サプライチェーンとはなにか

 工業時代の主役が技術であったことは言うまでもありません。企業の成長は最高の技術が約束し、企業の評価基準が研究開発投資であった時代が長く続きました。今は成功を技術だけで約束できないことが明らかになり、製造業にも流通業にも共通して経営のスピードが勝敗を決める時代です。コンセプトに重心を置く戦略経営から連鎖業務で全体最適を図るサプライチェーン経営へと、重要性がシフトしたと言えます。

 さて多くの経済誌において一般化している経営用語のサプライチェーンは、技術的な紹介図書が氾濫し、IT(情報技術)の応用とともに広まったために、その経営の本質が見えなくなった感があります。IT以前に存在するサプライチェーンの概念とは何でしょうか。

 製品を企画し、資材を調達して、製造し、輸送し、販売するビジネスは、製造業と流通業を区分することなく、複数の会社間を横切るだけではなく、同じ会社内においても多くの作業の連鎖から成り立っています。次の業務を待っている資材・部品・製品は、連鎖する業務と業務の間で在庫であり、顧客へ製品を届けるまでの長い供給業務の連鎖と業務間の在庫からサプライチェーンは成り立ちます。

 このように定義すると連鎖する業務は、企業レベルの生産・販売という機能から、実行レベルの仕入納品、加工、組立、蔵入れ・蔵出し、輸送などの業務連鎖まで、階層の入れ子状態の複雑なシステムです。サプライチェーンをモノが流れる仕入から販売までのスピードの速さは、入金と出金のキャッシュの時間差であり、サプライチェーン上に滞留している在庫というキャッシュをどのようにマネジメントするかに焦点が当てられることになります。マネジメントの対象は供給連鎖全体であり、従来のコストダウンや効率化の部分的効率化の業務改善ではありません。供給連鎖全体における時間のマネジメント、すなわち業務速度のマネジメントに焦点を当てなければなりません。

 在庫削減やトータル物流コスト削減などの指標は経営指標としてまだ部分的でしかなく、サプライチェーン経営としてそれだけでは誤解を招く表現となります。EDIの共同受発注システムでトータルコストを削減しても、企業間の競争力の相対的ポジショニングが悪化して市場シェアを落とすといった現象が起きたり、在庫削減が機会損失を招いて売上が低迷し、経営が行き詰まってしまったという話があっても当然なのです。


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

・製品構成・生産・販売の全体のつながりSCM(サプライチェーンマネジメント)の中でキャッシュ収益を改善します。 ・サプライチェーンマネジメントの源流にトヨタ式経営を求め、そのさらに源流としてドラッカー経営に行きました。 ・マネジメント…

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