サービスレベルアグリーメント 物流サービス契約の締結(その1)

投稿日

SCM

 

◆ 業務変更時の対応

 荷主と物流事業者、工場の製造工程と物流部門など、それぞれの間でどのような物流サービスを実施するのかきちんと決めていますでしょうか。これがしっかりしていないと、後になって何かと問題が発生してしまいます。そこで、会社間ではサービスレベルアグリーメント(SLA)を、工場内では標準作業書を作成する必要があります。
 まずSLAについて考えてみましょう。これは契約ですから業務開始前に決定し、両社で合意のサインを取り交わす必要性が求められます。荷主と物流事業者間でしっかりとした契約が結ばれていないケースが多く、強い立場の方が有利となる事象が発生しやすいのです。

 たまに耳にするのですが「ついでだから○○もやってほしい」と荷主から要請されるケースがあるようです。これに対して、物流事業者側も「あまり追加工数も発生しないことだし、引き受けても問題ないだろう」といった対応をしてしまうことがあります。ところが、この小さな追加業務の積み重ねが、結果として大きな負担になることが考えられます。いくつもの荷主からちょっとずつ追加業務が来た結果、一人区増えてしまったというようなことが発生するのです。

 この追加業務に追加金額を徴収していなければ、会社の利益を圧迫することは目に見えています。在庫数量のFAXを一枚送付するという業務だけでも本来なら価格を設定し、荷主から徴収しなければならないことは当然のことでしょう。

 しかし遠慮があるのか、前述のようなことを言われたのか、あるいは単に面倒くさいのか、追加業務について見積もりを出さないことがあります。海外では契約社会ですから、このようなことはあり得ないことでしょうが、このあたりの曖昧(あいまい)さが日本社会なのかもしれません。

 

 新規契約の場合は請け負う業務の内容を、追加業務があった時にはその業務についてSLAに列記しましょう。そしてそれ以外の業務が発生した際は「別途見積もる」という一言を加えておくのです。業務は追加だけではなく、やり方が変更になることもあるでしょう。その際もSLAの記載を変更します。これは条件変更に伴う契約の変更ということになります。

 フェアなやり方は条件変更でコストが上がれば価格を上げ、コストが下がれば価格を下げるという方法でしょう。物流でよくある条件変更は物流量の変更です。契約当初の条件よりも物流量が増えれば単位コストが下がる可能性があり、その場合には価格を下げます。また、物流量が当初の条件より減れば単位コストが上がる可能性がありますので、価格を上げることになるでしょう。もちろん、物流量が何パーセントを超えて増減した場合は、価格を変えるということを契約当初に合意しておくことが望ましいと思われます。

 次回に続きます。


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?メリットや注目される背景を簡単に解説

インターネットの普及やグローバル化などによる事業環境の変化に伴い、サプライチェーンマネジメント(SCM)が改めて注目を集めています。ものづくりに関わる...

インターネットの普及やグローバル化などによる事業環境の変化に伴い、サプライチェーンマネジメント(SCM)が改めて注目を集めています。ものづくりに関わる...


連続的プロセス改善によるサプライチェーンのスピードアップ

 企業経営におけるコア・コンピタンスがスピードであるならば、何を経営指標としなければならないのでしょうか。組織ぐるみでの日本発の経営改善活動である連続的改...

 企業経営におけるコア・コンピタンスがスピードであるならば、何を経営指標としなければならないのでしょうか。組織ぐるみでの日本発の経営改善活動である連続的改...


海外工場支援者のための「物流指導7つ道具」(その3)

第3回 道具2「物流設計マニュアル」   ◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』 1.工場内物流設計マニュアルの要点  ...

第3回 道具2「物流設計マニュアル」   ◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』 1.工場内物流設計マニュアルの要点  ...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
  部下の評価とは:物流管理者の育て方(その6)

  ◆ 部下の評価 物流管理者が部下を評価する際には、公平公正に行うことが重要です。上司が評価する能力を持っていない部下は可哀そうです。...

  ◆ 部下の評価 物流管理者が部下を評価する際には、公平公正に行うことが重要です。上司が評価する能力を持っていない部下は可哀そうです。...


自ら変わること:物流の地位向上のために(その3)

  ◆ 自ら変わること 物流は、自分たちの効率を顧客のメリットよりも優先して実施することが見受けられイメージを悪くしている節もあります。...

  ◆ 自ら変わること 物流は、自分たちの効率を顧客のメリットよりも優先して実施することが見受けられイメージを悪くしている節もあります。...


原価積み上げでの価格設定:購買業務の要点(その4)

  ◆ 原価積み上げでの価格設定 RFQ:Request for proposal:提案要請プロセスにおいては見積価格を提示していただき...

  ◆ 原価積み上げでの価格設定 RFQ:Request for proposal:提案要請プロセスにおいては見積価格を提示していただき...