
材料工学や金属学の分野において、合金の性質を決定づける金属組織を理解するには、状態図(相平衡図)が不可欠です。状態図は、原子が十分に拡散し平衡に達した理想的な条件下で、温度と組成に対する相の関係を示しています。しかし、実際の工業的な製造プロセス、特に溶融した金属を固める凝固過程は、必ずしも平衡条件で進行するわけではありません。多くの場合、原子が組成を均一化する時間がない非平衡の条件、すなわち比較的早い冷却速度の下で行われます。この速度の違いが、製品の品質や性能に決定的な影響を与える「偏析」という現象を引き起こします。今回は、平衡状態を前提とする状態図の示す理想的な凝固プロセスと、現実の非平衡凝固の過程で生じる原子の局所的な組成の不均一、すなわち偏析に焦点を当て、それが合金組織や状態図自体にどのような影響を及ぼすのかを考察します。
◆ 状態図から見る偏析
合金を液相から冷却すると状態図に従って凝固し、金属組織を形成します...






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