プラスチック材料の特性を考慮した強度設計(その1)

 プラスチック材料の特性を考慮した強度設計について、2回に分けて解説します。
 

1.プラスチック材料で精度の高い強度設計を行うには

 プラスチック製品の設計経験がある設計者なら分かると思いますが、その強度設計は非常に難しいものです。原理的には製品に発生する応力をプラスチック材料の強度より小さくすればよいので、それほど難しくないように思えるかもしれません。しかし、プラスチック材料には金属とは異なった特性があり、強度面においてマイナスに作用するものが多くあります。それらの特性を知らなければ、たとえ高価なCAEソフトを使ったとしても、精度の高い強度設計を行うことはできません。精度の高い強度設計は、品質を向上させ、材料使用量の削減による原価低減に直結するため、どのような製品、企業においても強く求められています。本稿では、プラスチック製品の強度設計において、プラスチック材料の特性を理解することの重要性について説明したいと思います。
 

2.強度設計について

 壊れないプラスチック製品を作るためには、以下の式を満足するように設計します。
 

製品に発生する最大応力 < プラスチック材料の強度

 プラスチック製品に限らず、どのような材料を使った製品においても、上記の式を満足するように設計されているのが普通です。考え方としては簡単ですが、実際の製品においては、図1のように発生する最大応力も材料の強度も大きなバラツキが発生するため、それらを考慮した強度設計が必要になります。特にプラスチック材料は、このバラツキが大きいことと、その正確な把握が難しいことが強度設計を難しくしています。 
 
             
材料
   
図1.最大応力と材料強度のバラツキ
 

3.製品に発生する応力

 精度の高い強度設計を行うためには、製品に発生する応力を正確に見積ることが必要です。プラスチック製品の強度設計において、どのようなポイントに注意して発生応力の見積りをすればよいかについて説明します。
 
(1)製品の使われ方の見極め
 
 製品がどのように使われると想定し、どのような使われ方まで性能を確保するかにより、製品に発生する最大応力の想定は異なります。図2のように安全性に関しては「予見可能な誤使用」まで、安全性以外に関しては「意図される使用」まで性能を確保することが一般的です。しかし、それぞれの使われ方の境界は曖昧であるため、どこまで性能を確保すればよいかの線引きは非常に難しいものです。プラスチック材料の物性は使用環境への依存性が高いため、どのような使われ方まで配慮するのかを慎重に判断する必要があります。
 
   
材料
 図2.製品の使われ方と性能確保の範囲
 
(2)どの寸法で強度設計を行うか
 
 製品の種類、成形法、部位などにもよりますが、プラスチック製品の寸法は量産時においても数%のバラツキを生じます。強度計算を寸法許容差の下限値で実施するのか、中央値で実施するのかで計算結果にも当然差が生じます。また、試作品の評価試験においても、どの寸法の試作品を用いて評価するかによって結果に差が出ます。寸法精度の低い押出成形などの場合は、特に注意する必要があります。
 
(3)残留応力
 
 プラスチック製品は金型設計、成形、製品設計、加工・組立の諸条件により、製品内部に容易に残留応力が発生します。残留応力の存在により、想定以下の荷重で破損することもあります。残留応力が発生しにくい製品になるように設計配慮すること、試作品での十分な評価試験を行うことが必要です。なお、残留応力は測定や検査が容易ではなく、破損以外にも反りや変形、ソルベントクラックなどで量産後に問題になることも多い厄介者です。
 
(4)熱応力
 
 プラスチック材料の特徴の一つとして、金属材料と比較して線膨張係数が大きいことが挙げられます。表1は代表的な材料の線膨張係数です。
 
表1 各種材料の線膨張係数 
                
材料
 
 環境温度の変化によりプラスチック材料が伸縮し、製品内部に熱応力が発生します。線膨張係数の違う異種材料を組み合わせた製品では、その影響が非常に大きくなるので、特に注意が必要です。また、熱応力が繰り返し作用する場合には、その疲労破壊も問題になります。
 
(5)弾性率の温度依存性
 
 プラスチック製品に荷重が掛かった際に、どのように変形するかによって、製品に発生する応力は変わってきます。すなわち、プラスチック材料の弾性率の違いにより、発生応力に違いが生じます。プラスチック材料の弾性率は図3のように、温度によって大きく変化します。
 
   
材料
 図3.東レ株式会社 ABS「トヨラック」 曲げ弾性率の温度依存性
出所:東レ株式会社HP http://www.toray.jp/plastics/toyolac/technical/tec_002.html
 

この記事の著者

田口 宏之

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