荷姿設定原則とは

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SCM 

1. 箱の入り数を決める

 荷姿は物流の機能の中でも最も重要なものです。しかし物流業界では輸送という「運ぶ作業」に目が行きがちで、輸送コストの要因となる荷姿の注目度はあまり高くありません。しかし、実際に輸送コストを改善したいのであれば荷姿改善が欠かせません。もっと注目していくべきなのです。荷姿を良くすることですべての物流が改善される点に着目し、少し荷姿設定における原則について触れておこうと思います。まず荷姿に複数の部品を入れることについて考えてみましょう。一般的に量産部品の場合、一つの箱にいくつもの部品を入れて荷姿をつくります。ではこの時の入り数はどのようにして決めたらよいのでしょうか。この入り数の決定権はその荷姿を受け取る側にあると考えましょう。なぜならその部品を使う側は「いくつ欲しいか」がわかっているからです。当たり前の話ですが、不必要なモノを受け取ることはありません。ジャスト・イン・タイム(JIT)でモノを調達しますので、不必要なモノを買うことはありません。では、JIT調達における荷姿はどのように決めていったらよいでしょうか。
 
 それは調達側がどのような使い方をするかで決まります。JIT調達はJIT生産が行われるから存在するわけです。そのJIT生産に合わせて荷姿を設定します。もし、1日に1回生産するのであれば、箱の入り数は1日分でよいことになります。では、1日2回生産するのであればどうなるでしょうか。この時は1日の生産量の半分を入り数にします。要するに1日分は2箱ということになります。以下同様に、4回生産であれば1日の生産量の4分の1が入り数、8回生産であれば8分の1が入り数ということになります。
 
 このように入り数を決めることが荷姿設定の原則になります。そして入り数が決まった後に実施するのが箱の選定です。ここを勘違いする人が多いのですが、箱を先に決めるのではありません。あくまでも入り数を最初に決めるのです。なぜなら荷姿はその中身を使う人が決めるからです。繰り返しになりますが、使う人は不要なモノは買いません。いくら大きな箱にたくさん入るからと言って、要らないものまで届けられても困るからです。
 

2. 入り数にあった箱を決める

 入り数を決めた後にその数にふさわしい箱を決めます。ところで入り数ですが、「12」という数字は結構入り数としては良い数字です。2でも3でも割り切れます。4でも6でも。箱の中に並べるときにこの数字の組み合わせが何かと便利です。ダースといわれる「12」という数字。念のために頭の中に入れておきましょう。
 
 箱の選定ですが、数字に見合った箱を選ぶわけですが、その数は無数にあります。しかし、ここでもポイントをお話しておくと、箱は数種類に限定する、ということです。箱は工場や倉庫の中で積み合わせることがあります。もし輸送する段となれば、この積み合わせ性がトラック積載率に大きな影響を及ぼすのです。そこで会社として、あるいは協力会社を含めた企業グループとして箱のモジュールをきっちりと決めておくことをお勧めします。お互い積み合わせが可能であること。一番よく使うトラックの荷台にぴったりとはまること。空になった時に圧縮が可能であることです。
 
 これらの基本を満たす箱を考えましょう。特にプラスチックボックスや鉄製容器などは繰り返し使えるリターナブル容器です。一回購入すると簡単に買い替えは難しくなりますので、上記条件を満たす容器モジュールをしっかりと検討して決めていくことが求められます。環境を考慮すると紙製容器や木製容器はできれば避けたいところです。ワンウェイではコスト的にも環境的にも不利になることが想定されます。製品によっては箱の中で間仕切りを設置する必要が出てきます。この間仕切りは品質上必要になることがほとんどです。
 
 間仕切りのポイントはできれば空の時点で折りたたんで箱の中に入れて置けるようにするとよいでしょう。そうすることで箱自体を圧縮することが可能になるからです。何度も繰り返し使えるリターナブル容器ですが、考慮すべき点が一つあります。それは油のついた部品用とそうでない部品用を分けるということです。これをごっちゃにすると一気に容器全体が汚れてしまいます。
 

3. 容器数量管理

 荷姿は最もよく使う輸送機器のモジュールに合わせるというお話をさせていただきました。海上コンテナ、大型トラックなど会社の物流で一番よく使うものに合わせるのです。荷台を輪切りにしていって最終的にできる直方体が荷姿の箱ということになります。パレットに載せるのであればパレットの容積を考慮する必要があります。このパレットについても考え方は同じです。トラックの荷台にぴったりとはまるパレットサイズを考える必要があります。ですから必ずしも1.1系パレットがベストな解ではないということにつながるわけです。この点について認識し、見直すべき点は見直す必要がありそうです。
 
 大型の荷姿も同様です。他の容器との積み重ねが可能となるようにサイズ合わせ、積み重ね方式の統合などが必要になってきます。それから荷姿関連で容器の必要数量に...
SCM 

1. 箱の入り数を決める

 荷姿は物流の機能の中でも最も重要なものです。しかし物流業界では輸送という「運ぶ作業」に目が行きがちで、輸送コストの要因となる荷姿の注目度はあまり高くありません。しかし、実際に輸送コストを改善したいのであれば荷姿改善が欠かせません。もっと注目していくべきなのです。荷姿を良くすることですべての物流が改善される点に着目し、少し荷姿設定における原則について触れておこうと思います。まず荷姿に複数の部品を入れることについて考えてみましょう。一般的に量産部品の場合、一つの箱にいくつもの部品を入れて荷姿をつくります。ではこの時の入り数はどのようにして決めたらよいのでしょうか。この入り数の決定権はその荷姿を受け取る側にあると考えましょう。なぜならその部品を使う側は「いくつ欲しいか」がわかっているからです。当たり前の話ですが、不必要なモノを受け取ることはありません。ジャスト・イン・タイム(JIT)でモノを調達しますので、不必要なモノを買うことはありません。では、JIT調達における荷姿はどのように決めていったらよいでしょうか。
 
 それは調達側がどのような使い方をするかで決まります。JIT調達はJIT生産が行われるから存在するわけです。そのJIT生産に合わせて荷姿を設定します。もし、1日に1回生産するのであれば、箱の入り数は1日分でよいことになります。では、1日2回生産するのであればどうなるでしょうか。この時は1日の生産量の半分を入り数にします。要するに1日分は2箱ということになります。以下同様に、4回生産であれば1日の生産量の4分の1が入り数、8回生産であれば8分の1が入り数ということになります。
 
 このように入り数を決めることが荷姿設定の原則になります。そして入り数が決まった後に実施するのが箱の選定です。ここを勘違いする人が多いのですが、箱を先に決めるのではありません。あくまでも入り数を最初に決めるのです。なぜなら荷姿はその中身を使う人が決めるからです。繰り返しになりますが、使う人は不要なモノは買いません。いくら大きな箱にたくさん入るからと言って、要らないものまで届けられても困るからです。
 

2. 入り数にあった箱を決める

 入り数を決めた後にその数にふさわしい箱を決めます。ところで入り数ですが、「12」という数字は結構入り数としては良い数字です。2でも3でも割り切れます。4でも6でも。箱の中に並べるときにこの数字の組み合わせが何かと便利です。ダースといわれる「12」という数字。念のために頭の中に入れておきましょう。
 
 箱の選定ですが、数字に見合った箱を選ぶわけですが、その数は無数にあります。しかし、ここでもポイントをお話しておくと、箱は数種類に限定する、ということです。箱は工場や倉庫の中で積み合わせることがあります。もし輸送する段となれば、この積み合わせ性がトラック積載率に大きな影響を及ぼすのです。そこで会社として、あるいは協力会社を含めた企業グループとして箱のモジュールをきっちりと決めておくことをお勧めします。お互い積み合わせが可能であること。一番よく使うトラックの荷台にぴったりとはまること。空になった時に圧縮が可能であることです。
 
 これらの基本を満たす箱を考えましょう。特にプラスチックボックスや鉄製容器などは繰り返し使えるリターナブル容器です。一回購入すると簡単に買い替えは難しくなりますので、上記条件を満たす容器モジュールをしっかりと検討して決めていくことが求められます。環境を考慮すると紙製容器や木製容器はできれば避けたいところです。ワンウェイではコスト的にも環境的にも不利になることが想定されます。製品によっては箱の中で間仕切りを設置する必要が出てきます。この間仕切りは品質上必要になることがほとんどです。
 
 間仕切りのポイントはできれば空の時点で折りたたんで箱の中に入れて置けるようにするとよいでしょう。そうすることで箱自体を圧縮することが可能になるからです。何度も繰り返し使えるリターナブル容器ですが、考慮すべき点が一つあります。それは油のついた部品用とそうでない部品用を分けるということです。これをごっちゃにすると一気に容器全体が汚れてしまいます。
 

3. 容器数量管理

 荷姿は最もよく使う輸送機器のモジュールに合わせるというお話をさせていただきました。海上コンテナ、大型トラックなど会社の物流で一番よく使うものに合わせるのです。荷台を輪切りにしていって最終的にできる直方体が荷姿の箱ということになります。パレットに載せるのであればパレットの容積を考慮する必要があります。このパレットについても考え方は同じです。トラックの荷台にぴったりとはまるパレットサイズを考える必要があります。ですから必ずしも1.1系パレットがベストな解ではないということにつながるわけです。この点について認識し、見直すべき点は見直す必要がありそうです。
 
 大型の荷姿も同様です。他の容器との積み重ねが可能となるようにサイズ合わせ、積み重ね方式の統合などが必要になってきます。それから荷姿関連で容器の必要数量についても基準を設定してそれに従って購入していく必要があります。容器は在庫量によって必要数量に大きな差が出がちです。ですから必要以上に買いすぎたり、作りすぎたりすることで容器不足を招く可能性があるのです。
 
 物流管理の一環として、不必要と思われる容器の投入は控えるべきでしょう。売り上げが上がる、つまり生産量や出荷量が増える場合は別として、生産ロットや購入ロットを大きくするだけの理由で容器の新規購入はやめましょう。荷姿設定に当たり、容器内充填率を著しく低下させるような部品形状には注意が必要です。モノは運ばなければ次工程には届きません。ですから運搬効率は荷姿設定に当たっての必須項目です。場合によっては組立場所を見直したり、部品設計自体を見直したりする必要があると思います。
 
 物流を考慮して組立場所や設計を見直すなんてあり得ない、と考えている会社があったとしたら少々時代遅れだと言わざるを得ません。物流コストは会社にとってばかになりませんから、常に物流効率も意識して荷姿設定、そして製品設計を行っていきたいものです。さらに荷姿を検討する専門家は最低でも一人、社内に確保しましょう。そしてその人に荷姿の勉強に取り組んでもらい社内の荷姿技術力を向上させていきましょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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