応募の際のコツ 補助金活用で海外進出 (その2)

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 前回、補助金の活用で海外進出の足掛かりをつかむ! その1、制度の種類と概要を解説しました。本稿では、特に「中小企業の海外展開」を目的とする公的支援制度について紹介しています。今回は、補助金制度へ応募する際の心構えとコツについて、前回同様にQ&A形式で説明しましょう。

①補助金申請の流れは?

  「これだ!」という制度が見つかれば、いよいよ申請に取り掛かります。一般的には、以下の流れで申請に取り組むことになります。 概ね、募集開始から書類提出まで「1カ月」、書類提出から採択可否がわかるまで「1カ月」をみておくとよいでしょう。

1)ウェブサイト等で、申請書類ひな形、募集要項を入手し、内容を理解する。

2)事前説明会が開催される場合は、申し込んで出席し、制度概要を確実に理解する。

3)申請後のアクションプランをつくる。 (申請書類作成担当者や、必要書類の準備、採択後の活動組織など)

4)申請書類を作成し、提出する。

5)面接が行われる場合は、事前に想定問答を作成し、面接に臨む。

6)採択!

 必要書類として、企業パンフレット、財務諸表、会社登記簿、納税証明書などの提出が求められることがありますので、募集要項でご確認ください。

②申請のために必要な心構えは?

 申請は、異なる製品や技術を有する様々な企業が行うことになりますが、申請書類を拝見していて目につくのは、「読む人の立場に立っていない」記載です。 ここで、申請書類を読んで評価する側にいる審査員のことをイメージしてみましょう。審査員は、いわゆる公務員で、大学教授などの専門家も参加します。彼らは、「御社の業界のこと、企業のこと、製品・技術を全く知らない人たち」です。彼らが、「この企業なら大丈夫!」という評価を、応募書類のみで判断することになるのです。

 このように考えると、申請書類の書き方が見えてくるのではないでしょうか?すなわち、

  1. 制度と自社の目的が一致していること
  2. わかりやすい内容で書かれていること

ということになります。補助金を使って自社はどのような体制で、どのような活動を行い、どのような成果を出すことができるのかを明快に記載することが必要です。

 申請を検討する際、「補助金が無くなった後も継続するのか」どうかを考えてみてください。補助金を受け取ったら企業活動もフェードアウト、という一時的な企業活動では、税金の使い道として失格です。その意味で、冒頭に述べたように、「お金がもらえるから始める」のではなく、自社の戦略の中に制度を乗せることが必要となるのです。

 そして、企業としてアピールすべき項目や伝えたいことを平易な内容で、判り易く伝えることが必要となります。文章でだらだら書く、業界の人しか理解できないような専門用語を多用する、といった書類では、相手が読む気を無くしてしまいます。

 
 読む気がなくなる申請書の例  目に留まる申請書の例
文章ばかり 図表や...

 前回、補助金の活用で海外進出の足掛かりをつかむ! その1、制度の種類と概要を解説しました。本稿では、特に「中小企業の海外展開」を目的とする公的支援制度について紹介しています。今回は、補助金制度へ応募する際の心構えとコツについて、前回同様にQ&A形式で説明しましょう。

①補助金申請の流れは?

  「これだ!」という制度が見つかれば、いよいよ申請に取り掛かります。一般的には、以下の流れで申請に取り組むことになります。 概ね、募集開始から書類提出まで「1カ月」、書類提出から採択可否がわかるまで「1カ月」をみておくとよいでしょう。

1)ウェブサイト等で、申請書類ひな形、募集要項を入手し、内容を理解する。

2)事前説明会が開催される場合は、申し込んで出席し、制度概要を確実に理解する。

3)申請後のアクションプランをつくる。 (申請書類作成担当者や、必要書類の準備、採択後の活動組織など)

4)申請書類を作成し、提出する。

5)面接が行われる場合は、事前に想定問答を作成し、面接に臨む。

6)採択!

 必要書類として、企業パンフレット、財務諸表、会社登記簿、納税証明書などの提出が求められることがありますので、募集要項でご確認ください。

②申請のために必要な心構えは?

 申請は、異なる製品や技術を有する様々な企業が行うことになりますが、申請書類を拝見していて目につくのは、「読む人の立場に立っていない」記載です。 ここで、申請書類を読んで評価する側にいる審査員のことをイメージしてみましょう。審査員は、いわゆる公務員で、大学教授などの専門家も参加します。彼らは、「御社の業界のこと、企業のこと、製品・技術を全く知らない人たち」です。彼らが、「この企業なら大丈夫!」という評価を、応募書類のみで判断することになるのです。

 このように考えると、申請書類の書き方が見えてくるのではないでしょうか?すなわち、

  1. 制度と自社の目的が一致していること
  2. わかりやすい内容で書かれていること

ということになります。補助金を使って自社はどのような体制で、どのような活動を行い、どのような成果を出すことができるのかを明快に記載することが必要です。

 申請を検討する際、「補助金が無くなった後も継続するのか」どうかを考えてみてください。補助金を受け取ったら企業活動もフェードアウト、という一時的な企業活動では、税金の使い道として失格です。その意味で、冒頭に述べたように、「お金がもらえるから始める」のではなく、自社の戦略の中に制度を乗せることが必要となるのです。

 そして、企業としてアピールすべき項目や伝えたいことを平易な内容で、判り易く伝えることが必要となります。文章でだらだら書く、業界の人しか理解できないような専門用語を多用する、といった書類では、相手が読む気を無くしてしまいます。

 
 読む気がなくなる申請書の例  目に留まる申請書の例
文章ばかり 図表や写真がもりこまれている
何が言いたいのかわからない 体制、活動内容、成果等が明快
実現性に乏しい 実現できそう 継続できそう
誤字脱字が多い しっかりした日本語である
専門用語が目立つ 素人でも理解できる

 それでは、実際にどのように申請書を書き進めればよいのでしょうか?

 次稿では、本稿での内容を踏まえて、具体的な書類の作成方法について触れます。平成26年度以降実施される制度への申請にそのままご活用頂ける内容になりますので、ご期待ください。 更新は2014年1月を予定しておりますが、急を要する場合は事前にお知らせすることも可能ですので、お問い合わせください。

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この記事の著者

江崎 秀之

中小製造業の海外展開を、セミナーや企業支援実績の豊富な中小企業診断士が親身にサポート。海外展開のための公的助成制度への応募をお手伝いします。現地で想定される様々なリスクについてもお答えします。

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