サプライヤーと共同で取り組む物流改善

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 SCM

1. サプライチェーンの淀み

 物流改善を進めいくとある壁にぶつかることがあります。その壁とは組織の壁です。自分の部署だけで行っているのであればそれほど問題にならないことが、他部署が絡んでくるとそれがネックになって改善が進みづらくなることがあります。たとえば、物流を良くしても他部署にデメリットが出るときなどは抵抗を受けることになります。もちろん、物流のことだけしか考えない身勝手な改善(改善かどうかは疑問ですが)は論外です。しかし、ある程度の工数をかければ明らかに会社にとってよいことであれば協力することが筋ではないでしょうか。
 
 サプライチェーンを淀みのない清々とした流れにするためには、サプライチェーンの各工程の担当者がお互い協力し合って改善を進めなければなりません。一般的に在庫を少なくして流れを速くする改善は前向きに取り組むべきものだと思います。その典型がジャストインタイムでモノを動かしていくことでしょう。工場では生産ラインは、大体ジャストインタイムの思想に沿った形で日々のオペレーションが行われているものと思います。
 
 工場の中にモノが入って来て、それを生産ラインに届け、モノづくりを行う。この工場内部でのモノの流れは多くの会社で清々とした流れを作ることができています。しかし、課題となっているのが部品や資材などを工場に引き込むところです。ここがジャストインタイムとなっていない場合が問題なのです。どのような状況になっているのでしょうか。多くのケースで、工場の入口に多くの部品や資材が滞留してしまっています。サプライチェーンの工程の一つである工場の入口で淀みができてしまっているのです。私たちにはこれを解消していくことが求められます。この淀みの解消には物流部門だけでできることではないかもしれません。関連部署や部品サプライヤーにも協力してもらう必要があるでしょう。ではそれをどのようにして実現していったらよいのでしょうか。この点について次に考えてみたいと思います。
 

2. 調達改善上の問題

 会社としてのサプライチェーンの考え方が社内で統一されていれば、その考え方に従って進めて行けばよいだけのことです。しかし、必ずしもこういったサプライチェーンマネジメントを行っていく、といった共通認識が社内で徹底している会社ばかりとは限りません。その場合、関連部署との軋轢が発生する可能性があるのです。工場の入口の滞留を解消するためにはサプライヤーからの一回ごとの調達量について規制する必要があり、この規制の仕方次第では大きな課題が生じます。たとえば、現時点で週に3回納入してもらっている部品を毎日納入するとしたらどうなるでしょうか。単純に物量が変わらないにもかかわらず、納入回数のみ増やせばそこにかかる物流コストは原則として上昇します。
 
 サプライヤーとの契約の窓口は工場ではなく、一般的に購買部門ということになると思います。そして単純な納入回数の増加を、購買部門は望まないと思われます。なぜなら、購買部門のタスクは購入原価の低減であり、納入回数の増加は原価増となり購買の目的と逆行するからです。つまり工場がジャストインタイム調達を行なおうと思っても、購買部門は簡単にはYesとは言い難く、この状態が続くと改善が進みません。サプライヤーを指導し、近隣の会社同士で共同輸送を行ってもらうように仕向けることも一つの方法でしょう。
 
 これはまさに購買部門の仕事だと思います。単純な価格低減だけが購買のタスクだと思っていたとしたら大きな間違いです。これが難しければ、工場側が荷主になってサプライヤーに部品を引き取りに行くことが必要になるでしょう。これは少々骨の折れる仕事ではありますが、サプライチェーンの清流化には大変効果のあるアイテムだと思います。当然購買部門がやらなければならない仕事も増えますから、そこでの業務の壁がまた生じることもあるでしょう。会社全体の利益のためならば動かざるを得ないこともあるはずです。
 

3. サプライヤー指導

 私たちのタスクはサプライチェーン全体を効率化することにあります。決して物流だけを改善すればそれでよいということではありません。ですから、ジャストインタイム調達を実施するにしても、全体の在庫のバランスと工場の生産性と物流について最適な解を求めていくことが理想です。そして、ここで外せないのがサプライヤーの存在です。サプライヤーの協力抜きにサプライチェーンの効率化はできません。ですからサプライヤーと共同で取り組む改善となるわけです。一方でサプライヤーの立場で考えるとそこまで改善できる人材が乏しいということが現実問題として存在するのです。
 
 物流の改善ができる人は限られていますが、その状況はサプライヤーでも同様です。それを補っていくのが皆さんだと考えて下さい。サプライヤーに対して「ああしろ」「...
 SCM

1. サプライチェーンの淀み

 物流改善を進めいくとある壁にぶつかることがあります。その壁とは組織の壁です。自分の部署だけで行っているのであればそれほど問題にならないことが、他部署が絡んでくるとそれがネックになって改善が進みづらくなることがあります。たとえば、物流を良くしても他部署にデメリットが出るときなどは抵抗を受けることになります。もちろん、物流のことだけしか考えない身勝手な改善(改善かどうかは疑問ですが)は論外です。しかし、ある程度の工数をかければ明らかに会社にとってよいことであれば協力することが筋ではないでしょうか。
 
 サプライチェーンを淀みのない清々とした流れにするためには、サプライチェーンの各工程の担当者がお互い協力し合って改善を進めなければなりません。一般的に在庫を少なくして流れを速くする改善は前向きに取り組むべきものだと思います。その典型がジャストインタイムでモノを動かしていくことでしょう。工場では生産ラインは、大体ジャストインタイムの思想に沿った形で日々のオペレーションが行われているものと思います。
 
 工場の中にモノが入って来て、それを生産ラインに届け、モノづくりを行う。この工場内部でのモノの流れは多くの会社で清々とした流れを作ることができています。しかし、課題となっているのが部品や資材などを工場に引き込むところです。ここがジャストインタイムとなっていない場合が問題なのです。どのような状況になっているのでしょうか。多くのケースで、工場の入口に多くの部品や資材が滞留してしまっています。サプライチェーンの工程の一つである工場の入口で淀みができてしまっているのです。私たちにはこれを解消していくことが求められます。この淀みの解消には物流部門だけでできることではないかもしれません。関連部署や部品サプライヤーにも協力してもらう必要があるでしょう。ではそれをどのようにして実現していったらよいのでしょうか。この点について次に考えてみたいと思います。
 

2. 調達改善上の問題

 会社としてのサプライチェーンの考え方が社内で統一されていれば、その考え方に従って進めて行けばよいだけのことです。しかし、必ずしもこういったサプライチェーンマネジメントを行っていく、といった共通認識が社内で徹底している会社ばかりとは限りません。その場合、関連部署との軋轢が発生する可能性があるのです。工場の入口の滞留を解消するためにはサプライヤーからの一回ごとの調達量について規制する必要があり、この規制の仕方次第では大きな課題が生じます。たとえば、現時点で週に3回納入してもらっている部品を毎日納入するとしたらどうなるでしょうか。単純に物量が変わらないにもかかわらず、納入回数のみ増やせばそこにかかる物流コストは原則として上昇します。
 
 サプライヤーとの契約の窓口は工場ではなく、一般的に購買部門ということになると思います。そして単純な納入回数の増加を、購買部門は望まないと思われます。なぜなら、購買部門のタスクは購入原価の低減であり、納入回数の増加は原価増となり購買の目的と逆行するからです。つまり工場がジャストインタイム調達を行なおうと思っても、購買部門は簡単にはYesとは言い難く、この状態が続くと改善が進みません。サプライヤーを指導し、近隣の会社同士で共同輸送を行ってもらうように仕向けることも一つの方法でしょう。
 
 これはまさに購買部門の仕事だと思います。単純な価格低減だけが購買のタスクだと思っていたとしたら大きな間違いです。これが難しければ、工場側が荷主になってサプライヤーに部品を引き取りに行くことが必要になるでしょう。これは少々骨の折れる仕事ではありますが、サプライチェーンの清流化には大変効果のあるアイテムだと思います。当然購買部門がやらなければならない仕事も増えますから、そこでの業務の壁がまた生じることもあるでしょう。会社全体の利益のためならば動かざるを得ないこともあるはずです。
 

3. サプライヤー指導

 私たちのタスクはサプライチェーン全体を効率化することにあります。決して物流だけを改善すればそれでよいということではありません。ですから、ジャストインタイム調達を実施するにしても、全体の在庫のバランスと工場の生産性と物流について最適な解を求めていくことが理想です。そして、ここで外せないのがサプライヤーの存在です。サプライヤーの協力抜きにサプライチェーンの効率化はできません。ですからサプライヤーと共同で取り組む改善となるわけです。一方でサプライヤーの立場で考えるとそこまで改善できる人材が乏しいということが現実問題として存在するのです。
 
 物流の改善ができる人は限られていますが、その状況はサプライヤーでも同様です。それを補っていくのが皆さんだと考えて下さい。サプライヤーに対して「ああしろ」「こうしろ」と口先だけでいう人が多いようですが、それでは改善は進みません。なぜならサプライヤーとしても「無い袖は振れない」からです。人材がいなければ、ノウハウがなければやりたくてもできないのです。
 
 この状況を察知してフォローできるのがプロの仕事人ではないでしょうか。自分たちのサプライチェーンを効率化したいのであれば、サプライヤーにこのように変わって欲しい、そのやり方はこうである、と適切に話のできる人が望ましいでしょう。できればモノづくりのやり方についてもある程度の知識があり、それをセットで指導してあげたいものです。
 
 在庫とか物流は何かしらの結果としてあらわれるものです。サプライチェーン上の淀みはその「何かしら」を顕在化させ、たたいていくことが改善につながるのです。たとえばモノのつくり方やモノの買い方における問題点です。そのために前後工程で同じ情報を使って同じ数量をつくって運ぶ。これがサプライチェーン清流化の基本でしょう。ぜひ前工程であるサプライヤーと共同で改善ができるようにさまざまな手を打っていきましょう。その時のキーワードは皆さんの「サプライヤー指導」であることを忘れないようにしましょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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