顧客コンサルティング、五感で定量的に顧客を理解する!

1.顧客へのコンサルティグの有効性

 だいぶ前から、単に製品を売るだけでなく、その顧客特有の課題に合わせた解決策を提供するために、コンサルティングを提供するという考え方が言われ始めました。製品だけでは他社との差別化が難しい状況下で、自社の顧客への提供価値を高めるために大変有効な方法です。

 しかしコンサルティグには、さらに重要な効果があります。それはコンサルティングを通じて、顧客を深く知ることができるという点です。顧客にコンサルティングを提供するためには、単に目の前の顧客のことを知るだけで適切なコンサルティングができるわけではありません。予め顧客課題の解決のための様々な道具が準備され、またその道具の組み合わせについて熟知している必要があります。
 そのような道具や知見はどこにあるかというと、過去の様々なコンサルティングの経験や知識の蓄積に基づき生み出されるものです。つまり顧客へのコンサルティングの提供は、顧客への最適な価値提供であると同時に、今後のソリューション提供のために顧客を学ぶ極めて重要な場ともなるのです。

 ここで重要なことが2点あります。一つは、「目の前のその顧客」について学ぶだけでなく、そのような活動を続けることで「顧客の集まり」としての市場について学ぶことです。目の前の顧客は、市場全体の中で特異なニーズを持つ顧客かもしれません。重要なのは、目の前の顧客もさることながら、市場を俯瞰してその市場の全体像を知ることです。

 そしてもう一点が、顧客へのコンサルティングを通じて、顧客を感覚で理解することです。誰か他人からの伝聞やレポートを通じてではなく、顧客に直接触れ、五感を持って顧客を「感じる」ことです。この経験は今後のテーマ創出にとって極めて貴重な経験です。なぜなら、記憶している情報量が多ければ多いほどアイデア創出の可能性が高まる一方で、人間が記憶している情報は文字や言葉になっている形式知よりも、言葉や文字では言い表せない暗黙知の情報が圧倒的に多いからです。

セミナー「ステージゲート・プロセスを活用したR&Dテーマ評価・選定のマネジメント」

10:30 ~ 16:30 

江東区産業会館 第1会議室

49,980円

2.キーエンスの事例

 このようなことを明確に意識して、コンサルティグの提供を行なっている企業は多くないように思いますが、十分理解し製品開発に活かしている企業としてキーエンスがあります。キーエンスは、コンサルティング営業を極めて重視しています。例えばキーエンスでは、技術の知識を持つ営業担当者がコンサルティングを行います。それは上でも述べたように、コンサルティングによって顧客に最適な価値を提供すると同時に、顧客を知る重要な場であるからであり、同社の場合にはむしろ後者をより重視しています。

 キーエンスは、顧客の実際の使用環境の中で良く自社製品をデモします。なぜなら、デモによって顧客に実際の使用環境下での自社製品の良さを認識してもらうことに加え、キーエンスの担当者が自社の製品が顧客の現場で使われる状況を実際に観察することで、顧客の使用環境やニーズを深く理解することができるからです。また、作業時間等定量的なデータを入手することができる可能性もあります。

 キーエンスの担当者はこのような経験を通じ、五感でかつ定量的に顧客を理解し、さらに多数の顧客で経験することで、競合他社や顧客ですら経験できない様々な情報を蓄積することができます。キーエンスがあえて代理店を使わないで、創業以来直販を採用しているのはこの活動のためです。

3.顧客コンサルティングに必要な準備

 しかし、コンサルティングを効果的に実行するには周到な準備が必要です。具体的には、以下のような体制が必要です。

○コンサルティグを通じての顧客提供価値拡大の循環

 まず、コンサルティグ提供の大きなフレームワークとして、「顧客・市場の知識獲得→社内での共有→新しい製品・サービス・提案内容の創出→顧客の提供値拡大」の組織横断的な循環の仕組みを社内に作る必要があります。この基本的なフレームワークによって、顧客への提供価値が継続的に向上します。
 その上で、以下のような好循環の輪を構成する個別の機能の強化を図ります。

○顧客の理解を加速するための道具立て

 キーエンスが行なっているように、顧客の現場で製品のデモを行なうといった道具立てが必要です。キーエンスはデモのほかにも、デモ機を顧客に貸して使ってもらいます。その場合必ずしも顧客の現場に立ち会うことができなくても、顧客が実際に使ってみた結果について顧客からフィードバックが得られますし、そのフィードバックを受ける過程で顧客に対して効果的に質問する機会を得て、より顧客を深く理解することができます。

○顧客についての知識を社内で共有し新たなアイデアを創出する仕組み

 営業マンは1人ではありません。日本中、世界中で同じ製品を売っている営業マンは何十人、何百人もいます。彼ら1人1人が前記のような活動を行っていますから、経験する内容も様々です。そのような多様な数多くの顧客についての経験を組織として共有し、市場全体を俯瞰し、その中から新たなテーマについてのアイデアを生み出すと言う活動が極めて重要です。

○各コンサルタントの能力向上

 各コンサルタントがこのような環境に身を置くことで、日々顧客知識の拡大を含めた様々な能力が向上していきますが、より主体的にそれまで得られ、組織で共有している知見に基づくコンサルティングの教育も有効です。

 
 以上のようにコンサルタントの役割を技術者や研究者が行なうことで、顧客を深く理解することができ、それに基づき彼ら自身が革新的なテーマを創出することができるようになるのです。


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

今多くの日本企業は「技術で勝って、事業で負ける」という問題を抱えています。ステージゲート法はこの問題を解決する極めて有効は方法論です。米国では製造業の6割が利用し、日本においても100社以上で活用されている手法で、最近では富士フイルムが本…

無料会員登録でさらにあなたに特化した情報を手に入れましょう。

①「ステージゲート法」の関連記事が掲載されたらメールでお知らせ

②専門家「浪江 一公」先生に記事内容について直接質問が可能

③他にも数々の特典があります。

すでに会員の方はこちらからログイン