【SDGs取り組み事例】世界初のリサイクル技術でCO2削減に貢献 株式会社エフピコ

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完全循環型社会の実現に向け進化続ける

エフピコが生産する食品トレー

環境問題が重要な社会課題として世界的に認識され、近年、その保護気運の高まりと共に定着してきたリサイクル活動ですが、食品トレー・容器の製造販売を行う株式会社エフピコ(代表取締役会長 兼 エフピコグループ代表・佐藤守正氏)では、環境問題への取り組みとして1990(平成2)年から地域スーパーマーケットなどと連携した発泡トレー(以下、トレーと表記)の回収・リサイクル事業を開始。その取り組みは全国に広がりをみせています。また、これに先駆け1986(昭和61)年からは、障がい者雇用も始め、同社グループ企業内において雇用の拡大に努めています。今回は、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)といった言葉が世に生まれる前から、環境保全活動(SDGs目標:7、9、12、13、14、15)やダイバーシティ経営に取り組む同社について、今月と来月の2回にわたり紹介します。

【目次】

     

    国内製造業のSDGs取り組み事例一覧へ戻る

    1.先を見据えた企業防衛からリサイクル事業開始

    同社がトレーのリサイクル事業を始めたきっかけは、1980年代にアメリカで発生した大手外食チェーン企業に対する消費者運動(不買運動)でした。商品を包装する発泡容器製造の際に使用されるフロンガスがオゾン層破壊につながることに加え、容器のゴミ問題(ポイ捨て)から同国内で不買運動が発生。同運動が日本国内でも起こることを危惧した創業者の小松安弘氏が、企業防衛のため自主的にスーパーマーケットからのトレー回収とリサイクル活動を始めました。同社も「それほど、このような情報に敏感な時代だった」と振り返ります。

    株式会社エフピコ本社(広島県福山市・同社提供)

    写真説明】株式会社エフピコ本社(広島県福山市・同社提供)

     

    2.独自の“エフピコ方式リサイクル”、福山から全国へ拡大

    大阪市、福山市内のスーパー計6店舗協力のもと産声を上げ、現在は全国約1万店舗にまで拡大したリサイクル事業「エフピコ方式リサイクル」ですが、開始当初から協力店舗の説得や、回収対象品目[1]の周知徹底など、スーパーや消費者に向けた地道な呼び掛けが続けられました。また、開始当初は回収や購買意欲を刺激するポイントインセンティブを活用したキャンペーンも実施。主婦層などから広い支持を獲得し、スーパーの売上とイメージ向上に貢献したほか、協力店舗の新規獲得につながるなど、横展開を成功させました。さらに、1995(平成7)年制定の容器包装リサイクル法(2000年完全施行)により、スーパーが回収したトレーを同社が回収する事で、スーパー側も委託料金の節約につながるため、リサイクル事業拡大の追い風となりました。現在は、全国から年間約10,000トンのトレー・透明容器が回収されています(2022年3月期)。

    全国約1万店舗のスーパーに設けられた回収BOX㊧と回収されたトレー(同社提供)

    写真説明】全国約1万店舗のスーパーに設けられた回収BOX㊧と回収されたトレー(同社提供)

    回収拠点と回収量の推移(同社提供)

    図説明】回収拠点と回収量の推移(同社提供)

     

    3.エコトレーを支える「4者一体リサイクル」

    エフピコ方式リサイクルは、二つの特長があります。一つ目は同社と小売店、包材問屋(商社)、消費者の4者が一体となった、リサイクル体制(仕組み)です。同社が店舗にトレーを納品する自社トラックなどの帰り便を利用した静脈物流[2]で効率的な回収が行われています。自社物流の強みを生かし、回収時の運搬コスト抑制にもつながる「4者の意思が一体」となった持続可能な取り組みです。二つ目は、食品トレーメーカーでありながら自社製品を回収し再度、同製品(エコトレー)を生産する「水平リサイクル」[3]で、同社では「トレーtoトレー」と呼んでいます。トレーtoトレーは、業界唯一の取り組みです。

     

     

    水平リサイクルはカスケードリサイクル[4]と異なり、製品の品質を劣化させることなく再生が可能なうえ、石油使用量抑制ほか、CO2も30%低減されます。このほか同社...

    完全循環型社会の実現に向け進化続ける

    エフピコが生産する食品トレー

    環境問題が重要な社会課題として世界的に認識され、近年、その保護気運の高まりと共に定着してきたリサイクル活動ですが、食品トレー・容器の製造販売を行う株式会社エフピコ(代表取締役会長 兼 エフピコグループ代表・佐藤守正氏)では、環境問題への取り組みとして1990(平成2)年から地域スーパーマーケットなどと連携した発泡トレー(以下、トレーと表記)の回収・リサイクル事業を開始。その取り組みは全国に広がりをみせています。また、これに先駆け1986(昭和61)年からは、障がい者雇用も始め、同社グループ企業内において雇用の拡大に努めています。今回は、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)といった言葉が世に生まれる前から、環境保全活動(SDGs目標:7、9、12、13、14、15)やダイバーシティ経営に取り組む同社について、今月と来月の2回にわたり紹介します。

    【目次】

       

      国内製造業のSDGs取り組み事例一覧へ戻る

      1.先を見据えた企業防衛からリサイクル事業開始

      同社がトレーのリサイクル事業を始めたきっかけは、1980年代にアメリカで発生した大手外食チェーン企業に対する消費者運動(不買運動)でした。商品を包装する発泡容器製造の際に使用されるフロンガスがオゾン層破壊につながることに加え、容器のゴミ問題(ポイ捨て)から同国内で不買運動が発生。同運動が日本国内でも起こることを危惧した創業者の小松安弘氏が、企業防衛のため自主的にスーパーマーケットからのトレー回収とリサイクル活動を始めました。同社も「それほど、このような情報に敏感な時代だった」と振り返ります。

      株式会社エフピコ本社(広島県福山市・同社提供)

      写真説明】株式会社エフピコ本社(広島県福山市・同社提供)

       

      2.独自の“エフピコ方式リサイクル”、福山から全国へ拡大

      大阪市、福山市内のスーパー計6店舗協力のもと産声を上げ、現在は全国約1万店舗にまで拡大したリサイクル事業「エフピコ方式リサイクル」ですが、開始当初から協力店舗の説得や、回収対象品目[1]の周知徹底など、スーパーや消費者に向けた地道な呼び掛けが続けられました。また、開始当初は回収や購買意欲を刺激するポイントインセンティブを活用したキャンペーンも実施。主婦層などから広い支持を獲得し、スーパーの売上とイメージ向上に貢献したほか、協力店舗の新規獲得につながるなど、横展開を成功させました。さらに、1995(平成7)年制定の容器包装リサイクル法(2000年完全施行)により、スーパーが回収したトレーを同社が回収する事で、スーパー側も委託料金の節約につながるため、リサイクル事業拡大の追い風となりました。現在は、全国から年間約10,000トンのトレー・透明容器が回収されています(2022年3月期)。

      全国約1万店舗のスーパーに設けられた回収BOX㊧と回収されたトレー(同社提供)

      写真説明】全国約1万店舗のスーパーに設けられた回収BOX㊧と回収されたトレー(同社提供)

      回収拠点と回収量の推移(同社提供)

      図説明】回収拠点と回収量の推移(同社提供)

       

      3.エコトレーを支える「4者一体リサイクル」

      エフピコ方式リサイクルは、二つの特長があります。一つ目は同社と小売店、包材問屋(商社)、消費者の4者が一体となった、リサイクル体制(仕組み)です。同社が店舗にトレーを納品する自社トラックなどの帰り便を利用した静脈物流[2]で効率的な回収が行われています。自社物流の強みを生かし、回収時の運搬コスト抑制にもつながる「4者の意思が一体」となった持続可能な取り組みです。二つ目は、食品トレーメーカーでありながら自社製品を回収し再度、同製品(エコトレー)を生産する「水平リサイクル」[3]で、同社では「トレーtoトレー」と呼んでいます。トレーtoトレーは、業界唯一の取り組みです。

       

       

      水平リサイクルはカスケードリサイクル[4]と異なり、製品の品質を劣化させることなく再生が可能なうえ、石油使用量抑制ほか、CO2も30%低減されます。このほか同社では、回収された容器やペットボトルを「エコAPET」や「エコOPET」といった透明素材に再生し、これらは寿司や鮮魚容器の蓋(ふた)などに利用されています。

      回収された自社製品からリサイクルされたエコトレー㊧と「ボトルtoトレー」をPRするPETボトル回収車(同社提供)

      写真説明】回収された製品からリサイクルされたエコトレー㊧と「ボトルtoトレー」をPRするPETボトル回収車(同社提供)

      写真説明】回収された容器やペットボトルから生産された「エコAPET」(同社提供)

       

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      4.CO2削減は年間約17万トン、自社と顧客双方にメリット創出

      現在、同社は茨城、岐阜、広島3県にリサイクル工場を、またこれら3県に加え、北海道や静岡、佐賀など10道県に回収済みトレーや透明容器を選別するための選別センターと減容センター、全国3カ所にPETボトルリサイクル工場を設けています。トレー・透明容器は全国から年間約10,000トン(約22億枚)、PETボトルは同73,000トン(約30億本・いずれも2022年3月期)が回収されています。

      福山市に設けられた同社福山リサイクル工場㊧と選別センターのようす(同社提供)

      写真説明】福山市に設けられた同社福山リサイクル工場㊧と選別センターのようす(同社提供)

      回収されたプラスチック資源は選別・減容各センターで、不適品や色、素材などの選別がされた後、各リサイクル工場へ移され、再生ペレット(原材料)となり、その後新しいトレーに再生されます。同社によると、再生ペレットとバージン樹脂原料からそれぞれ、発泡トレーを生産した際のCO2排出量を比較すると、再生ペレット(エコトレー)の方が30%低減されるといったLCA(ライフサイクルアセスメント・環境影響評価)の評価結果が得られています。また「エコトレー」、「エコAPET」を合わせると、年間約17万トンのCO2が削減されています(同年3月期)。これらを背景に、容器包装リサイクル法や省エネ法などで食品廃棄物の排出抑制・リサイクルほか、年間エネルギー使用量の低減に向けた管理・報告が求められているスーパーに対しても、同社のエコトレー導入は非常に貢献しているといえます。

      エコトレー㊧とエコAPETのCO2削減効果(同社提供)

      図説明】エコトレー㊧とエコAPETのCO2削減効果(同社提供)

       

      5.「色付きトレーを完全リサイクル」、新技術で協業

      同社のリサイクル事業の進化は留まるところを知りません。今年8月、同社と印刷インキ、合成樹脂などの化学メーカーのDIC株式会社(東京都中央区、社長執行役員 猪野薫氏)は、プラスチック製食品トレーの完全型循環リサイクルに向け、原料のポリスチレンについて、世界初となる溶解分離リサイクル技術を用いた協業を開始。来年の社会実装を目指します。現在エフピコでは、一般家庭から排出される白色発泡トレーをエコトレーとしてリサイクルしている一方、色柄発泡トレーは再生ペレットが黒色となってしまうことから、ハンガーなどプラスチック製品の生産に利用されてきましたが今回、DIC社の技術を活用し、黒色の再生ペレットから着色成分を除去することで、従来の白色エコトレーと同様のリサイクルが可能となる見込みです。来年の実装が待たれます。同社も「エフピコリサイクル事業は永遠に走り続けます」と、環境先進企業の意気込みを語ってくれました。

      次回は、同社のダイバーシティ経営について紹介します。

      記事:産業革新研究所 編集部 深澤茂


      記事中解説

      [1]回収対象品目:白色の発泡トレーで(色柄や素材違いのほか、納豆やカップ麺容器は対象外)洗浄がされ、きれいな状態のもの。
      [2]静脈物流:使用済み(最終使用者)の製品、返品商品、輸送や販売などに伴って生じる廃棄物など、消費者から企業に向かう物流。
      [3]水平リサイクル:使用済み製品を同一種類の製品へとリサイクルすること。
      [4]カスケードリサイクル:元の製品よりも低い品質のものにリサイクルすること。

      ※次回記事「【SDGs取り組み事例】環境対策を基盤に、働き甲斐と経済成長を実現」はこちらから


       

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