成熟市場における競争戦略:ランチェスター戦略(その1)

 

1. 成熟市場における競争戦略とは

 ランチェスター戦略は故田岡信夫氏が立案・体系化した成熟市場における競争戦略です。1970年代前半、オイルショックが起こり高度経済成長期から一転して不況となります。市場が縮小する局面で企業はどうやって勝ち残りを目指すべきか。コンサルタントの田岡氏は、科学的な経営戦略が求められると考え、ランチェスター戦略を提唱しました。
 
 ランチェスター戦略は、トヨタ自動車や松下電器(現パナソニック)など多くの大企業や、ソフトバンクやHISなど当時のベンチャー企業に数多く採用されました。ソフトバンクの孫社長は若い時に病気療養していた際、膨大な数の本を読みましたが、一番参考になったのは孫子の兵法とランチェスター戦略であると公言しています。
 
 わかりやすい理論と数多くの実績から、ランチェスター戦略は「競争戦略のバイブル」「小が大に勝つ法則」と言われ、業種・業態・企業規模に関係なく、顧客をめぐって競合と争う企業において、幅広く採用されています。
 

2. ランチェスター法則について

 ランチェスター戦略は日本人の田岡氏が策定した競争戦略ですが、ランチェスターという名前がついているのは、イギリス人の航空工学研究者のF.W.ランチェスターが第一次世界大戦の時期に提唱した「ランチェスター法則」がもとになっているためです。図1のようにランチェスター法則は戦い方によって、二つの法則があります。 
 
ランチェスター戦略
 図1. ランチェスター法則
 
 「武器効率」とは敵と味方の武器の性能や兵士の腕前を比率化した数値で、「兵力数」は兵士や戦車や戦闘機の数です。「武器効率」と「兵力数」を掛け合わせたものが軍隊の戦闘力となります。
 
 戦い方によって、二つの法則があるランチェスター法則では、戦い方によって適用が分かれます。
 

(1) ランチェスター第一法則

 日本の戦国時代のように、一対一で刀や槍といった原始的な武器で、狭い範囲で敵と近づいて戦う場合に適用されるのが第一法則です。第一法則は「戦闘力=武器効率×兵力数」で表され、同じ兵力数であれば武器効率が高いほうが勝ち、同じ武器効率なら兵力数が多いほうが勝つというシンプルな法則です。敵に勝つには、敵を上回る武器効率か兵力数を手にすればよいというものです。
 

(2) ランチェスター第二法則

 確率兵器を用いた近代的な戦闘で適用される法則がランチェスターの第二法則です。集団対集団で、同時に複数の敵を攻撃できる確率兵器や火力兵器を使って、広い範囲で敵と離れて戦う場合に適用されます。第二法則は「戦闘力=武器効率 × 兵力数の2乗」で表され、第一法則との違いは、武器効率は変わりませんが、兵力数が2乗となる点です。機関銃のような確率兵器は相乗効果を発揮するために、兵力数が2乗に作用します。よって、兵力数が多いほうが圧倒的に有利となり、兵力が少ない軍は第二法則が適用する戦いでは勝つことは極めて困難となります。
 
 それでは、劣勢軍が優勢軍に勝つにはどのように戦えばいいでしょうか。第二法則が適用される戦闘では勝ち目がありません。しかし、第一法則の適用下であれば、武器効率を兵力比以上に高めれば勝つことができます。あるいは、局地戦に持ち込み、そこに兵力を集中させれば、その局地においては兵力数で敵を上回ることができます。いわゆる局所優勢です。つまり、小(劣勢軍)が大(優勢軍)に勝つには、次のような戦い方が必要となります。
 
  •  第一法則が適用する一騎討ち戦、局地戦、接近戦のゲリラ戦で挑む。
  •  兵力比以上に、武器効率を高める。
  •  兵力を局地に集中し、局所優勢で戦う。

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3. ランチェスター戦略

 戦闘の理論であるランチェスター法則をビジネスに応用したものがランチェスター戦略です。
 
 戦闘力を「営業力」に置き換えると、第一法則は「営業力=武器効率×兵力数」、第二法則は「営業力=武器効率×兵力数の2乗」となります。ビジネスにおいては、大きなくくりで例えれば「武器」は商品力、「兵力」は販売力となります。第一法則と第二の法則を、どのようにビジネスに応用できるのか、次回に続きます。
 

この記事の著者

米澤 裕一

弱者の戦略で名高いランチェスター戦略の専門家としての知見、および法人営業30年の実務経験に基づいて、企業の課題に即した具体的な営業強化の支援を行います。

専門分野は以下の3つです。 一つ目は、補助金を活用した設備投資支援です。ものづくり補助金を得意としており、製造業に特化して支援しています。通算採択率は90%です。その他、経営力向上計画や経営革新計画などの法認定支援を行っています。 二…

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