レッスンズ・ラーンドの分析 学んだ教訓をまとめる(その2)

更新日

投稿日

 
 いくつかのサブ・プロジェクトから構成される大きなブログラムが終了しました。そこでいつものようにレッスンズ・ラーンド(Lessons-Learned: 学んだ教訓)をまとめることになり、そしていつものように僕がその取りまとめを行いました。レッスンズ・ラーンドは広く行われているため、インターネットを使えば多くの情報を簡単に入手することができます。そこでここではレッスンズ・ラーンド自体について解説することはせずに、むしろレッスンズ・ラーンドをどのように進め(プロセス)、どのように教訓や知識を抽出し(分析)、どのように今後のプロジェクトに活かすのか、ということを中心に解説します。前回のその1に続いて解説します。
 

3. レッスンズ・ラーンドの分析

 
 前の定型化フェーズで、一つ一つレッスンズ・ラーンドを読み、問題内容の理解が進んでくると、そのプロジェクトが抱えていた問題の全体像がぼんやりと見えてきます。個々の問題の内容やその根本原因の数や種類も分かってきます。そしてそれらの問題をもたらした根本原因が発散しているのか、それともいくつかの根本原因に収束するものなのかが、感覚として掴めるようになります。
 

(1) 根本原因が発散していると感じられる場合の分析

 
 この場合、様々な根本原因が複雑に絡み合って色々な問題を引き起こしていたと考えられるので、その対策も多岐に渡ることが予想されます。時間やリソース、コストなどの制約から、多岐に渡る対策をいっぺんに施すことはできないので、分析フェーズでは優先順位付けを目的にします。
 
 問題の重要度、根本原因が発生する頻度、現プロセスによる問題の検出力、などの評価項目を使って優先順位付けを行うためにはFMEAが最適です。そのため根本原因が発散していると感じられる場合は、FMEAを使って最もリスクの高い問題や根本原因を探っていきます。
 
  品質工学
 

(2) いくつかの根本原因に収束していると感じられる場合の分析

 
 この場合、数少ない制約がプロジェクトに様々な影響を与えていたのではないかと考えられます。そのためTOC(Theory of Constraints: 制約条件の理論)で用いられる手法を使って、制約条件を視覚的に表現しなから分析を進めます。主に使うツールは、次のようなものです。
 
  • 現状マップ(現状構造ツリー)
  • 対立解消図(蒸発する雲)
  • 将来マップ(未来構造ツリー)
  • 戦略と戦術
 
 品質工学
 
 

4. レッスンズ・ラーンドの活用

 
 分析フェーズのアウトプットは優先順位の付けられた...
 
 いくつかのサブ・プロジェクトから構成される大きなブログラムが終了しました。そこでいつものようにレッスンズ・ラーンド(Lessons-Learned: 学んだ教訓)をまとめることになり、そしていつものように僕がその取りまとめを行いました。レッスンズ・ラーンドは広く行われているため、インターネットを使えば多くの情報を簡単に入手することができます。そこでここではレッスンズ・ラーンド自体について解説することはせずに、むしろレッスンズ・ラーンドをどのように進め(プロセス)、どのように教訓や知識を抽出し(分析)、どのように今後のプロジェクトに活かすのか、ということを中心に解説します。前回のその1に続いて解説します。
 

3. レッスンズ・ラーンドの分析

 
 前の定型化フェーズで、一つ一つレッスンズ・ラーンドを読み、問題内容の理解が進んでくると、そのプロジェクトが抱えていた問題の全体像がぼんやりと見えてきます。個々の問題の内容やその根本原因の数や種類も分かってきます。そしてそれらの問題をもたらした根本原因が発散しているのか、それともいくつかの根本原因に収束するものなのかが、感覚として掴めるようになります。
 

(1) 根本原因が発散していると感じられる場合の分析

 
 この場合、様々な根本原因が複雑に絡み合って色々な問題を引き起こしていたと考えられるので、その対策も多岐に渡ることが予想されます。時間やリソース、コストなどの制約から、多岐に渡る対策をいっぺんに施すことはできないので、分析フェーズでは優先順位付けを目的にします。
 
 問題の重要度、根本原因が発生する頻度、現プロセスによる問題の検出力、などの評価項目を使って優先順位付けを行うためにはFMEAが最適です。そのため根本原因が発散していると感じられる場合は、FMEAを使って最もリスクの高い問題や根本原因を探っていきます。
 
  品質工学
 

(2) いくつかの根本原因に収束していると感じられる場合の分析

 
 この場合、数少ない制約がプロジェクトに様々な影響を与えていたのではないかと考えられます。そのためTOC(Theory of Constraints: 制約条件の理論)で用いられる手法を使って、制約条件を視覚的に表現しなから分析を進めます。主に使うツールは、次のようなものです。
 
  • 現状マップ(現状構造ツリー)
  • 対立解消図(蒸発する雲)
  • 将来マップ(未来構造ツリー)
  • 戦略と戦術
 
 品質工学
 
 

4. レッスンズ・ラーンドの活用

 
 分析フェーズのアウトプットは優先順位の付けられた改善項目(将来の予防措置)です。活用フェーズでは、新しいプロジェクトで同じ様な過ちが再び起こらないように、予防措置を実施していきます。また同じ様な過ちが他のチームでも起こらないように、分析結果を他のチームとも共有します。集めたレッスンズ・ラーンドの中には、新しく得られた知識も多く含まれます。そのような知識を使って知識ベースの更新も行います。 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

津吉 政広

リーンやシックスシグマ、DFSSなど、問題解決のためのフレームワークを使った新製品の開発や品質の向上、プロセスの改善を得意としています。「ものづくり」に関する問題を一緒に解決してみませんか?

リーンやシックスシグマ、DFSSなど、問題解決のためのフレームワークを使った新製品の開発や品質の向上、プロセスの改善を得意としています。「ものづくり」に関...


「シックスシグマ」の他のキーワード解説記事

もっと見る
DFSS(Design for Six Sigma)のリスキリング 【厳選記事紹介】

  リーンシックスシグマは聞いたことがあっても、DFSS(Design for Six Sigma)はあまり耳慣れない言葉かもしれません。...

  リーンシックスシグマは聞いたことがあっても、DFSS(Design for Six Sigma)はあまり耳慣れない言葉かもしれません。...


DFSSとは何か 【連載記事紹介】

  DFSSとは何かの連載が無料でお読みいただけます。   リーンシックスシグマは聞いたことがあっても、DFSS(Desig...

  DFSSとは何かの連載が無料でお読みいただけます。   リーンシックスシグマは聞いたことがあっても、DFSS(Desig...


シックスシグマの統計的な側面

【目次】 1. シックスシグマの統計的定義  シックスシグマは、「平均値と近接する規格限界値の間に標準偏差が6つ収まること」と定義...

【目次】 1. シックスシグマの統計的定義  シックスシグマは、「平均値と近接する規格限界値の間に標準偏差が6つ収まること」と定義...


「シックスシグマ」の活用事例

もっと見る
DPMOとは何か

 DPMOとはDefects Per Million Opportunityのイニシャルを取ったものです。DPMOを百万個当りの欠陥数(製品百万個当りの不...

 DPMOとはDefects Per Million Opportunityのイニシャルを取ったものです。DPMOを百万個当りの欠陥数(製品百万個当りの不...


TRIZ を使用した DfSS事例 (その2)

   前回のその1に続いて解説します。   5. D/O(Design and Optimize/設計と最適化)フェーズ &n...

   前回のその1に続いて解説します。   5. D/O(Design and Optimize/設計と最適化)フェーズ &n...


問題の具現化が解決への近道

 『シックスシグマ』の問題解決サイクルDMAICは、一番最初に問題を定義するDefineフェイズから始めます。改善対象を出来るだけ具現化し、目的を明確にす...

 『シックスシグマ』の問題解決サイクルDMAICは、一番最初に問題を定義するDefineフェイズから始めます。改善対象を出来るだけ具現化し、目的を明確にす...