中小製造業の売上増加術(その1)

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【中小製造業の売上増加術 連載目次】

 

1.販路開拓の進め方:プレス会社の憂鬱から

 
 製造業中小製造業の皆様は、販路開拓の手立てが探せずに、どうしても既存の顧客中心の営業活動になっていないでしょうか、今回は売上増加の戦略として販路開拓の進め方について解説します。
 
(1)ビジネス・マッチングを生かす
 
 あるビジネス・マッチング会で、大手企業一社と中小企業数社のコーディネータを務めました。このマッチング会は、企業間のマッチングと展示会場を設けています。大手企業の経営幹部は、事前にマッチング会で「一つのテーマに的を絞って、求めている技術」を明確にし、そのニーズに見合うような中小企業を探したうえでコンタクト(マッチング)を持ちました。その考え方は、下請け企業を探しているのではなく、ビジネス・パートナーを探しているという姿勢です。このマッチング会では、成果を上げることのできそうな有望な候補企業を見込むことができました。このように探している側の企業のニーズと、打合せを行う側の企業の保有する技術が明確であると、ビジネス・マッチングが実を結びます。マッチング会では、ニーズが明らかであるだけに、大手企業からのコンタクトの希望は、取引拡大の可能性が高くなります。
 
(2)市場を広げる
 
 遮熱塗料を販売している会社の幹部の方々を紹介いただいたことがあります。この会社では、国内よりも海外での売上げが大きく、海外で成功した企業といえます。具体的には、ジェトロを通じて海外にこのメーカーの遮熱塗料が紹介されて、米国のある財団と提携することができたそうです。そして、その財団を経由して多くの企業で遮熱塗料の購入が実現したとのことです。
 
 遮熱塗料が最も効果を発揮する状況は、太陽の光が強く、その強い光によって生じる熱を遮断できることではないでしょうか。このように考えると日本よりも赤道に近い中東や東南アジアのような地域でニーズが高いことが想像できます。
 
 そして、高い評価を得たのも、米国の南部(フロリダやテキサスなど)、タイ、オマーンなど太陽の光が強い地域でした。海外市場で高評価を受けて、それから国内市場に販路拡大を進めたときに、この会社の幹部の方たちとお会いしました。日本国内では、後発メーカーであり、市場もある程度固まりつつあったことから、他社の作り上げた国内市場・販路への切り崩しは困難です。この遮熱塗料は、確かに測定データをみる限り、かなりの性能を示しています。
 
 この会社の戦略は、市場を国内中心に据えるのではなく、もっと大きな海外市場に販路を移したことです。このように限られた市場で考えるのではなく、強いニーズを持つ市場はどこにあるのかを考えることが必要です。そして、その際に公的な機関を効果的に活用することも一考ではないでしょうか。
 
(3)企業連携による製品強化を図る
 
 企業連携を考えると、多くの商工会議所が、連携して受注獲得を図ってきています。しかし、その成果は、核となる企業と参加企業の関係、企業間の協調性、要求される技術力との差などの要因によって、あまり成功例が生まれていないように見えます。ただ、企業間の企業連携は、効果的な方法の一つであることは間違いありません。
 
 そして、ここにもう一つのアイデアがあります。それは、課題解決の提案をするための企業連携です。この3年ほど工場のゼロエミッションの中の廃油や廃液処理について、いろいろと調査をしています。具体的には、水溶性切削油の廃液をより安価で効率よく処理することです。簡単に言うと、水と油を分離し、水は下水に油は別に処理するということです。
 
 毎年ビックサイトで催しされる環境展では、凝集剤やフィルター、UF膜、RO膜など多くの方策が提案されています。それが、3~4年の間に展示会の会社数が減っています。これは、自社の技術をPRすることだけ、競争だけの関係になっているからではないでしょうか。例えば、A社では油分を分解できる溶剤を開発しています。B社は、油水分離をするフィルターの技術を有しています。そして、両社ともに、特徴と欠点を持っています。A社は100%油分の分解をできるわけではないこと、B社はフィルターに分離できる油分量に限界があることです。
 
 この2社は、環境展に出展していれば、お互いに競合する関係でしかないでしょう。しかし、顧客の立場から考えると...

 

【中小製造業の売上増加術 連載目次】

 

1.販路開拓の進め方:プレス会社の憂鬱から

 
 製造業中小製造業の皆様は、販路開拓の手立てが探せずに、どうしても既存の顧客中心の営業活動になっていないでしょうか、今回は売上増加の戦略として販路開拓の進め方について解説します。
 
(1)ビジネス・マッチングを生かす
 
 あるビジネス・マッチング会で、大手企業一社と中小企業数社のコーディネータを務めました。このマッチング会は、企業間のマッチングと展示会場を設けています。大手企業の経営幹部は、事前にマッチング会で「一つのテーマに的を絞って、求めている技術」を明確にし、そのニーズに見合うような中小企業を探したうえでコンタクト(マッチング)を持ちました。その考え方は、下請け企業を探しているのではなく、ビジネス・パートナーを探しているという姿勢です。このマッチング会では、成果を上げることのできそうな有望な候補企業を見込むことができました。このように探している側の企業のニーズと、打合せを行う側の企業の保有する技術が明確であると、ビジネス・マッチングが実を結びます。マッチング会では、ニーズが明らかであるだけに、大手企業からのコンタクトの希望は、取引拡大の可能性が高くなります。
 
(2)市場を広げる
 
 遮熱塗料を販売している会社の幹部の方々を紹介いただいたことがあります。この会社では、国内よりも海外での売上げが大きく、海外で成功した企業といえます。具体的には、ジェトロを通じて海外にこのメーカーの遮熱塗料が紹介されて、米国のある財団と提携することができたそうです。そして、その財団を経由して多くの企業で遮熱塗料の購入が実現したとのことです。
 
 遮熱塗料が最も効果を発揮する状況は、太陽の光が強く、その強い光によって生じる熱を遮断できることではないでしょうか。このように考えると日本よりも赤道に近い中東や東南アジアのような地域でニーズが高いことが想像できます。
 
 そして、高い評価を得たのも、米国の南部(フロリダやテキサスなど)、タイ、オマーンなど太陽の光が強い地域でした。海外市場で高評価を受けて、それから国内市場に販路拡大を進めたときに、この会社の幹部の方たちとお会いしました。日本国内では、後発メーカーであり、市場もある程度固まりつつあったことから、他社の作り上げた国内市場・販路への切り崩しは困難です。この遮熱塗料は、確かに測定データをみる限り、かなりの性能を示しています。
 
 この会社の戦略は、市場を国内中心に据えるのではなく、もっと大きな海外市場に販路を移したことです。このように限られた市場で考えるのではなく、強いニーズを持つ市場はどこにあるのかを考えることが必要です。そして、その際に公的な機関を効果的に活用することも一考ではないでしょうか。
 
(3)企業連携による製品強化を図る
 
 企業連携を考えると、多くの商工会議所が、連携して受注獲得を図ってきています。しかし、その成果は、核となる企業と参加企業の関係、企業間の協調性、要求される技術力との差などの要因によって、あまり成功例が生まれていないように見えます。ただ、企業間の企業連携は、効果的な方法の一つであることは間違いありません。
 
 そして、ここにもう一つのアイデアがあります。それは、課題解決の提案をするための企業連携です。この3年ほど工場のゼロエミッションの中の廃油や廃液処理について、いろいろと調査をしています。具体的には、水溶性切削油の廃液をより安価で効率よく処理することです。簡単に言うと、水と油を分離し、水は下水に油は別に処理するということです。
 
 毎年ビックサイトで催しされる環境展では、凝集剤やフィルター、UF膜、RO膜など多くの方策が提案されています。それが、3~4年の間に展示会の会社数が減っています。これは、自社の技術をPRすることだけ、競争だけの関係になっているからではないでしょうか。例えば、A社では油分を分解できる溶剤を開発しています。B社は、油水分離をするフィルターの技術を有しています。そして、両社ともに、特徴と欠点を持っています。A社は100%油分の分解をできるわけではないこと、B社はフィルターに分離できる油分量に限界があることです。
 
 この2社は、環境展に出展していれば、お互いに競合する関係でしかないでしょう。しかし、顧客の立場から考えると、どの製品がほしいのではなく、課題を解決する方策がほしいのです。現在、A社とB社を連携すると、100%ではないにしろ油分を分解します。そして、ある程度分解し排出される廃液をフィルターで水を分離し、より多くの水を下水に流すことができます。
 
 この結果、油分を分解する溶剤は効果を持ち、フィルターの寿命も延びることになります。そして、そのときのコストがいくらになるかがポイントです。詳細な詰めは未だ出来ていませんが、現在比較対象になりえる廃液処理方法と比較して、安価に達成できそうな状況だそうです。このように競合関係にある企業間での補完によって、より優れた製品を開発し、販売するというストーリーが構築できます。
 
 今回は、上記のような中小製造業の売上増加術:販路開拓の進め方について、説明をしました。次回は、自社の特徴と価格情報を生かすについて解説します。
 
 

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この記事の著者

間舘 正義

製品を切り口に最適コスト追求のためのコスト・ソリューションを提供します。

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