえれば儲(もう)けものです。

 

また意識向上に向けて、社内にポスターを掲げたり、朝礼などでちょっとしたコンプライアンス絡みの話を行うことも有効的だと思います。内部統制の三つ目として「財務報告の正確性」が挙げられます。会計上不正が行われていないかがポイントになります。

 

もっと身近な例を挙げれば「出張旅費をごまかしていないか」「誤った在庫報告を行っていないか」「顧客との間で不透明な取引をしていないか」などお金に絡む不正が隠されている可能性が考えられます。これらにつきましても、コンプライアンスの一部となりますので、行動規範に書き込むと同時に、不正が見つかった場合は、厳正な処置を行うことが必要です。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

内部統制は企業存続のために避けて通れない活動です。リスクマネジメント、コンプライアンス、財務の視点から、じっくりと社内点検を行うとともに、それらを正していくしかけづくりに着手していきましょう。

 

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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