「アンケート手法」とは、キーワードからわかりやすく解説

 

1. アンケート手法とは

アンケート手法とは、ユーザーあるいはその候補者に対して予め設定された質問への回答を回収し、統計的な処理によって意識、要求の全体像を知る方法です。 実施形態は、面接法、留置法、郵送法、電話法、インターネット法、集合調査など多種多様で、目的とする対象や期間、内容によって適切に使い分ける必要があります。 質問文章や順番、構成によっても回答が変わることがあり、調査票の構成には注意が必要です。

2. アンケート手法、アンケート調査票の作り方

アンケート調査は調査仮説や調査目的に基づき、明らかにしたいことを具体的な調査項目へ落とし込みます。

(1)答えやすいアンケートとは

事実を聞く質問が答えやすいのです。例えば、性別を問う質問は迷うことなく答えることができます。商品を提示した評価は答えやすいでしょう。
 
商品評価アンケートでのインターネット調査ですが、段階評価を活用したアンケートは回答者の脱落が少ないので、利用する効果は大きいでしょう。

(2)答えにくいアンケートとは

顧客の真の声を聞くことがアンケートが目標ですから、次のような答えにくい内容は避けましょう。

  • 回答に迷う
  • 質問の意図がわからない
  • 回答について考える
  • 回答を文章で書く

3. アンケート調査設計と調査分析に役立つ検定方法

アンケート調査における検定方法はその質問の仕方によっていくつか方法があります。アンケート調査の目的に応じて使い分けするとよいでしょう。

(1)フリードマン検定

フリードマン検定は、3項目以上の中央値が当てはまるかどうかを検定するノンパラメトリックな検定方法です。ノンパラメトリック検定とは母集団分布に正規分布のような特定の分布を仮定せず、分布の形にこだわらずに行う検定を行います。

(2)t検定

t検定は、2つの標本の平均値が当てはまるかどうかを検定する統計的な検定方法の一つです。標本が対応ありと対応なしの2つの検定があります。標本とはアンケート調査では5段階評価で回答された重要度評価、総合満足度などの回答を示します。対応のある標本のt検定は、同じ回答者から得られた回答の2つの標本に対して用いられます。

(3)MaxDiff法

MaxDiff法は、機能評価などの選択において最も評価が良い評価と最も評価が悪い評価において調査手法の一つです。この手法では、複数の選択肢を用意し、それらにその中から最も好ましい選択肢と最も好ましくない選択肢を選んでもらいます。最も好ましくない選択肢を選んだ度数や比率を求めます。

4. アンケート調査結果の多角的な分析と活用

アンケート調査の真価は、収集したデータをいかに深く分析し、具体的なアクションにつなげるかにあります。単に集計するだけでなく、設問間の関連性や、回答者の属性による傾向の違いを明らかにすることが重要です。

【クロス集計による洞察の抽出】クロス集計は、特定の2つまたはそれ以上の質問の回答を組み合わせて集計する手法です。「性別」と「商品Aの満足度」など、属性データと意識データを掛け合わせることで「20代女性の満足度は特に低い」といった具体的な洞察を得ることができます。この洞察は、問題の所在を明確にし、マーケティング戦略や商品改善の方向性を定める上で不可欠な羅針盤となります。

【自由記述回答の質的分析】数値化された選択式回答だけでなく、自由記述回答には顧客の生の感情や詳細な意見が詰まっています。これらは、頻出するキーワードの抽出や、意見のポジティブ・ネガティブといった感情分類(センチメント分析)を通じて、定量データだけでは見えなかった深い背景や、潜在的なニーズを発掘する宝庫となり得ます。質的分析を行うことで、定量データから得られた傾向の「なぜ」を理解する手助けになります。

【統計的分析による因果関係の追求】前述のt検定やMaxDiff法に加え、さらに進んだ統計的手法を用いることで、変数間の複雑な関係性や因果関係の可能性を検証できます。例えば、顧客満足度に影響を与えている具体的な要因(例:価格、デザイン、サポート体制など)の相対的な重要度を知るためには、回帰分析が有効です。また、回答者を共通の特性に基づいてグループ分け(クラスター分析)することで、ターゲットとする顧客セグメントの特性を明確にし、よりパーソナライズされた施策を打つことが可能になります。

5. アンケート結果の活用とフィードバック

分析されたデータは、単なる報告書で終わらせることなく、組織全体での意思決定や行動変容に結びつけなければ意味がありません。

【意思決定への反映】調査結果は、製品開発、サービス改善、プロモーション戦略、人事評価、さらには組織文化の変革といった多岐にわたる意思決定の基礎情報として活用されます。例えば、「製品Bの特定機能に関する不満が高い」という結果が出た場合、エンジニアリングチームは該当機能の改修を優先し、マーケティングチームはその改善点を訴求するキャンペーンを計画するといった具体的な連携が生まれます。

【フィードバックの重要性】アンケートを実施した対象者に対して、調査結果の一部や、それに基づいて組織が取る具体的な行動をフィードバックすることは極めて重要です。回答者は、自分の意見が尊重され、改善に役立てられていると感じることで、組織への信頼感やエンゲージメントが高まります。「意見を言っても無駄だ」という感覚を持たせないためにも、この「閉じないサイクル」の構築が、次回の調査協力率向上にもつながります。

【ベンチマークとしての活用】継続的に同じアンケート調査を実施することで、時系列での変化を捉えることができます。競合他社や業界平均と比較するベンチマークとして活用することで、自社の強みや弱みの変化を定量的に把握し、市場における相対的な立ち位置を客観的に評価できます。この変化のトレンドを分析することは、将来の市場予測やリスク管理にも役立ちます。

6. アンケート調査における倫理と配慮

アンケート手法の科学性・実用性が高まる一方で、回答者に対する倫理的な配慮は不可欠です。

【プライバシーと個人情報の保護】アンケート調査では、氏名や連絡先といった個人情報だけでなく、個人の意識や意見という機密性の高い情報を取り扱います。収集したデータは、統計的な目的以外には絶対に使用しないことを明確に伝え、匿名性の確保やデータ管理の徹底を行う必要があります。特にインターネット調査では、セキュリティ対策を講じ、回答者の情報が外部に漏れないよう細心の注意を払うことが、信頼を維持する土台となります。

【インフォームド・コンセント】回答者に調査の目的、所要時間、データの利用方法、そして回答が任意であることを事前に明確に伝え、自由意思に基づく同意(インフォームド・コンセント)を得るべきです。回答を強制したり、誤解を招くような誘導的な表現を使ったりすることは、倫理的に許されません。公正な手続きを踏むことで、得られる回答の質も向上し、調査全体の信頼性も高まります。

7. まとめ

アンケート手法は、単なる「多数決」のツールではなく、人間の意識や行動の背後にある構造を解明するための強力な科学的手段です。テクノロジーの進化により、AIを活用した自由記述の感情分析や、より洗練された多変量解析が容易になっています。今後は、他のビッグデータ(購買履歴、ウェブ閲覧履歴など)との融合が進み、より個々人に最適化されたニーズの把握へと進化していくでしょう。適切な設計、深い分析、そして倫理的な配慮をもって実施されるアンケートは、組織にとって不可欠な未来を形作るための対話であり続けます。

 


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