感性工学をを振り返って :新環境経営 (その39)

CSR
 4回に亘って感性工学について紹介してきました。ポスト工業化社会では、「物や金」という価値に代わる、新しい商品開発や、新しいシステムの構築には「感性工学」の活用が必要でした。そこで、ここまでは「感性工学」を構成する要素である、「素材戦略」「感性産業」「脳が作りだす感性工学の世界」「感性工学が拓く情報技術」「感性教育」「感性社会学」について紹介してきました。
 
 現代社会の問題点として、次の3点があります。
 
1. 物質中心の科学技術がもたらしたものには高効率生産などの優れた側面と、人口爆発、環境汚染、資
  源枯渇、人心荒廃などの負の側面とがあります。
 
2. 世界的な競争時代にあって、従来の物質科学技術のさらなる発展によって競争社会を乗り切ろうとす
  る動きがありますが、物質科学技術の発展のみでは新たに出現する解決策が困難な問題に適切に対応
  することはできません。
 
3. 大量生産大量消費の生産流通システムは、拝金主義、物質主義の弊害を増大させ、人々の精神的荒廃
  を示すような社会的状況を生み出しています。また、巨大化した製造企業は、生産実態を把握するこ
  とができず、形骸化して利益を上げることが難しくなっています。
 
 人々の関心は、物の取得の欲求以外に、価値の交換をする欲求に移りつつありますが、これに対する社会的基盤の整備がなされていません。ポスト工業化社会への移行は既に始まっています。経営のかじ取りは、上記の現代社会の問題点を押さえて行く必要があります。この辺りについては、先に小林秀雄賞を受賞した、歴史社会学者小熊英二さん著「社会を変える」の第一章:日本社会は今どこにいるのか、でも触れられており、私たちが拠って立つ現在地点を再確認する意味でも、参照して下さい。
 

1. 感性工学の時代に今起きていること

 近年、ICTが隅々まで浸透し、上から降ってくる情報を参照することが主だったこれまでの時代と違い、横繋がりで情報が瞬時に共有されるように変化してきています。これまで主要メディアが流す情報を鵜呑みにしてきたが、ソーシャルネットワークが当たり前に定着し、情報の民主化が進んできました。経済は20年間ほぼゼロ成長、高度成長期の様にどんどん新たなモノを作るより、これまでに作ったモノの再利用が中心になっています。再利用には、作り直す、資源に戻す、使いまわす、があり、いずれも新規に作る以上に知恵を働かさねばなりません。又、大量生産大量消費から、いいモノを必要なだけ買う。モノの所有からシェアする、分かち合って利用するという時代になりました。次の2点の事例から窺うことができます。
 
1. 自分好みの洋服を着たい人がいて、そこに届けるために服をストックしてレンタルで流通させる。
 
2. 室内に自分好みの絵を飾りたい人がいて、そのために画家の絵をストックしてレンタルで流通させる。
 
 溢れる物の中から自分の気にいった物だけを選ぶ時代。数多あるものの中から選ばれるためには、その物に作る人の気持ちが入っていなければなりません。選ぶ人の琴線に触れるものでなければなりません。これまでの造る方が主で、あてがわれるものを買うのが従の時代から、利用者が主で、供給側が従の時代です。感性を働かせて届ける手段を考える時代になりました。
 

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2. 感性工学のまとめ

 「感性工学」は、自然、人文、社会の各分野で個別に発展してきた科学技術を感性という人間力の観点から再構築することにより、豊かで安全な社会を作るための実践的工学として創始された学問分野です。この取り組みが、おもてなしの文化を持つ日本発である事。戦後日本は欧米から多くの制度を輸入してきましたが、ようやく課題先進国の日本から世界をリードする考え方が生まれた事を喜びましょう。
 
 次回からは、持続可能性の観点で、「永続地帯」について紹介します。
 

この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

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