事業に寄与する技術・技能伝承の進め方 知的資産承継を考える (その3)

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1.技術・技能伝承ポイントの見極め

 技術・技能伝承を進める場合、全社レベルの技術や技能の底上げか、或いは固有ノウハウの継承かをまず明確にする必要があります。全社レベルの底上げであれば標準化可能な作業を識別し、固有ノウハウの継承であれば固有ノウハウが詰まった作業を特定する必要があります。いずれにしても技術・技能伝承を進める場合、まずコアの技術や熟練ノウハウが詰まった作業、また標準化や効率化が可能な作業を見極めることが必要となります。例えば、「動画マニュアル」などを作成する場合でも、録画時間は最大でも10分以内に抑えないと実用に適しません。従って、どの部分を撮影するかを見極めることが重要なのです。
 
 その技術・技能伝承の重要ポイントを、短時間で効率良く見つけ、伝承を可能とする手法として我々は「作業分解」手法を考案し実践しています。この作業分解は、ポストイット(付箋紙)を用いて対象作業をこまかく分解することで、要素作業を具現化し、改善が必要な作業や熟練ノウハウなどを明確にすることが可能となります。
 

2.作業分解による技術・技能伝承 

 作業分解は、IE(Industrial Engineering)でいう工程分析の簡略版であり「暗黙知状態な作業の技術・技能洗い出し」や「効率化に向けた改善箇所の見極め」、「作業マニュアル作成」などを目的として下記図表1の手順で行います。  
 技術・技能伝承                
 
【 作業分解の大まかな手順 】
①最初に、当該作業の大まかな作業工程を決めます。
②赤のポストイットに、その作業工程を書き、模造紙に順番に貼っていきます。
③次に工程毎に「作業内容」、「前提事項」、「注意点」など1件毎に1枚のポストイットに書き出して模造紙に貼っていきます。
④更に、特に重要と思われる要素作業、例えば熟練作業や危険な作業などを特定してマークします。
⑤前後関係などから、工程や要素作業の内容に関し修正・削除・加筆などを行います。
 
 この作業分解では当該作業に関与する関係者を集め、ワークショツプ形式で行いますが、通常2〜3時間程度で簡単に終了することができます。またこのワークショツプでは、若手に必要な知識を効率的に伝達できる一方、作業分解結果そのものが作業マニュアルとしてすぐに活用することが可能となります。
 

3.付加価値向上に向けた活用 

 作業分解で、特に重要なのが「重要と思われる要素作業の特定」です。例えば、動画マニュアルを作成する場合は「残しておきたい熟練作業」を特定することが必要ですし、作業改善などを行う場合は「作業者や作業場所・移動距離など」を明確化していくことで、改善ポイントを具体化することができます。いずれにしても、個々の要素作業...

1.技術・技能伝承ポイントの見極め

 技術・技能伝承を進める場合、全社レベルの技術や技能の底上げか、或いは固有ノウハウの継承かをまず明確にする必要があります。全社レベルの底上げであれば標準化可能な作業を識別し、固有ノウハウの継承であれば固有ノウハウが詰まった作業を特定する必要があります。いずれにしても技術・技能伝承を進める場合、まずコアの技術や熟練ノウハウが詰まった作業、また標準化や効率化が可能な作業を見極めることが必要となります。例えば、「動画マニュアル」などを作成する場合でも、録画時間は最大でも10分以内に抑えないと実用に適しません。従って、どの部分を撮影するかを見極めることが重要なのです。
 
 その技術・技能伝承の重要ポイントを、短時間で効率良く見つけ、伝承を可能とする手法として我々は「作業分解」手法を考案し実践しています。この作業分解は、ポストイット(付箋紙)を用いて対象作業をこまかく分解することで、要素作業を具現化し、改善が必要な作業や熟練ノウハウなどを明確にすることが可能となります。
 

2.作業分解による技術・技能伝承 

 作業分解は、IE(Industrial Engineering)でいう工程分析の簡略版であり「暗黙知状態な作業の技術・技能洗い出し」や「効率化に向けた改善箇所の見極め」、「作業マニュアル作成」などを目的として下記図表1の手順で行います。  
 技術・技能伝承                
 
【 作業分解の大まかな手順 】
①最初に、当該作業の大まかな作業工程を決めます。
②赤のポストイットに、その作業工程を書き、模造紙に順番に貼っていきます。
③次に工程毎に「作業内容」、「前提事項」、「注意点」など1件毎に1枚のポストイットに書き出して模造紙に貼っていきます。
④更に、特に重要と思われる要素作業、例えば熟練作業や危険な作業などを特定してマークします。
⑤前後関係などから、工程や要素作業の内容に関し修正・削除・加筆などを行います。
 
 この作業分解では当該作業に関与する関係者を集め、ワークショツプ形式で行いますが、通常2〜3時間程度で簡単に終了することができます。またこのワークショツプでは、若手に必要な知識を効率的に伝達できる一方、作業分解結果そのものが作業マニュアルとしてすぐに活用することが可能となります。
 

3.付加価値向上に向けた活用 

 作業分解で、特に重要なのが「重要と思われる要素作業の特定」です。例えば、動画マニュアルを作成する場合は「残しておきたい熟練作業」を特定することが必要ですし、作業改善などを行う場合は「作業者や作業場所・移動距離など」を明確化していくことで、改善ポイントを具体化することができます。いずれにしても、個々の要素作業に対し「人間が判断し作業している箇所、つまり選択肢の数」を明確化することで、付加価値向上に向けた効率化や標準化に向けた取り組みが可能になります。
 
 但しこの作業分解は、人間が行う全ての作業の形式知化を目的としているものではありません。少子高齢化社会での限られた経営資源で事業を存続するために、ICTや自動化などを活用するための作業、また付加価値を更に高めるための重要作業を識別するためのツールとして活用するものなのです。この作業分解を、様々な改善活動に活用して頂ければ幸いです。

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この記事の著者

野中 帝二

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応した解決策をサポート致します。

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