地域貢献企業認定制度:新環境経営(その8)

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1. 地域発のCSR認定制度について

 CSR地域発のCSR認定制度は2007年頃から京都と横浜で始まり、宇都宮にも展開されている。この制度がスタート時点ではCSRのISO化が検討されていたが、標準化もガイドラインレベルであり、企業が取り組むべき課題として充分な認識及び浸透しているとは言い難い状況でした。京都ではプライベートマークを取得した企業による個人情報の漏洩やISO取得企業の不祥事が頻発、認証取得が目的化しCSRの認識が徹底されていません。「株主が最重要」から「企業を取り巻く多様なステークホルダー(利害関係者)の満足度向上」へ。環境や働く人たちの配慮、キャリアップ支援、積極的な情報開示と地域社会への関与など、より広範囲な責任が求められていました。そこで「経済、社会、環境」の3つの側面について、(KSR)京都CSR:「企業の社会的責任マネジメントシステム要求事項」として認証制度をスタートさせました。
 
 尚、KSRは京都から発信の意味で、京都限定を意図したものではありませんでした。東京都は地域性にこだわったCSR認定の仕組みは見当たりませんが、銀行の融資条件として個々の項目(環境、品質、情報、衛生、労働)に対する取り組みが優れていると金利が緩和される仕組みがあります。
 

2. 横浜型地域貢献企業認定制度

 横浜型地域貢献企業認定制度は、横浜市が横浜市立大学CSRセンターLLPの影山摩子弥センター長に制度設計を依頼し2007年から運用が開始されています。大手企業が人、物、金を使ってCSR報告書等で大々的に広報・宣伝するのに比べ、地域貢献企業認定制度は地元に密着して企業活動を継続し、納税を確実に行って地域の雇用を増やしている企業を認定します。主として中小企業を対象として自治体が地道に経営を実践している企業を口コミで探し当て、自治体のCSR認定担当者が企業に出向いて企業の経営状態についてヒアリングして認定します。認定されると自治体により広報され、金融機関からの融資の条件も有利になるなど、ほとんど費用負担もなくブランドイメージを高められる仕組みとなっています。
 
 評価項目は「コンプライアンス、環境、品質、労働安全衛生」などの10項目です。これらについての”具体的な取り組み”を問うのが中心だが、ISOマネジメントシステムに相当する“仕組み”についても評価するようになっています。既に、150社を超える企業が認定されており業種も幅広いようです。横浜型の地域貢献企業認定制度を設計をされた影山先生は、認定制度の成果について次のようにコメントされています。『企業名の公表や低利融資制度の活用といったメリットについても前面に打ち出しているので、中小企業ほど取り組みが進むケースも多い。むしろ中小企業ほど生き残るためにステークホルダーとの関係を重視し取組みを進めている場合があります。それがCSRの本質です。CSRはシステムでないといけません。企業だけの取り組みではなく、ステークホルダーに取り組みを伝え、また支援を受けるといったことが...
 

1. 地域発のCSR認定制度について

 CSR地域発のCSR認定制度は2007年頃から京都と横浜で始まり、宇都宮にも展開されている。この制度がスタート時点ではCSRのISO化が検討されていたが、標準化もガイドラインレベルであり、企業が取り組むべき課題として充分な認識及び浸透しているとは言い難い状況でした。京都ではプライベートマークを取得した企業による個人情報の漏洩やISO取得企業の不祥事が頻発、認証取得が目的化しCSRの認識が徹底されていません。「株主が最重要」から「企業を取り巻く多様なステークホルダー(利害関係者)の満足度向上」へ。環境や働く人たちの配慮、キャリアップ支援、積極的な情報開示と地域社会への関与など、より広範囲な責任が求められていました。そこで「経済、社会、環境」の3つの側面について、(KSR)京都CSR:「企業の社会的責任マネジメントシステム要求事項」として認証制度をスタートさせました。
 
 尚、KSRは京都から発信の意味で、京都限定を意図したものではありませんでした。東京都は地域性にこだわったCSR認定の仕組みは見当たりませんが、銀行の融資条件として個々の項目(環境、品質、情報、衛生、労働)に対する取り組みが優れていると金利が緩和される仕組みがあります。
 

2. 横浜型地域貢献企業認定制度

 横浜型地域貢献企業認定制度は、横浜市が横浜市立大学CSRセンターLLPの影山摩子弥センター長に制度設計を依頼し2007年から運用が開始されています。大手企業が人、物、金を使ってCSR報告書等で大々的に広報・宣伝するのに比べ、地域貢献企業認定制度は地元に密着して企業活動を継続し、納税を確実に行って地域の雇用を増やしている企業を認定します。主として中小企業を対象として自治体が地道に経営を実践している企業を口コミで探し当て、自治体のCSR認定担当者が企業に出向いて企業の経営状態についてヒアリングして認定します。認定されると自治体により広報され、金融機関からの融資の条件も有利になるなど、ほとんど費用負担もなくブランドイメージを高められる仕組みとなっています。
 
 評価項目は「コンプライアンス、環境、品質、労働安全衛生」などの10項目です。これらについての”具体的な取り組み”を問うのが中心だが、ISOマネジメントシステムに相当する“仕組み”についても評価するようになっています。既に、150社を超える企業が認定されており業種も幅広いようです。横浜型の地域貢献企業認定制度を設計をされた影山先生は、認定制度の成果について次のようにコメントされています。『企業名の公表や低利融資制度の活用といったメリットについても前面に打ち出しているので、中小企業ほど取り組みが進むケースも多い。むしろ中小企業ほど生き残るためにステークホルダーとの関係を重視し取組みを進めている場合があります。それがCSRの本質です。CSRはシステムでないといけません。企業だけの取り組みではなく、ステークホルダーに取り組みを伝え、また支援を受けるといったことが重要です。企業の取り組みはすべて利益につながらないといけません。短期的な利益と長期的な利益の両方を考える必要があり、社会から信頼を勝ち得ていくのは長期的な利益につながります。』
 

3. CSR経営のまとめ

 EMS(環境マネジメントシステム )にCSRを取り込んでいるケースが出てきています。経営の目指すところは「環境に配慮した持続可能社会」であり、「雇用や地域社会への貢献としての社会的責任」です。CSRが更に進化し発展していく方向にあります。また近年はCSRを更に進めてCSV(Creative Shared Value:共通価値)という概念もでてきています。
 
 次回は環境経営の観点で「リサイクル、有害物質管理」について紹介します。
 

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この記事の著者

石原 和憲

人と地域をつなぐ、交流型イノベーター

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