成果主義を成功させる評価基準設定と運用のポイント

投稿日

1.納得感を得られない成果主義、その理由は

 inf01227何らかの形で成果主義を採用する企業が増えていますが、社員から納得感を得られず、士気を低下させている例がよく見られます。本来、透明性のある評価手法であるはずの成果主義でそうなっている理由に、設定した目標の妥当性、評価サイクルと活動期間のずれがあるようです。
 

2.適切にストレッチした目標を設定すること

 目標設定の考え方ですが、現状より適切にストレッチした目標を定めることが肝要です。目標が高すぎると、実現の見通しが得られず、社員の士気を低下させます。やる気が失われれば、個人として成果がでないばかりでなく、会社の業績にも悪影響があります。逆に、目標が低すぎてもやる気を失わせますし、そもそもそのような目標を達成しても、結果的には会社の業績が低下してしまいます。社員の士気を高めて会社全体の業績を向上させるには、高い目標だが決して不可能ではない、適切にストレッチした目標を設定することです。
 

 3.成果目標と併せてプロセス目標を設定すること

 成果主義の弊害として、短期の結果だけで評価することに起因する問題がよく指摘されています。まず、短期の成果ばかりを追い求めると、時間をかけて取り組むべき事項が評価されず、なおざりになりがちです。結果として中長期的な業績が低下してしまうという、皮肉な事態に陥る傾向が見られます。
 
 次に、結果だけを追うと、成果まであと一歩及ばなかったことが評価されません。たとえば、潜在顧客を発掘して契約直前まで行ったが、相手にとってより緊急な事項によって予算が確保できなかった、というような案件がまったく評価されないことになります。
 
 このような問題が生じる原因は、評価サイクルと活動期間にずれがあることです。評価サイクルは所定の期間にせざるを得ないため、成果に至るまでのプロセス(過程)を定義して、そのプロセスの達成状況を評価するようにします。これをプロセス評価といい、プロセスに対して設定した目標をプロセス目標と言います。
 
 成果目標と併せてプロセス目標を設定することで、短期の結果だけで評価することの弊害を排し、納得性の高い評価基準を設定することができます。プロセス目標を設定することにより、期中に成果目標を達成できないことが判明した場合でも、そこで放置するということが減ります。プロセスが評価されるため、成果に近づくことで評価が高まるからです。なお、プロセス評価として仕事への取り組み姿勢や態度を評価する例もあります。これは間接的ではありますが、成果主義の弊害に対するひとつの対策と考えられます。ただし、本来的にはプロセス評価というより行動評価と呼ぶべきです。
 

4.異なる社員に対して共通のプロセス目標を設定し、評価すること

 成果に至るまでのプロセ...

1.納得感を得られない成果主義、その理由は

 inf01227何らかの形で成果主義を採用する企業が増えていますが、社員から納得感を得られず、士気を低下させている例がよく見られます。本来、透明性のある評価手法であるはずの成果主義でそうなっている理由に、設定した目標の妥当性、評価サイクルと活動期間のずれがあるようです。
 

2.適切にストレッチした目標を設定すること

 目標設定の考え方ですが、現状より適切にストレッチした目標を定めることが肝要です。目標が高すぎると、実現の見通しが得られず、社員の士気を低下させます。やる気が失われれば、個人として成果がでないばかりでなく、会社の業績にも悪影響があります。逆に、目標が低すぎてもやる気を失わせますし、そもそもそのような目標を達成しても、結果的には会社の業績が低下してしまいます。社員の士気を高めて会社全体の業績を向上させるには、高い目標だが決して不可能ではない、適切にストレッチした目標を設定することです。
 

 3.成果目標と併せてプロセス目標を設定すること

 成果主義の弊害として、短期の結果だけで評価することに起因する問題がよく指摘されています。まず、短期の成果ばかりを追い求めると、時間をかけて取り組むべき事項が評価されず、なおざりになりがちです。結果として中長期的な業績が低下してしまうという、皮肉な事態に陥る傾向が見られます。
 
 次に、結果だけを追うと、成果まであと一歩及ばなかったことが評価されません。たとえば、潜在顧客を発掘して契約直前まで行ったが、相手にとってより緊急な事項によって予算が確保できなかった、というような案件がまったく評価されないことになります。
 
 このような問題が生じる原因は、評価サイクルと活動期間にずれがあることです。評価サイクルは所定の期間にせざるを得ないため、成果に至るまでのプロセス(過程)を定義して、そのプロセスの達成状況を評価するようにします。これをプロセス評価といい、プロセスに対して設定した目標をプロセス目標と言います。
 
 成果目標と併せてプロセス目標を設定することで、短期の結果だけで評価することの弊害を排し、納得性の高い評価基準を設定することができます。プロセス目標を設定することにより、期中に成果目標を達成できないことが判明した場合でも、そこで放置するということが減ります。プロセスが評価されるため、成果に近づくことで評価が高まるからです。なお、プロセス評価として仕事への取り組み姿勢や態度を評価する例もあります。これは間接的ではありますが、成果主義の弊害に対するひとつの対策と考えられます。ただし、本来的にはプロセス評価というより行動評価と呼ぶべきです。
 

4.異なる社員に対して共通のプロセス目標を設定し、評価すること

 成果に至るまでのプロセスを評価することが肝要だと述べましたが、まったく新しい業務でない限り、目標を設定する時点で新たなプロセスを「発明」することはお勧めできません。それは、まだ成果が実証されていないことを評価基準としてしまうことを意味します。細部は違っていたとしても、同じ職種であれば同様のプロセスで業務を行うことができますし、ベストプラクティス(よいやり方)をプロセスとして標準化して実践すべきです。
 
 プロセスの標準化により、異なる社員でも同じやり方で繰り返し成果が得られるようになります。さらに、プロセスが標準化されることで、異なる社員に対して共通のプロセス目標を設定し、また評価することが可能になります。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

中津山 恒

経営をよくする!問題解決プロフェッショナル 〜 論理的思考とIT活用で目標を達成 〜

経営をよくする!問題解決プロフェッショナル 〜 論理的思考とIT活用で目標を達成 〜


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術士第二次試験対策:業務内容詳細で書く事とは(その3)

  前々回は「具体的な文を書く」、前回は「能動態の文を書く」でした。今回は「短い文を書く」です。 【特集】技術士第二次試験対策:技術士第...

  前々回は「具体的な文を書く」、前回は「能動態の文を書く」でした。今回は「短い文を書く」です。 【特集】技術士第二次試験対策:技術士第...


トップが毎日、自ら現場に出向く 人材育成・組織・マネジメント(その12)

  【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】 1. 間接部門のプロセス改善とは 2. 現場は全てを物語る 3. 明日の仕...

  【人材育成・組織・マネジメントの考察 連載目次】 1. 間接部門のプロセス改善とは 2. 現場は全てを物語る 3. 明日の仕...


技術企業の高収益化: 本当に大切なことに時間を費やせているか

◆ 高収益経営者の時間配分術はどんなものか  「会社の経営が、なんだかしっくり来ないんですよ」。これは、とある社長(以下、A社長)の言葉です。「会社...

◆ 高収益経営者の時間配分術はどんなものか  「会社の経営が、なんだかしっくり来ないんですよ」。これは、とある社長(以下、A社長)の言葉です。「会社...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:モチベーションを支える自律性とは(その1)

 技術の世界に生きる私たちは、日々、技術力に磨きをかけ、生産性や品質を常に改善し、厳しい納期とコスト要求に答えて、商品開発に取り組んでいます。そして、組織...

 技術の世界に生きる私たちは、日々、技術力に磨きをかけ、生産性や品質を常に改善し、厳しい納期とコスト要求に答えて、商品開発に取り組んでいます。そして、組織...


多面的に現場を見る

 クリーン化という仕事は、強い思い入れと感性が必要なちょっと特異な仕事です。このことはクリーン化担当であれば、少なからず意識していると思います。でも仕事と...

 クリーン化という仕事は、強い思い入れと感性が必要なちょっと特異な仕事です。このことはクリーン化担当であれば、少なからず意識していると思います。でも仕事と...


『坂の上の雲』に学ぶ先人の知恵(その20)

   『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場...

   『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場...