おかしな物流設計:海外物流での勘所(その1)

投稿日

サプライチェーンマネジメント

 

◆おかしな物流設計

メーカーの海外進出は大企業にとどまらず、中小メーカーでも一般的になりました。工場を建てて日本で培った技術をベースに高品質のものづくりを行う。これが多くの会社で実現しているのです。しかし注意点があります。それが物流です。日本国内にあってもメーカーで物流はまだまだ二の次の存在です。

 

これは悪循環を生んでいます。『物流に回す人財がいない⇒物流人財が育たない⇒物流を変えられない』いつまでたっても物流がよくならないのです。このような状態で海外進出するとなると各社の頭を悩ませる存在が「物流」なのです。

 

仮に社内に物流がわかる人財がいたとしましょう。もし海外に工場を建設するとなると、その物流は物流がわかるそのスタッフの仕事になると思われます。そのスタッフは海外工場に関わる物流を一手に引き受けて仕事をこなしていかなければなりません。たとえば工場内物流について考えてみましょう。

 

工場の中の物流ではまず敷地内の工場建屋と工場内道路の設計が必要です。ここでよく見かけるおかしな現象について紹介しましょう。

 

工場で部品を受け入れる際に雨濡れは絶対に避けなければなりません。そのためトラックが入ってきたらトラックがすっぽりと入る屋根が工場建屋に必要になります。おかしな現象の1つ目は「トラックが屋根のあるエリアからはみ出している」という状況です。なぜこのような現象が起きるのでしょうか。

 

それはこのスタッフが日本のトラックをベースに設計しているからです。現地では日本より大きなトラックが一般的です。この現象は致命的ですね。別のおかしな現象も付随的に発生してしまうのです。それがプラットホームの無い工場です。海外ではトラックはリヤゲートから積み降ろしをすることが一般的です。それは日本でよく見かけるウイングボディーのトラックが無いからです。

 

日本人スタッフはどこでもウイングボディーを調達できると考え、平地でフォークリフトを使って積み降ろしをすることを考えます。だからプラッ...

サプライチェーンマネジメント

 

◆おかしな物流設計

メーカーの海外進出は大企業にとどまらず、中小メーカーでも一般的になりました。工場を建てて日本で培った技術をベースに高品質のものづくりを行う。これが多くの会社で実現しているのです。しかし注意点があります。それが物流です。日本国内にあってもメーカーで物流はまだまだ二の次の存在です。

 

これは悪循環を生んでいます。『物流に回す人財がいない⇒物流人財が育たない⇒物流を変えられない』いつまでたっても物流がよくならないのです。このような状態で海外進出するとなると各社の頭を悩ませる存在が「物流」なのです。

 

仮に社内に物流がわかる人財がいたとしましょう。もし海外に工場を建設するとなると、その物流は物流がわかるそのスタッフの仕事になると思われます。そのスタッフは海外工場に関わる物流を一手に引き受けて仕事をこなしていかなければなりません。たとえば工場内物流について考えてみましょう。

 

工場の中の物流ではまず敷地内の工場建屋と工場内道路の設計が必要です。ここでよく見かけるおかしな現象について紹介しましょう。

 

工場で部品を受け入れる際に雨濡れは絶対に避けなければなりません。そのためトラックが入ってきたらトラックがすっぽりと入る屋根が工場建屋に必要になります。おかしな現象の1つ目は「トラックが屋根のあるエリアからはみ出している」という状況です。なぜこのような現象が起きるのでしょうか。

 

それはこのスタッフが日本のトラックをベースに設計しているからです。現地では日本より大きなトラックが一般的です。この現象は致命的ですね。別のおかしな現象も付随的に発生してしまうのです。それがプラットホームの無い工場です。海外ではトラックはリヤゲートから積み降ろしをすることが一般的です。それは日本でよく見かけるウイングボディーのトラックが無いからです。

 

日本人スタッフはどこでもウイングボディーを調達できると考え、平地でフォークリフトを使って積み降ろしをすることを考えます。だからプラットホームの無い工場を設計してしまうのです。これが2つ目のおかしな現象です。これもまた大変なことになります。トラックのリヤゲートからの荷役を平地でやらなければならないのです。

 

こういった現象はなぜ起きてしまうのでしょうか。それは日本の物流しか知らない人が設計をしてしまうからなのです。

 

 

次回に続きます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
収益を決定するサプライチェーンの関係性

1.サプライチェーンの同期化と能力  個々の業務スピードが高くても、そのスピード自体がバラバラだと在庫が溜まるため、機会損失が発生します。そういった機会...

1.サプライチェーンの同期化と能力  個々の業務スピードが高くても、そのスピード自体がバラバラだと在庫が溜まるため、機会損失が発生します。そういった機会...


SCM効率を評価するKPIの新提案:最終回 SCM最前線 (その16)

   前回のその15に続いて解説します。   5. 面積原価によるSCM改革・改善の方針    これまで、面積原価...

   前回のその15に続いて解説します。   5. 面積原価によるSCM改革・改善の方針    これまで、面積原価...


レイアウトの考察 物流改善ネタ出し講座 (その9)

  【物流改善ネタ出し講座 連載目次】 1. なぜ物流は宝の山なのか 2. 宝の山の見つけ方 3. フォークリフトを考える 4. 荷姿...

  【物流改善ネタ出し講座 連載目次】 1. なぜ物流は宝の山なのか 2. 宝の山の見つけ方 3. フォークリフトを考える 4. 荷姿...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
  SCMにおける調達のしくみ:SCMの本質(その3)

  ◆SCMにおける調達のしくみづくり いつ、どれだけ必要だという確定情報、サプライヤーに同期してもらうためには、この確定発注情報の提供...

  ◆SCMにおける調達のしくみづくり いつ、どれだけ必要だという確定情報、サプライヤーに同期してもらうためには、この確定発注情報の提供...


物流ツールの共同利用:共同物流に取り組む(その2)

  ◆ 物流ツールの共同利用 共同物流は、そういった発想が頭の中になかった方もいらっしゃるかもしれません。しかし今後は確実に増えていくア...

  ◆ 物流ツールの共同利用 共同物流は、そういった発想が頭の中になかった方もいらっしゃるかもしれません。しかし今後は確実に増えていくア...


物流関連の契約 今後の物流に向けて荷主が取り組むべきこと(その2)

◆ フェアな物流契約の締結  燃料サーチャージ制度というものがあります。この制度は燃料が契約時点から変動すれば、一定の算式で算出した料金をベース価格...

◆ フェアな物流契約の締結  燃料サーチャージ制度というものがあります。この制度は燃料が契約時点から変動すれば、一定の算式で算出した料金をベース価格...