新たな発想で仕事を広げる・仕事を変えるとは

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 SCM

1. 物流5機能にとらわれるな

 長年仕事を進めているとその仕事のやり方に慣れてしまいます。それが当たり前になります。これはどんな仕事でも同じことではないでしょうか。そうはいっても仕事に慣れてくるとそのスタイルを変えることには勇気がいります。その仕事の担当者は仕事のやり方を変えることには否定的になります。慣れたやり方を変えることは非常にエネルギーのいることでもありますから無理もありません。しかし、もし現状を前提で考えていくと仕事の発展性が欠けてしまいます。
 
 物流というと輸送、保管、荷役、包装、流通加工といった5機能の話が出てきます。最近はこれに加えて情報機能がよく話題になります。このように物流には5機能+1の機能があるという前提で話が進みます。この機能論議を始めると、物流の仕事の範囲が制限される恐れがあるのです。物流と切っても切れない機能として在庫管理機能があります。在庫はものの購入の結果として、生産の結果として、受注予測の結果として、販売の結果として出現します。つまりありとあらゆる活動の結果としてあらわれるのが在庫なのですが、物流はその在庫を「現物」として目の当りにすることができる立場にあります。
 
 しかし多くの物流担当者が在庫は「荷主の責任だから」とか「調達部署の仕事だから」とか「営業部署の仕事だから」といって関わることを避けがちです。これは自分たちの仕事の領域を制限しているからこそ出てくる言葉ではないでしょうか。たしかに自分たちのコアとなる業務は何かといえば「ものを動かす」業務だということは間違いありません。ただし今やそういった業務を「点」でとらえるのではなく、サプライチェーンといった視点で「線」や「面」でとらえてその範囲で何ができるのかを考えていかなければならないのではないでしょうか。新聞報道でも「ものづくり」に入り込んだり、荷主会社に「アドバイス」したりする物流会社が出てきていることが伝えられました。業務の領域を広げ、ビジネスチャンスを拡大していくには当然の考え方なのです。
 

2. ピッキング作業のやり方は

 皆さんは「ピッキング作業」というとどのような作業をイメージしますでしょうか。作業者がリストを持って棚の周りを歩きながらものを取っていく作業を思い浮かべるのではないでしょうか。最近アマゾンが棚自体が作業者の所へ移動してくるというスタイルを検討しています。作業者は来た棚から必要なものを取り出すのです。この事例にもある通り、ピッキング作業の検討の際には「人が動く」のか「ものが動く」のかについて考えるべきなのです。たまたま現在は「人が動き回る」ことが一般的となっています。ただしこの発想は「固定観念」にすぎません。ピッキングラインを設けて作業者を固定している会社もあるのです。固定観念にとらわれずに新しい仕事をデザインするときには他業界の人の意見を聞いた方がいいかもしれません。
 
 一番よくないのは「ピッキングとはこういうものだ」といったように「昔ながらのやり方」を主張することです。その人にとってはよくても、それはすでに時代遅れのやり方かもしれないのです。新たな発想を生み出すには訓練が必要かもしれません。たまには社内で何かお題を決めて「発想の訓練」をやってみてはいかがでしょうか。ピッキング作業に対する指示も一つのパターンとは限りません。得意先のオーダー単位にピッキングするというやり方はオーソドックスかもしれません。
 
 しかしこれだと広いエリアを歩き回ってオーダーの品物を集めなければならないことになります。それよりも、製品単位でまずピッキングを行い、それから得意先別に仕分ける方が効率はよいと考えられます。梱包もピッキングをしながら梱包していくケースもあれば、梱包工程を設けてそこで作業するパターンもあります。どちらがよいかは一概には判断できません。その物流センターの他の作業との兼ね合いや作業者の習熟度も影響しますので、トータルで考えていくことが求められます。少なくとも一つのパターンに固執することは危険を伴いますので、柔軟な発想で仕事を組み立てていきましょう。
 

3. 業界の垣根を越えて

 物流はサプライチェーン全体を見渡せる立場にあります。少なくともものを動かすところ、ものを保管するところ(在庫管理を含む)では実物を目の当たりにしていますので特に実態を把握できる状況にあります。ものづくりの領域につきましても工場内物流を実施していればその状況をまるまる把握できると思います。そのため物流業はサプライチェーンを管理するに当たりうってつけの業種だと思っています。現在はどちらかというとサプライチェーンをリードしているのはメーカーではないでしょうか。
 
 そのため、メーカーが自社製品のサプライチェーン効率化を主導していると思われます。ここにどれだけ物流会社が入り...
 SCM

1. 物流5機能にとらわれるな

 長年仕事を進めているとその仕事のやり方に慣れてしまいます。それが当たり前になります。これはどんな仕事でも同じことではないでしょうか。そうはいっても仕事に慣れてくるとそのスタイルを変えることには勇気がいります。その仕事の担当者は仕事のやり方を変えることには否定的になります。慣れたやり方を変えることは非常にエネルギーのいることでもありますから無理もありません。しかし、もし現状を前提で考えていくと仕事の発展性が欠けてしまいます。
 
 物流というと輸送、保管、荷役、包装、流通加工といった5機能の話が出てきます。最近はこれに加えて情報機能がよく話題になります。このように物流には5機能+1の機能があるという前提で話が進みます。この機能論議を始めると、物流の仕事の範囲が制限される恐れがあるのです。物流と切っても切れない機能として在庫管理機能があります。在庫はものの購入の結果として、生産の結果として、受注予測の結果として、販売の結果として出現します。つまりありとあらゆる活動の結果としてあらわれるのが在庫なのですが、物流はその在庫を「現物」として目の当りにすることができる立場にあります。
 
 しかし多くの物流担当者が在庫は「荷主の責任だから」とか「調達部署の仕事だから」とか「営業部署の仕事だから」といって関わることを避けがちです。これは自分たちの仕事の領域を制限しているからこそ出てくる言葉ではないでしょうか。たしかに自分たちのコアとなる業務は何かといえば「ものを動かす」業務だということは間違いありません。ただし今やそういった業務を「点」でとらえるのではなく、サプライチェーンといった視点で「線」や「面」でとらえてその範囲で何ができるのかを考えていかなければならないのではないでしょうか。新聞報道でも「ものづくり」に入り込んだり、荷主会社に「アドバイス」したりする物流会社が出てきていることが伝えられました。業務の領域を広げ、ビジネスチャンスを拡大していくには当然の考え方なのです。
 

2. ピッキング作業のやり方は

 皆さんは「ピッキング作業」というとどのような作業をイメージしますでしょうか。作業者がリストを持って棚の周りを歩きながらものを取っていく作業を思い浮かべるのではないでしょうか。最近アマゾンが棚自体が作業者の所へ移動してくるというスタイルを検討しています。作業者は来た棚から必要なものを取り出すのです。この事例にもある通り、ピッキング作業の検討の際には「人が動く」のか「ものが動く」のかについて考えるべきなのです。たまたま現在は「人が動き回る」ことが一般的となっています。ただしこの発想は「固定観念」にすぎません。ピッキングラインを設けて作業者を固定している会社もあるのです。固定観念にとらわれずに新しい仕事をデザインするときには他業界の人の意見を聞いた方がいいかもしれません。
 
 一番よくないのは「ピッキングとはこういうものだ」といったように「昔ながらのやり方」を主張することです。その人にとってはよくても、それはすでに時代遅れのやり方かもしれないのです。新たな発想を生み出すには訓練が必要かもしれません。たまには社内で何かお題を決めて「発想の訓練」をやってみてはいかがでしょうか。ピッキング作業に対する指示も一つのパターンとは限りません。得意先のオーダー単位にピッキングするというやり方はオーソドックスかもしれません。
 
 しかしこれだと広いエリアを歩き回ってオーダーの品物を集めなければならないことになります。それよりも、製品単位でまずピッキングを行い、それから得意先別に仕分ける方が効率はよいと考えられます。梱包もピッキングをしながら梱包していくケースもあれば、梱包工程を設けてそこで作業するパターンもあります。どちらがよいかは一概には判断できません。その物流センターの他の作業との兼ね合いや作業者の習熟度も影響しますので、トータルで考えていくことが求められます。少なくとも一つのパターンに固執することは危険を伴いますので、柔軟な発想で仕事を組み立てていきましょう。
 

3. 業界の垣根を越えて

 物流はサプライチェーン全体を見渡せる立場にあります。少なくともものを動かすところ、ものを保管するところ(在庫管理を含む)では実物を目の当たりにしていますので特に実態を把握できる状況にあります。ものづくりの領域につきましても工場内物流を実施していればその状況をまるまる把握できると思います。そのため物流業はサプライチェーンを管理するに当たりうってつけの業種だと思っています。現在はどちらかというとサプライチェーンをリードしているのはメーカーではないでしょうか。
 
 そのため、メーカーが自社製品のサプライチェーン効率化を主導していると思われます。ここにどれだけ物流会社が入り込むかが課題であると考えられます。しかしこのような話題になると決まって物流はものを動かすことが仕事であり、サプライチェーンマネジメントなどとんでもない、と言い出す人がいます。たしかに現状のまま取り組もうとすると知識不足で対応は困難かもしれません。しかし今からは仕事の領域を広げてより儲けていかなければならないのです。ごく一部の意識の高い会社だけがここに気づき、一生懸命に勉強して新たな領域に足を踏み出そうとしているのです。
 
 これからは業界の垣根も低くなることがあるのではないかと思います。つまり従来物流はアウトソースするという思想であったメーカーが自ら物流を行ってみたり、物流会社が簡単なものづくりを行ったりすることが一般的になるのではないかと思うのです。法的な規制があるのなら難しいかもしれませんが、それが無いのであればこういった業界間の乗り入れはあっても良いのではないでしょうか。仕事の領域の拡大のためには第一に柔軟な発想を行っていくことです。今までの常識は自身の単なる思い込みくらいにとらえてはいかがでしょうか。今後の生き残りのため、更なる発展のためにはある程度突拍子もない思考も必要ではないでしょうか。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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