他社との共同物流とは

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1. 輸配送の共同化

 物流の効率を向上させるためには何が効果的でしょうか。それはずばり荷量をまとめるということです。一般的に荷物が分散すると物流の効率は低下します。もちろん社内で荷量を集めることは重要です。大きい会社では部門が違うことで輸送発注をばらばらに行い、効率を低下させていることがあります。
 
 この場合、社内に配車担当者を置き、その人に輸送情報を集中させることをお勧めします。この人が方面別配車を行い、原則として混載で輸送することを考えます。そしてさらに荷量を集めるためには他社と組むということが挙げられます。これは非常に大きなコストセービングにつながりますし、トラックの効率的利用にもつながります。
 
 最近ではトラックドライバー不足の影響もあり、輸送力全体が不足しつつあります。この背景にはトラックドライバーの不足というよりも、小口貨物が増えてきているといった方が正確でしょう。
 
 トラック1台当たりの効率は40%強であり、せっかくの社会インフラの半分も使えていない現状にあります。その結果として、CO2排出量や交通渋滞を引き起こすことにもつながっているわけです。ならばということで、自社の効率を上げるだけではなく、社会にも貢献しようと考えるのは自然な流れではないでしょうか。
 
 それを実現できる手段が他社との共同物流の実行です。他社と共同することで荷をまとめ、トラックを満載で運ぶなどの効率のよい物流につなげることができるのです。他社と共同という話を聞くと「なかなか一歩を踏み出せない」という人もいることでしょう。よく理解できます。多分同業他社の人と仕事の話をする機会はなかなかなかったでしょうから。
 
 また場合によっては同業他社の人と話をすること自体が独占禁止法に抵触する可能性がありますから、慎重に対応することが求められます。ただし物流を本業としていない会社同士であれば共同で行うことが直接的に法に抵触するわけではありません。むしろ本業では競争、物流では共同することこそが理想の姿であるといえそうです。ということで、早速共同物流について考えてみましょう。
 
 共同物流として真っ先に思い浮かぶのは「輸配送」ではないでしょうか。輸配送には比較的距離の短い顧客への配送とそれ以外の輸送に区分されます。まず配送について見ていきましょう。たとえば顧客の近隣に所在する自社から顧客への配送ですが、その近くに同業他社があり、納品先が同じ顧客であれば、まず同じトラックでの配送を考えてみるとよいのではないでしょうか。
 
SCM
 

2. 共同輸送と容器の共同利用

 共同配送は届け先が同じという条件があります。意外となさそうで実際にはあるのが共通届け先です。特にB to Bではよくあることです。自社の工場が所在ずる工業団地に同業他社が所在していたとします。そして届け先が同じ得意先の場合があります。このようなケースでは確実に共同配送すべきです。大抵の会社は独自にトラックを配車していますが、意識的に共同配送を行うパートナーを探してみるとよいと思います。
 
 次に共同輸送について確認していきましょう。比較的運搬距離が長いものを輸送と定義しましょう。たとえば関東地区から関西地区への輸送です。この場合、届け先が必ずしも同じでなくてもメリットがあります。A社の届け先が大阪市内、B社の届け先が神戸市内ということはよくあることです。
 
 まずA社の届け先で荷降ろしし、次にB社の届け先である神戸に移動します。共同輸送のメリットは輸送距離が長ければ長いほど効果が大きい可能性があります。ですから、積み込み時に2箇所立ち寄り、荷降ろし時に2箇所立ち寄りのようなシンプルな輸送の場合には非常に取り組みやすいと考えられます。
 
 このような共同輸配送を行ってみるとあることに気づくと思います。そのあることとは、「荷姿が異なり、箱同士が積み重ならない」という現象です。それもそのはず。荷姿は業界で統一でもしない限り、個々の会社で決めるからです。そうなると大変です。せっかく計算上はトラックに混載が可能でも、実際には積み合せられないということが発生するのです。
 
 そこで共同輸配送に合わせて考えるとよいのが「容器の共同利用」です。製品の大きさや材質などの特性がまるっきり異なる場合には難しいかもしれませんが、それが似通った会社間では十分成立する可能性があります。
 
 この容器の統一は輸配送の共同化の効果を著しく向上させるものです。単に共同輸配送を行う企業間で行うことはもちろんですが、できれば業界として容器を統一するとよいと思います。簡単なアイテムではありませんが、トラック積載率を向上し、トラック台数を減らすためにうってつけの改善アイテムです。ぜひ前向きに検討したいものです。
 

3. 物流勉強会を企画

 物流ではボリュームを大きくすることが効率化のカギになります。1社よりも2社、2社よりも3社と、物流ボリュームを増やしながら効率化を考えていくとよいでしょう。物流にはいくつもの共同化によるオポチュニィがあります。それを見つけるためには今の物流の実態をよく見るとともに、どうしていきたいかについて考えることにあります。
 
 同時にできるだけいろいろな視点で考えていくことが望ましいでしょう。そこでできれば複数の会社の物流担当者が集まって勉強会を開催するとよいと思います。物流...

1. 輸配送の共同化

 物流の効率を向上させるためには何が効果的でしょうか。それはずばり荷量をまとめるということです。一般的に荷物が分散すると物流の効率は低下します。もちろん社内で荷量を集めることは重要です。大きい会社では部門が違うことで輸送発注をばらばらに行い、効率を低下させていることがあります。
 
 この場合、社内に配車担当者を置き、その人に輸送情報を集中させることをお勧めします。この人が方面別配車を行い、原則として混載で輸送することを考えます。そしてさらに荷量を集めるためには他社と組むということが挙げられます。これは非常に大きなコストセービングにつながりますし、トラックの効率的利用にもつながります。
 
 最近ではトラックドライバー不足の影響もあり、輸送力全体が不足しつつあります。この背景にはトラックドライバーの不足というよりも、小口貨物が増えてきているといった方が正確でしょう。
 
 トラック1台当たりの効率は40%強であり、せっかくの社会インフラの半分も使えていない現状にあります。その結果として、CO2排出量や交通渋滞を引き起こすことにもつながっているわけです。ならばということで、自社の効率を上げるだけではなく、社会にも貢献しようと考えるのは自然な流れではないでしょうか。
 
 それを実現できる手段が他社との共同物流の実行です。他社と共同することで荷をまとめ、トラックを満載で運ぶなどの効率のよい物流につなげることができるのです。他社と共同という話を聞くと「なかなか一歩を踏み出せない」という人もいることでしょう。よく理解できます。多分同業他社の人と仕事の話をする機会はなかなかなかったでしょうから。
 
 また場合によっては同業他社の人と話をすること自体が独占禁止法に抵触する可能性がありますから、慎重に対応することが求められます。ただし物流を本業としていない会社同士であれば共同で行うことが直接的に法に抵触するわけではありません。むしろ本業では競争、物流では共同することこそが理想の姿であるといえそうです。ということで、早速共同物流について考えてみましょう。
 
 共同物流として真っ先に思い浮かぶのは「輸配送」ではないでしょうか。輸配送には比較的距離の短い顧客への配送とそれ以外の輸送に区分されます。まず配送について見ていきましょう。たとえば顧客の近隣に所在する自社から顧客への配送ですが、その近くに同業他社があり、納品先が同じ顧客であれば、まず同じトラックでの配送を考えてみるとよいのではないでしょうか。
 
SCM
 

2. 共同輸送と容器の共同利用

 共同配送は届け先が同じという条件があります。意外となさそうで実際にはあるのが共通届け先です。特にB to Bではよくあることです。自社の工場が所在ずる工業団地に同業他社が所在していたとします。そして届け先が同じ得意先の場合があります。このようなケースでは確実に共同配送すべきです。大抵の会社は独自にトラックを配車していますが、意識的に共同配送を行うパートナーを探してみるとよいと思います。
 
 次に共同輸送について確認していきましょう。比較的運搬距離が長いものを輸送と定義しましょう。たとえば関東地区から関西地区への輸送です。この場合、届け先が必ずしも同じでなくてもメリットがあります。A社の届け先が大阪市内、B社の届け先が神戸市内ということはよくあることです。
 
 まずA社の届け先で荷降ろしし、次にB社の届け先である神戸に移動します。共同輸送のメリットは輸送距離が長ければ長いほど効果が大きい可能性があります。ですから、積み込み時に2箇所立ち寄り、荷降ろし時に2箇所立ち寄りのようなシンプルな輸送の場合には非常に取り組みやすいと考えられます。
 
 このような共同輸配送を行ってみるとあることに気づくと思います。そのあることとは、「荷姿が異なり、箱同士が積み重ならない」という現象です。それもそのはず。荷姿は業界で統一でもしない限り、個々の会社で決めるからです。そうなると大変です。せっかく計算上はトラックに混載が可能でも、実際には積み合せられないということが発生するのです。
 
 そこで共同輸配送に合わせて考えるとよいのが「容器の共同利用」です。製品の大きさや材質などの特性がまるっきり異なる場合には難しいかもしれませんが、それが似通った会社間では十分成立する可能性があります。
 
 この容器の統一は輸配送の共同化の効果を著しく向上させるものです。単に共同輸配送を行う企業間で行うことはもちろんですが、できれば業界として容器を統一するとよいと思います。簡単なアイテムではありませんが、トラック積載率を向上し、トラック台数を減らすためにうってつけの改善アイテムです。ぜひ前向きに検討したいものです。
 

3. 物流勉強会を企画

 物流ではボリュームを大きくすることが効率化のカギになります。1社よりも2社、2社よりも3社と、物流ボリュームを増やしながら効率化を考えていくとよいでしょう。物流にはいくつもの共同化によるオポチュニィがあります。それを見つけるためには今の物流の実態をよく見るとともに、どうしていきたいかについて考えることにあります。
 
 同時にできるだけいろいろな視点で考えていくことが望ましいでしょう。そこでできれば複数の会社の物流担当者が集まって勉強会を開催するとよいと思います。物流に悩んでいる人はたくさんいます。一人で悩んでいてもなかなか解が見つからないことでしょう。
 
 だからこそ勉強会という形でも何でもいので、関係者で集まることです。その場でそれぞれの会社の人から今の物流課題について披露します。そうすると同じ悩みを抱えている人がいることがわかります。また、その悩みをある方法で解決したという人も現れることでしょう。そうすればしめたものです。ぜひ解決方法を聞いて、同じことをやってみることです。
 
 共同物流は輸配送を効率化したり、容器を共有化したりと実際に同じテーブルに載ることに目が行きがちです。これはこれで大きな効果を得られる素晴らしいやり方ではあります。ただしそこに至らなくても、情報の共有化だけでも大きな効果があることがわかるでしょう。そのための勉強会なのです。やはりそこで得られる情報の中には目からウロコのようなものも含まれていると思われます。また他社の人たちと触れ合うことで刺激を受けることも大切なことです。
 
 ではどのようにして物流勉強会を企画したらよいでしょうか。まずは近隣の類似業種の会社に声がけしてみてはいかがでしょうか。商工会議所や商工会などに勉強会の開催を持ちかけてもよいかもしれません。ぜひ共同物流の一環として、他者との物流研究を実行されることをお勧めしたいものです。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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