少子高齢社会での組織的な伝承の進め方(その2) 進まない伝承

 

事業継承

 ベテランから若手への伝承は、ときに企業の存続にも影響を与えます。少子高齢社会において高齢者と若手、中堅社員はどのように伝承に対応すべきなのでしょうか。企業を活性化し伝承を進めるための組織的な取り組み方について、連載で解説しています。

2. なぜ伝承は進まないのか

 では、伝承がうまく行われないのはなぜでしょうか、その理由を整理してみます。

 前回のその1、(1)に続いて、解説します。

(2)投資対効果が分かりづらい

 投資対効果が実感しにくいことも伝承が進まない原因の一つです。一般的な伝承は、OJTなどで経験や知識を継承する人材育成や、ナレッジマネジメントに代表される知識・経験の蓄積から行われることが多いのです。しかし、このような人材育成やノウハウ蓄積という観点で伝承を行った場合、時間がかかる上に伝承の効果が分かりづらく、目先の利益や事業を優先することになりやすいでしょう。結果として、伝承を中長期的に捉えることとなり、伝承が先送りされる原因にもなっています。

 また、投資対効果が分かりづらいため伝承サイクルが分断され、経験や知識の伝承やレベルアップができない状態となっています。伝承は、① 伝承業務の特定(絞り込み)→ ② 勘やコツなど熟練作業の抽出と整理 → ③ 伝承作業のスキル評価 → ④ 個人別伝承計画作成 → ⑤ OJT/SJTによる伝承 → ⑥ 創意工夫と共有、というサイクルを回し続けることが重要なのですが、どこかでサイクルが分断すると、それ以上の活動が不可能になります。伝承を効果的に進めるためには、企業の経営者が意識して、このサイクルを回し続けるように指導すべきですが、目先の事業を優先するあまり伝承活動がおろそかになっているのです。

 伝承は取り組み方により数年かかるケースもあり、伝承の遅れは事業機会の喪失にもつながります。自ら事業の寿命を縮めていっているといっても過言ではありません。

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(3) 付加価値を生む経験や知識を識別できない

 さらに、付加価値を生む伝承すべき経験や知識を特定すべきなのですが、その絞り込み方法が知られていないことも、伝承が進まない要因の一つとなっています。一般的には、組織全体で経験や知識のマップ化や体系化を行い、組織や個人別の育成計画を中期・長期観点で作成し、OJTなどで具体的な伝承活動を行っていくことが多いようです。しかしこの方法では、マップや体系化を整理するだけで非常に長い実施期間と人・物・金の投資が必要となり、伝承推進の弊害となっています。そのため伝承をスムーズに進めるには、組織全体で進めるだけではなく、各職場で個別に進められるような仕組みが求められます。

 本来の伝承の進め方は、経験や知識の伝承優先度を事業への影響度(売上や利益)や人材の保有ノウハウの状況などから評価し、伝承を行う対象を明確にします。そして、その伝承対象から熟練作業の特定と暗黙知の可視化を行うことが必要です。誌面の関係で詳細は省略しますが、暗黙知の可視化には、動画や作業マニュアルなどを基に、熟練者と若手が一緒に作業分解を行うワークショツプ形式が有効です。作業プロセスごとに要素作業(能力)を抽出した上で熟練作業を特定し、作業改善や暗黙知の可視化など伝承を進めていく手法です。作業分解自体は2時間もあれば実施可能なので、是非取り組んでください。

 次回に続きます。


この記事の著者

野中 帝二

労働人口が減少する中、生産性を維持・向上しつつ、収益性を向上するための支援を行います。特に自律的な改善活動の醸成や少子高齢化での経営など労働環境変化に対応した解決策をサポート致します。

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