親和図法(KJ法)とは、キーワードからわかりやすく解説

 

1. 親和図法(KJ法)とは

 KJ法は新QC7つ道具の親和図法の原型です。親和図法とは、混沌とした事象を理解するにあたり、複数のメンバーで意見、事実等をカードに記述し、集めた中から親和性の高いグループを探し、そこに新たな名前を付けていく事で、構造を明らかにしたり、事象を整理してゆく方法です。考案者の川喜多二郎氏のイニシャルからKJ法とも呼ばれますが、商法登録の関係でN7の中では親和図法と呼びます。

 

2. 親和図法(KJ法)の定義

川喜田二郎の提唱する発創法。個人の考えや観察、仲間の話したことなどを『一時一項一カード』を原則として単位化し、適切な一行見出しをつけて概念化する。それらのカード全体を概観できる範囲で並べながら、親近性のあるものをグルーピングし、共通する特徴を圧縮して見出しをつけ、さらに関連の深いもの同士をまとめる。これを何段階かくり返して大グループを編成し、その内部のカードの相互関係を詳しく検討して、全体の構造をマッピングしたり、文章化していく。この方法によって経験的事実の一般化が図られ、理論化の基礎とすることができる。

 

3. 親和図法(KJ法)の目的

親和図法はオリジナルであるKJ法 がそうであるように、非常に広範な活用が期待される手法であり、「現状把握」と「デザインアプローチ」 に整理され、前者は連関図法がよりふさわしく、後者こそが親和図法の対象であり、その機能を十分発揮させ得るデータ採取には「あるべき姿を具現するための打開策を問う形」にするのがよいでしょう。

 

4. 親和図法と系統図法の使い分けと連携

親和図法と系統図法は、新QC七つ道具としてしばしば対比されますが、その特性を理解することで、課題解決のプロセスにおいて相補的に活用できます。親和図法の真骨頂は、漠然とした事象や未分化な情報群から、潜在的な構造や関係性を見つけ出す点にあります。多様な意見や事実を直観的にグルーピングし、新たな概念(見出し)を与えることで、これまで見えていなかった問題の輪郭や、関係者の共通認識を形成するのに優れています。これは、特に問題が何であるか自体が不明瞭な、混沌とした初期段階で非常に有効です。一方、系統図法は、明確になった目的や問題に対して、それを達成・解決するための論理的な道筋(方策)や構成要素を、ツリー状に分解・展開する際に力を発揮します。これは、「目標を達成するための手段」や「問題の原因究明(なぜなぜ分析)」といった、因果関係や包含関係が問われる段階でその論理的思考を可視化します。この二つの手法は、課題解決の段階に応じて連携させることで、思考をより深く、実践的にすることができます。親和図法でブレインストーミングやフィールドワークで集めた大量のデータや意見を整理し、解決すべき大枠の問題点や、目指すべき「あるべき姿」の要素を抽象化し、抽出します。系統図法で親和図法で見出した核心的な問題や「あるべき姿」を、具体的な目的として設定し、その目的を達成するための具体的な手段・方策(アクション)を階層的に展開します。このように、親和図法が「問題の発見と概念化」を担い、系統図法が「解決策の具体化と実行計画への落とし込み」を担うことで、初期の混乱状態から、最終的なアクションプランへと、思考のバトンを論理的に繋ぐことができるのです。

 
 

5. 親和図法(KJ法)の限界と乗り越え方

親和図法は強力なツールである反面、その運用には注意が必要です。一つの限界は、その結果がファシリテーターの解釈に大きく左右される点です。グルーピングや見出しの命名は、客観的な統計的手法ではなく、参加者の「親近性」や「直感」に依存します。そのため、参加者の間で共通理解が得られない場合や、ファシリテーターが特定の方向に誘導してしまうと、客観性を欠いた、独善的な結果に終わる危険性があります。これを乗り越えるためには、プロセスにおける対話と合意形成を重視することが不可欠です。カードのグルーピングや見出しの命名の都度、なぜそう分類したのか、その見出しは何を意味するのかを言語化し、参加者全員の腹落ちを図る必要があります。川喜多二郎氏自身も、KJ法は単なる図解作成技術ではなく、「事実を事実として受け止め、そこから新たな意味を見出すための、人々の間の共同的な認識作業」であると述べており、コミュニケーションを促進する場作りが本質であることを示唆しています。もう一つの限界は、データ量が膨大になると、整理が困難になることです。親和図法はカード全体を概観できる範囲で扱うことが前提ですが、数百枚を超えるカードになると、全体像を把握し、適切なグルーピングを行うことが人間の認知能力の限界を超えかねません。この対処法としては、まず「一次グルーピング」として小さな親和図を作成し、その見出しカード同士を新たなデータとして「二次グルーピング」にかける、という階層的な適用が有効です。これにより、複雑な情報を段階的に抽象化し、より高次元な概念構造を抽出することが可能となります。

 
 

6. 系統図法を応用した戦略的な思考展開

系統図法、特に方策展開型は、戦略策定や事業計画の立案において、非常に強力なフレームワークとして応用できます。系統図法は、単に「目的」と「手段」を繋ぐだけでなく、「目的の階層化」を可能にします。最上位に「最終目標」(例:企業価値の向上)を置き、その直下に「中間目標」(例:顧客満足度の向上、生産性の向上)、さらにその下に具体的な「部門ごとの目標」といった形で、目標を段階的に分解していきます。そして、各段階の目標を達成するための「方策」や「手段」をツリー状に展開します。この展開の過程では、上位の目的を達成するために、その下位の手段が本当に適切で効果的なのかを、常に論理的に検証することが求められます。系統図が完成した時、それは単なる目標リストではなく、「この手段を実行すれば、必ずこの目的が達成され、最終目標へと繋がる」という、戦略の全体像と論理的な筋道を可視化したものとなります。さらに、このツリー構造を活用することで、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の最適な配分を検討することも容易になります。最も上位の目標達成に最も貢献度の高い手段(クリティカルパス)を見つけ出し、そこに重点的に資源を投下するという意思決定の根拠となり得るのです。系統図法による思考展開は、「思考の抜け・漏れ・重複」を防ぎ、複雑な問題に対する「全体最適」の解を導き出すための、極めて実用的で論理的なアプローチと言えるでしょう。

 


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