金型メーカー設計部門の業務診断事例

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金型メーカー

 今回は、金型メーカーの設計部門を業務診断した事例を箇条書きで紹介しますので、診断項目とそのポイントを参考にご覧下さい。

1. 複数設計者で強度や品質に個人差が出ないよう、設計規格書が整備されているか 

 設計者が一人しかいないといった金型メーカーでは必要性は低いかもしれませんが、社内で設計者が何人もいる場合、統一したルールで設計ができるよう設計規格書が整備されているかを診断しています。

 これが整備されていないと、強度不足の金型が設計されてしまうといった機能不全の面だけではなく、後工程において金型ごとに加工で使用するエンドミルの種類が異なるとか、使用する締結部品や市販部品の種類がバラバラなため、購買や組み立て工程の担当者の手間が余計にかかるなど弊害が起こりやすくなります。

 レベルの高い設計規格書とは、金型材料や締結部品、市販部品などの種類が記載されているだけではなく、その選定指針までが理由つきで書かれているため、社内の設計ノウハウや情報を高レベルで統一・共有していくことができるのです。

2. 大日程から小日程まで日程計画は立てられているか、大雑把な管理ではないか 

 まず前提として金型の日程管理は、次のように段階的に分けて行うものと考えています。

  • 大日程計画(金型ごとの管理)
  • 中日程計画(部品ごとの管理)
  • 小日程計画(工程ごとの管理)

 特に小日程計画は、機械や人ごとの日程計画となり「差し立て」とも呼ばれています。

 これまで診断してきた感想として、多くの金型メーカーでは①大日程計画と②中日程計画は機能しているが③の小日程計画がうまく機能していないようでした。精度の高い作業工数の見積もりを行い、差し立て板をうまく機能させることがポイントです。

3. 正しい進捗管理の仕組みは整っているか 

 設計の進捗管理は、どの企業でも難しいという意見を聞きます。

 その理由としては機械加工などとは異なり、加工部品数のようにボリュームを定量的に表現することが難しく、また構想設計のように必要な工数をなかなか予測できない点などがあります。

 よくガントチャートによる日々の進捗を線で埋める(伸ばしていく)方法がよく使われていますが、計画に対しどれだけ先行しているのか遅れているのかが分からないのです。

 本来進捗管理というものは、締め切り日に間に合った・間に合わなかったという結果論ではなく、日々の管理の中でどれだけ早く対策(アクション)が取れるかが重要なポイントになります。こうした管理ができているかを診断します。

4. 細かなマイルストーンを設定した日程管理ができているか 

 よく金型の大日程計画に記載されている設計工程そのものの進捗が、若手設計者ほど遅れていく傾向があります。

 設計工程を細分化し、それぞれ期限を付けたマイルストーン(中間目標地点)で上司や先輩設計者がフォローをすれば、若手設計者が抱える「何度も手戻りを繰り返す」といった問題に対応することができます。

 マイルストーンを適切に管理し正しい設計の手順を踏みながら、設計間違いによる大規模修正のリスクを避けた進捗管理ができているかを診断しています。

5. 情報共有がしやすい設計ルームのレイアウトになっているか 

 働き方改革にも着手しなければならない現代社会では設計部門に限らず、たっぷり時間をかけた重量級の会議のやり方は時代遅れといえます。

 別室に移動して時間をかけるのではなく、さっと集まり最小限の時間で情報交換や意見収集を行う迅速なショートミーティングを行うことが理想です。

 個人依存になりがちな設計作業において複数の知恵を出し合ったり、必要なタイミングで複数の担当者に情報を伝えることができるような設計ルームのレイアウトになっているかの診断を行っています。

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 今回紹介したのは設計工程を中心とした診断項目ですが、これまで診断を行ってきた感想として次回以降も紹介する全ての項目が100パーセント整備されているといった金型メーカーはほとんどありません。

 筆者が常に思っていることとして、IOTやAIも時代の進化に合わせて導入していくことも重要ですが、そこで働く人間自身や仕事のやり方自体にまだまだ「伸びしろ」があるとも思っています。

 この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「型技術」掲載』の記事を筆者により改変したものです。


この記事の著者

村上 英樹

金型・部品加工業専門コンサルティングです!販路開拓・生産改善・外注費削減の3つを支援するトライアングル支援パッケージ、技術を起点とする新しい経営コンサルタント

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