トップ交代を企業文化変革に活かした事業承継の事例

1.創業経営者による新社長の選任

 電気通信系サービス企業のG社は、従業員80名、系列の協力会社3社をもつ中堅企業です。創業者A氏の先見力で大手企業の技術サービス分野に特化した業務委託を主に事業を展開、順調に業績を伸ばしてきました。後継者育成にも配慮し、5年前に取引先企業から将来の経営幹部人材としてB氏を採用し、創業30年の節目に社長に選任して、自らは会長に就任しました。メイン事業の執行はすべて社長に任せ、会長の役割としては、財務・経理、人事、新規事業開発などに専念することにしました。事業責任を明確に分けることで、現場の混乱を避けるという会長の配慮でした。これに従い、社内は新社長のもとスムーズな引継ぎと運営が行われました。 ところが、会長は何か今までとは違う、物足りなさを感じていました。

 

2.会長の戸惑いと寂しさ

 会社の本業の仕事はすべて新社長が仕切っています。日常的な報告や相談は、社長だけで済んでしまいます。会長の分担する新規事業開発は、会長が前からやりたかったことですが、社内に適切な人材が見当たらないので、当面は会長がひとりで動いており、社員との会話は必要とされません。財務・経理、人事についても社長経由ですむことになり、会長のところに相談にくる社員がめっきり少なくなりました。会長としては「今までは何ごとにつけ、相談に来たのに・・」との寂しさや物足りなさを感じてきました。会社をここまで成長させてきた立役者は自分だという自負もあります。創業者会長として、これからも社業発展の大きな一翼を担っていくつもりです。新しい役割分担に戸惑いを感じ始めた会長の「異変」に気づいた社長は、何か名案はないものかと我々に相談に来られました。

 

3.会長の得意技を活かす

 社長に業務執行を任せたので、会長としては時間に余裕ができました。社長時代には、やりたくてもできなかったことがあるはずです。また現在は、業務執行について、社員に直接の指示をしたり命令する機会はありません。従来とは社員に対する立場が変わっています。その立場を活かすことはできませんか、という我々の提案に、そう言えば会長が現役時代に社員に向かってよく言っていたことがあると社長が語り始めました。「 ・・社員に自分のキャリアパスは自分で考えること、我が社でずっと働くつもりなら、自分を磨くために役立つことを自分で提案してほしいこと。例えば、女性なら子育てで数年のブランクがある。復帰後、会社でできることを自分で今から計画し準備するために、会社は惜しまず応援するつもりと訴えてきて3年になる。当初はキャリアパスの相談にくる社員はほんのわずかだった。最近少しずつ増えてきたけどね・・」、と。 ここまで語ってきて社長は、会長の得意技を思い出しました。人の隠れた才能を見つけて、その気にさせるのがうまいのです。組織のリーダーとしてうってつけの得意技ではありませんか。社長と我々の結論が一致しました。会長の役割として、社員の「キャリア・カウンセラー」を追加してもらうのです。社員の相談を聞くことが仕事です。自分のキャリアパスを考えている社員はまだ少ないということですから、社員との対話の機会も増えることでしょう。会長の物足りなさも解消し、新規事業開発に向いた人材を発掘できるかもしれません。

 

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4.企業文化を変えるチャンス

 経営トップの交代は、企業の文化を変える絶好のチャンスです。トップの得意技と組織のニーズがぴったりマッチする組合せを見つけましょう。 創業者をはじめとする経営陣は、自分たちのもつ「資源」を素直に観察することで組織の変革を加速させることができます。

 


この記事の著者

津曲 公二

技術者やスタッフが活き活きと輝きながら活動できる環境作りに貢献します。

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