商標はどこまで拡がるのか(トレードドレス)

更新日

投稿日

 特許庁では「トレードドレス」というものを商標登録の対象とするかどうかを検討しているようです。いわゆる「新しいタイプの商標」を議論した際に、「トレードドレス」も検討の対象となっていましたが、新しいタイプの商標を審議した場では「「トレードドレス」は、国際的にその定義が確立していないのが実態であり、保護される対象も一義的に定まっているとはいい難い。海外主要国において「トレードドレス」として登録されている例をみると、(a)商品の立体形状、(b)商品の包装容器、(c)建築物の形状(店舗の外観(内装))、(d)建築物の特定の位置に付される色彩等が含まれているが、これらは立体商標等によって保護され得るとも考えられる。」(平成25年9月 産業構造審議会 知的財産分科会報告書)として検討対象から外されていました。
 
 「トレードドレス」というのは、商品や営業(サービス)の識別に寄与している文字や図形などの「伝統的な商標」以外のものを包括する言葉であって、「トレードドレス」を商標として保護すべきかどうか、というのは意味のない問題設定に思われます。
 
 特許庁が意識しているのは、おそらく「コメダ」の事案だと思います。店舗のデザインが不競法で「商品等表示」と認められて保護された最初の事例です。
 
 商品や営業の識別に寄与している「表示」を「商標」として保護しよう、という意思には反論しません。しかし、「登録」して保護する必要があるものなのか、という点に疑義があります。登録の弊害がないのでしょうか。
 
 商標法では「トレードドレス」の出願については出所表示性(3条2項)の証拠が求められます。証拠に基づく判断時期は査定時です。査定時に出所表示性を備えていれば登録され、権利は、更新により半永久的に存続します。これでいいのでしょうか。立体商標や位置商標も同様です。
 
 文字の商標においても、過去に登録された商標が普通名称化されていたり、普通の品質説明語句になっていたりします。
 
 立体商標の登録が開始されたとき、登録された立体形状が「普通の形状」であると言うことが難しい、どうしたらよいか、という議論がされていました。「文字(言葉)であれば、使用例を検索できるが「立体形状」だと難しく、「普通に使用されている」(26条)という抗弁が難しい、ということです。
  知的財産マネジメント
 
 話変わってデザインのことです。一昨年、工業製品である「幼児用の椅子」について著作権を認める判決がありました。この判決は一般化しないだろう、とは思いますが、広く影響しているようです。
 
 知財は、保護も大切で...
 特許庁では「トレードドレス」というものを商標登録の対象とするかどうかを検討しているようです。いわゆる「新しいタイプの商標」を議論した際に、「トレードドレス」も検討の対象となっていましたが、新しいタイプの商標を審議した場では「「トレードドレス」は、国際的にその定義が確立していないのが実態であり、保護される対象も一義的に定まっているとはいい難い。海外主要国において「トレードドレス」として登録されている例をみると、(a)商品の立体形状、(b)商品の包装容器、(c)建築物の形状(店舗の外観(内装))、(d)建築物の特定の位置に付される色彩等が含まれているが、これらは立体商標等によって保護され得るとも考えられる。」(平成25年9月 産業構造審議会 知的財産分科会報告書)として検討対象から外されていました。
 
 「トレードドレス」というのは、商品や営業(サービス)の識別に寄与している文字や図形などの「伝統的な商標」以外のものを包括する言葉であって、「トレードドレス」を商標として保護すべきかどうか、というのは意味のない問題設定に思われます。
 
 特許庁が意識しているのは、おそらく「コメダ」の事案だと思います。店舗のデザインが不競法で「商品等表示」と認められて保護された最初の事例です。
 
 商品や営業の識別に寄与している「表示」を「商標」として保護しよう、という意思には反論しません。しかし、「登録」して保護する必要があるものなのか、という点に疑義があります。登録の弊害がないのでしょうか。
 
 商標法では「トレードドレス」の出願については出所表示性(3条2項)の証拠が求められます。証拠に基づく判断時期は査定時です。査定時に出所表示性を備えていれば登録され、権利は、更新により半永久的に存続します。これでいいのでしょうか。立体商標や位置商標も同様です。
 
 文字の商標においても、過去に登録された商標が普通名称化されていたり、普通の品質説明語句になっていたりします。
 
 立体商標の登録が開始されたとき、登録された立体形状が「普通の形状」であると言うことが難しい、どうしたらよいか、という議論がされていました。「文字(言葉)であれば、使用例を検索できるが「立体形状」だと難しく、「普通に使用されている」(26条)という抗弁が難しい、ということです。
  知的財産マネジメント
 
 話変わってデザインのことです。一昨年、工業製品である「幼児用の椅子」について著作権を認める判決がありました。この判決は一般化しないだろう、とは思いますが、広く影響しているようです。
 
 知財は、保護も大切ですが、それが「自由な発想」にもとづく「造形」を阻害してはなりません。「マネ」だと思われればネットで盛り上がります。ネットでの「マネ」の範囲は法律で想定する範囲を超えています。オリンピックエンブレムの著作権騒動もそう思います。
 
 識別機能を果たしているあらゆるモノを「商標」として登録し、保護することが産業の活性化につながるのか。特許庁の施策は「持てるものの保護」に傾いているように思います。
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

峯 唯夫

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。

「知的財産の町医者」として、あらゆるジャンルの相談に応じ、必要により特定分野の専門家を紹介します。


「知的財産マネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
デザインによる知的資産経営:「知的資産」を活用する経営(その1)

1.「デザイン」と「知的資産」  「デザインによる知的資産経営」連載の目的は、主として中小企業がイノベーションを継続できる経営体質をつくり出すための...

1.「デザイン」と「知的資産」  「デザインによる知的資産経営」連載の目的は、主として中小企業がイノベーションを継続できる経営体質をつくり出すための...


共同開発契約 知財経営の実践(その17)

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...

       1. 知財の持つ価値    知財経営の実践については、その重要性が参考文献のよう...


デザインによる知的資産経営:「知的資産」の保護(その1)

 今回は、特許権等の「産業財産権」としては保護されない「知的資産」をどのように守ったらいいのかについて、不正競争防止法による保護を中心として、連載で具体的...

 今回は、特許権等の「産業財産権」としては保護されない「知的資産」をどのように守ったらいいのかについて、不正競争防止法による保護を中心として、連載で具体的...


「知的財産マネジメント」の活用事例

もっと見る
自社コア技術の他用途への展開 -㈱氷温の事例-

1.はじめに  今回は、自社のコア技術の他の用途への展開についてお話いたします。  市場環境の変化に応じて多種多様な製品やサービスを開発してゆく必要性...

1.はじめに  今回は、自社のコア技術の他の用途への展開についてお話いたします。  市場環境の変化に応じて多種多様な製品やサービスを開発してゆく必要性...


デザインによる知的資産経営:「ブランドづくり」(その3)

 前回のその2に続いて解説します。   2.ブランドづくり (1)商品の名前  「無印良品」を運営する株式会社良品計画(1990年に西友か...

 前回のその2に続いて解説します。   2.ブランドづくり (1)商品の名前  「無印良品」を運営する株式会社良品計画(1990年に西友か...


中小企業の特許技術導入について ―森田テックの事例―

1.はじめに  経済のグローバル化など外部環境が大きな変革期を迎える中で、中小企業も、下請け型を脱して、自社固有製品の開発を行うことが必要となりつつあり...

1.はじめに  経済のグローバル化など外部環境が大きな変革期を迎える中で、中小企業も、下請け型を脱して、自社固有製品の開発を行うことが必要となりつつあり...