顧客視点で製品ライフサイクルを考える、あらゆる機会に目を向け顧客価値の向上を!

1.顧客ライフサイクルの全体

 顧客は自社で必要な資材や設備を購入するに当たり、様々なニーズや関連する課題を持っています。それは、購入のずっと以前から始まり、それらの寿命が尽き廃棄するまで続きます。場合によっては原子力発電所の核廃棄物のように、廃棄後も続く場合すらあります。

 この過程すべてにわたり顧客は何かしらの活動や検討を行い、またそこには顧客のコストが発生しています。このような活動の開始から廃棄までのプロセスがライフサイクルであり、その全体を考えて購買の決定をする必要があります。顧客にとってその製品が重要で消費する費用が大きければ、この傾向は益々強くなります。

 このように顧客のライフサイクル全体は、自社が供給する製品と密接に関係し、自社の製品やサービスをデザインする場合に考慮すべき様々なポイントが含まれています。そのため、企業としては、このライフサイクル全体に目を向けて顧客・市場を理解しなければなりません。

2.顧客ライフサイクルの後半:購入の決定から廃棄まで

 7873億円の連結赤字の後の経営陣刷新によって、日立は別の会社に生まれ変わったように見えます。例えば、英国で鉄道車両を大量に受注したのみならず、車両の長期保守(27年)というサービスも積極的に提供しています。車両受注の金額は高額に上り、それだけでも魅力的ですが、顧客の立場から言うと、車両購入後の運行にはそれ以上の経費が必要です。日立として、顧客の車両購入後も引き続き関連する保守サービスを引き受けたことで、収益機会が拡大します。またハードとサービスの両者を手掛けることで、保守コストを含めた運行コスト全体を低減する車両と車両コストを低減する保守サービス、つまり両者の最適化が自社の手の内で実現することができるのです。

 当然この成果物は顧客の全体コストを低減し、サービスを向上する形で顧客に還元され、日立と顧客の両者がWIN-WINの関係を得ることができます。

 また建機メーカーの例があります。建設機械は購入時価格が高額であるだけでなく、その後の運用・維持コストや下取りの価格も、建設業者の費用負担に大きく影響します。従って、建機メーカー側で、できるだけ維持・運用コストを下げると同時に、下取り価格を高く維持する方法を提供することは、顧客にとって大変ありがたいことです。近年建機メーカーは、コマツのKOMTRAXを初め稼働状況をモニターする機器を建機内部に設置し、そこから得られる運転情報によって稼動時間に応じた部品交換を提案したり、燃費効率を上げる運転法を指導したりしています。これにより、顧客は運転・維持費用を下げ、また同時に自社の建機を良い状態に保持することで、下取り価格を高く維持することができるのです。

 以上の日立の鉄道車両やコマツの建機の例では、もともと顧客の負担コストが高いために、当然のごとくこの考え方が導入されていますが、消費財を含めて維持費用が少ない製品についても、今後は企業に求められてくるでしょう。

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3.顧客ライフサイクルの前半:購入の決定前

 研究開発の立場から言うと、顧客が購入を決定するまでは、営業やマーケティング部門の責任であり、研究開発とは関係がないと考えてしまいます。顧客に自社の製品を理解させ購入の意志決定まで至らせるには、製品の属性以外に研究開発が貢献できる部分はないと考えているからです。

 しかし、顧客の製品購入以前の自社製品をマーケティングする活動にも、研究開発が果たすべき役割は存在し、今後その重要性は益々拡大すると思われます。顧客は製品の属性だけを見て購入を決定する訳ではありません。なぜなら、顧客はその前に多くの作業を行ない、そこに経費を掛けて、また様々な問題を持っているという事実があるからです。そこでも企業の頭脳である研究開発は、顧客に貢献しなければなりません。

 例えば、自社が金属部品メーカーであるとしましょう。顧客は自社に発注する前に部品を設計し部品図を作成する必要があります。そこには顧客の設計者がそれなりの工数を掛けているはずです。そこで、顧客の設計工数を削減する方法や、顧客が作成した図面から直ぐに見積書が作成できるソフトウェア開発のニーズがあるでしょう。顧客が自社製品購入前の作業を低減し、かつその作業と自社製品をうまく組み合わせて、自社製品受注の可能性を高めるという工夫は非常に有効と考えられます。もちろん、既にCADは専門製品を使用していて、いまさら自社からの提供はムリという意見もあるでしょう。しかし、このような視点で常に考えてみることが重要です。このような点で研究開発部門の活用は戦略的な効果も大きく、十分研究開発部門のテーマとするに値します。

 以上のように研究開発部門は、顧客価値の向上を実現するあらゆる機会に目を向け、研究開発活動を行うことが求められています。


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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