工程管理とは、目的とそのメリット

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大量・高速の継続生産の製造業の必須条件として、安定している工程で生産することは必然のことです。ここで注意が必要なのは、一度安定な工程に到達したとしても工程の管理要素、要件は絶えず変化し、また予測外、突発的な条件変動が発生することです。そこで安定している工程の状態・手順を維持して、更に改善するには工程の工程計画・日程計画など継続的管理がプロジェクトとして必須なことです。

そのポイントとしては管理図の活用が推奨されています。一般にも使われているシューハート管理図のほかにも変化の検出のため、合否判定のためなど、用途に応じた管理図が開発・実施され使われています。一方、現場で実際に見かけるのは、目的が不明の管理図、目的に合っているのか意識されていない管理図、惰性でつけているとしか思えない管理図などです。これでは費用をかけて収集したデータの価値を活かすことにはならないのです。

有効な工程管理をおこなうためには、標準時間と統計的工程管理の基本的な考え方。管理図の意図、特徴を理解した上で、管理図の選定に入ることです。また、安定している工程であることを工程表で確認した上で、工程が規格を満足する能力─工程能力の評価に入ることになります。そこではじめて、論理的な継続的改善に進むことができるのです。

管理図は何のためにつけるのか、目的を明確にして管理図を選んで工程を安定させる、それが、工程管理の目的とメリットです。

このような背景を踏まえて、今回は、工程管理の概要を解説します。

 

1.  工程管理とは

工程管理システムと似たようなものに生産管理システムがありますが、工程管理システムとの違いは何でしょうか。

工程管理は、納期内で生産完了できるか、進捗に遅れはないか製造に重点を置いての管理です。一方、生産管理は、材料の仕入れ・製品の出荷・売上管理などの製品の流れ全般について、進捗状況として時間軸の長い管理です。つまり、生産管理は製品の製造だけでなく、製品の企画や品質管理などの管理方法も含まれるため管理する範囲が広く、工程管理は製造工程管理の位置づけで生産管理の一部分と言えるでしょう。

一定の生産性を保つためには適切な工程管理を行う必要があります。しかし工程管理とは何をすればいいのか、漠然としたイメージはあるが生産統制の具体的な方法がわからないという方も多いのではないでしょうか。

生産工程を適切に管理することで目的を達成する管理活動のことを工程管理といいます。製品を適切な数量や品質で納期に間に合うように納品することで、設備や労働力を効率的に活用できるようにすることが可能となります。製品を製造する際には適切な順番を意識することが重要です。工程管理を導入することで、高効率な順番を定め、進捗管理が可能となります。

 

2.  工程管理の目的

(1)コスト削減

この管理は、作業における無駄な部分を把握することが可能となります。改善すべき部分がわかればそれに合わせて人員配置や機械の見直しを行い、効率化することができるのでコストの削減につながります。

 

(2)品質維持

この管理を導入することで、従業員・設備を適正な工程で動かすことができ、改善すべき部分が発見でき、作業工程の無駄をなくすことができます。品質を保った生産が行えるようになります。

工程管理システムを導入すれば、各工程における詳細な情報を作業員に共有することが可能になり、作業員間での経験や技術の差を埋めることができます。

 

(3)在庫管理が適切に

この管理を行うことで、生産における資材・材料の必要数把握ができるようになります。生産する量が適切に調整できれば在庫の調整も簡単になります。

 

(4)モチベーションアップ

この管理を用いることで、それまで目の前の作業をこなすだけだった従業員が、生産における作業ごとのつながりや全体像を把握できるようになるので、より生産性を上げる方法やコストを抑える方法を自主的に考えられる環境が構築されます。これにより生産性があがり、業績があがれば賃金アップにもつながるので結果としてモチベーション向上にもなります。

 

3.  工程管理の方法

工程管理表を作成して工程管理を行う際に使用されているツールには以下のようなものがあります。

 

【手書き】

紙やホワイトボードを利用したアナログなやり方。コストはかからないが、記入漏れなどの人為的なミスや情報を共有しにくいというデメリットがあります。

 

【エクセル】

エクセルの関数やマクロ、無料のテンプ...

 

大量・高速の継続生産の製造業の必須条件として、安定している工程で生産することは必然のことです。ここで注意が必要なのは、一度安定な工程に到達したとしても工程の管理要素、要件は絶えず変化し、また予測外、突発的な条件変動が発生することです。そこで安定している工程の状態・手順を維持して、更に改善するには工程の工程計画・日程計画など継続的管理がプロジェクトとして必須なことです。

そのポイントとしては管理図の活用が推奨されています。一般にも使われているシューハート管理図のほかにも変化の検出のため、合否判定のためなど、用途に応じた管理図が開発・実施され使われています。一方、現場で実際に見かけるのは、目的が不明の管理図、目的に合っているのか意識されていない管理図、惰性でつけているとしか思えない管理図などです。これでは費用をかけて収集したデータの価値を活かすことにはならないのです。

有効な工程管理をおこなうためには、標準時間と統計的工程管理の基本的な考え方。管理図の意図、特徴を理解した上で、管理図の選定に入ることです。また、安定している工程であることを工程表で確認した上で、工程が規格を満足する能力─工程能力の評価に入ることになります。そこではじめて、論理的な継続的改善に進むことができるのです。

管理図は何のためにつけるのか、目的を明確にして管理図を選んで工程を安定させる、それが、工程管理の目的とメリットです。

このような背景を踏まえて、今回は、工程管理の概要を解説します。

 

1.  工程管理とは

工程管理システムと似たようなものに生産管理システムがありますが、工程管理システムとの違いは何でしょうか。

工程管理は、納期内で生産完了できるか、進捗に遅れはないか製造に重点を置いての管理です。一方、生産管理は、材料の仕入れ・製品の出荷・売上管理などの製品の流れ全般について、進捗状況として時間軸の長い管理です。つまり、生産管理は製品の製造だけでなく、製品の企画や品質管理などの管理方法も含まれるため管理する範囲が広く、工程管理は製造工程管理の位置づけで生産管理の一部分と言えるでしょう。

一定の生産性を保つためには適切な工程管理を行う必要があります。しかし工程管理とは何をすればいいのか、漠然としたイメージはあるが生産統制の具体的な方法がわからないという方も多いのではないでしょうか。

生産工程を適切に管理することで目的を達成する管理活動のことを工程管理といいます。製品を適切な数量や品質で納期に間に合うように納品することで、設備や労働力を効率的に活用できるようにすることが可能となります。製品を製造する際には適切な順番を意識することが重要です。工程管理を導入することで、高効率な順番を定め、進捗管理が可能となります。

 

2.  工程管理の目的

(1)コスト削減

この管理は、作業における無駄な部分を把握することが可能となります。改善すべき部分がわかればそれに合わせて人員配置や機械の見直しを行い、効率化することができるのでコストの削減につながります。

 

(2)品質維持

この管理を導入することで、従業員・設備を適正な工程で動かすことができ、改善すべき部分が発見でき、作業工程の無駄をなくすことができます。品質を保った生産が行えるようになります。

工程管理システムを導入すれば、各工程における詳細な情報を作業員に共有することが可能になり、作業員間での経験や技術の差を埋めることができます。

 

(3)在庫管理が適切に

この管理を行うことで、生産における資材・材料の必要数把握ができるようになります。生産する量が適切に調整できれば在庫の調整も簡単になります。

 

(4)モチベーションアップ

この管理を用いることで、それまで目の前の作業をこなすだけだった従業員が、生産における作業ごとのつながりや全体像を把握できるようになるので、より生産性を上げる方法やコストを抑える方法を自主的に考えられる環境が構築されます。これにより生産性があがり、業績があがれば賃金アップにもつながるので結果としてモチベーション向上にもなります。

 

3.  工程管理の方法

工程管理表を作成して工程管理を行う際に使用されているツールには以下のようなものがあります。

 

【手書き】

紙やホワイトボードを利用したアナログなやり方。コストはかからないが、記入漏れなどの人為的なミスや情報を共有しにくいというデメリットがあります。

 

【エクセル】

エクセルの関数やマクロ、無料のテンプレートなどを使うやり方。コストはかからないが、互換性がない、共有しにくい、入力ミスといったデメリットがあります。

 

【クラウドシステム】

クラウド型の工程管理システムを使うやり方で、情報の共有や見える化が行えるため、リアルタイムで進捗管理ができるなど多くのメリットがあります。導入費用・ランニングコストがかかり、システムを上手く使いこなせないなどのデメリットがあります。

 

4.  工程管理の今後

モノづくり企業を取り巻く経営環境に大きな変化がでている一方で、派遣社員や若手社員による品質不良やクレームにより、企業の経営危機・破たんの事例も発生しています。モノづくり企業が生き残るには、生産管理力の強化によって顧客の信頼を獲得することが必要になっています。すなわち、生産計画と工程管理力の強化を行い、生産管理・工程管理の仕組みを再構築し現場改革を実践する必要があります。

 

 

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この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。


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