固定観念を取り払え:現場発信型の改善(その2)

投稿日

サプライチェーンマネジメント

 

◆ 固定観念を取り払え

 製造現場では歩行一歩の改善を、ものを取る距離を10cm短縮する改善を、愚直に積み上げて実行してきています。だからこそ日本の製造業は世界でもナンバーワンになることができたのでしょう。 

 『ちいさいことを重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道』これはイチロー選手の有名な言葉です。大きなことを達成した人の言葉ですから、ずっしりと心の中に響いてきます。私たちが物流改善を行う時もまさにこの言葉の通り小さなことを積み上げていくことが必要になります。

 製造現場での改善は「物流改善」だとも解釈できます。部品を持って3歩歩くことも、ものを取って20cm手前に引き寄せるのも「運搬作業」だからです。私たち物流もこの考え方に学ぶ必要があります。その極意は「固定観念を捨てる」ということでしょう。

 

 前回お話しましたピッキング作業、カートを押しながら歩行するという前提に立って設計されている現場がほとんどです。この物流センターでもピッキングする際には片道5歩も歩いていました。ピッキングカートが大きいために必然的に通路幅が広くなってしまっているからです。

 大抵の物流センターではカートが2台すれ違えるように通路幅を設定しています。まずカートありきで現場設計がなされているのです。一方で製造会社のピッキングエリアは違った発想で設計されています。それは人が一人通れる広さという基準で決まってくるということです。

 後者はそもそも歩行はムダだという発想に立っています。ですから同じピッキングエリアでも物流系と製造系でまったく違ったものができてくるということになるのです。もし製造会社にいたことのある人が物流センターで仕事をすることになったとしたらさまざまな現場発信型の改善案が出てくることでしょう。

 もしかしたらそのセンターでまったく仕事をしたことのないアルバイトの人の方が先入観な...

サプライチェーンマネジメント

 

◆ 固定観念を取り払え

 製造現場では歩行一歩の改善を、ものを取る距離を10cm短縮する改善を、愚直に積み上げて実行してきています。だからこそ日本の製造業は世界でもナンバーワンになることができたのでしょう。 

 『ちいさいことを重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道』これはイチロー選手の有名な言葉です。大きなことを達成した人の言葉ですから、ずっしりと心の中に響いてきます。私たちが物流改善を行う時もまさにこの言葉の通り小さなことを積み上げていくことが必要になります。

 製造現場での改善は「物流改善」だとも解釈できます。部品を持って3歩歩くことも、ものを取って20cm手前に引き寄せるのも「運搬作業」だからです。私たち物流もこの考え方に学ぶ必要があります。その極意は「固定観念を捨てる」ということでしょう。

 

 前回お話しましたピッキング作業、カートを押しながら歩行するという前提に立って設計されている現場がほとんどです。この物流センターでもピッキングする際には片道5歩も歩いていました。ピッキングカートが大きいために必然的に通路幅が広くなってしまっているからです。

 大抵の物流センターではカートが2台すれ違えるように通路幅を設定しています。まずカートありきで現場設計がなされているのです。一方で製造会社のピッキングエリアは違った発想で設計されています。それは人が一人通れる広さという基準で決まってくるということです。

 後者はそもそも歩行はムダだという発想に立っています。ですから同じピッキングエリアでも物流系と製造系でまったく違ったものができてくるということになるのです。もし製造会社にいたことのある人が物流センターで仕事をすることになったとしたらさまざまな現場発信型の改善案が出てくることでしょう。

 もしかしたらそのセンターでまったく仕事をしたことのないアルバイトの人の方が先入観なく良い改善アイデアを発信することができるかもしれません。大切なことは「人のアイデアを否定しない」ということです。現場ではこのルールに基づき大いにディスカッションすべきだと思います。

 昔大手調味料メーカーの女子社員が考えたある改善案で大いに売り上げを伸ばしたという話があります。誰もが思いつかないけれど納得してしまう素晴らしいアイデアでした。

 

 次回に続きます。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
物流品質について考えよう 物流品質の向上 (その1)

1.工場における物流品質とは  工場の生産運営を物流が支えていることを考えれば、物流品質は常に高いレベルにあることが求められるのは当然と言えるでしょ...

1.工場における物流品質とは  工場の生産運営を物流が支えていることを考えれば、物流品質は常に高いレベルにあることが求められるのは当然と言えるでしょ...


自動車産業、モジュール部品メーカーが完成車の品質を保証する

 モジュールサプライヤー、例えばトヨタ系列でいえば部品メーカーのデンソーやアイシン精機、またGMの部品製造部門が切り離されて独立したデルファイ、そしてドイ...

 モジュールサプライヤー、例えばトヨタ系列でいえば部品メーカーのデンソーやアイシン精機、またGMの部品製造部門が切り離されて独立したデルファイ、そしてドイ...


生残りの手段としてのサプライチェーンとは

 「サプライチェーンマネジメント」(工業調査会)を私が出版したのは1998年ですが、それ以来日本国内のジャストインタイムやロジスティクスの分野で実績のある...

 「サプライチェーンマネジメント」(工業調査会)を私が出版したのは1998年ですが、それ以来日本国内のジャストインタイムやロジスティクスの分野で実績のある...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
公平公正なソーシング :購買業務の要点(その5)

  ◆ 公平公正なソーシング 候補会社選定から最終発注先の決定までの厳格なプロセスですが、RFP、RFQを通して発注先を決めることを「ソ...

  ◆ 公平公正なソーシング 候補会社選定から最終発注先の決定までの厳格なプロセスですが、RFP、RFQを通して発注先を決めることを「ソ...


損害賠償の範囲とは:物流契約の考え方(その3)

  ◆ 荷物の延着や損傷など、想定される事象は契約書に!  物流で扱う他人からの預かりものに対しては、十分に注意して取り扱うことが求めら...

  ◆ 荷物の延着や損傷など、想定される事象は契約書に!  物流で扱う他人からの預かりものに対しては、十分に注意して取り扱うことが求めら...


物流を考慮した生産場所を検討とは エンジニアリングとしての物流(その4)

◆ 製品設計と荷姿設計  今回は荷姿効率を向上させるための製品のあり方の検討の重要性について考えていきたいと思います。何度もお話をしていますが、物流...

◆ 製品設計と荷姿設計  今回は荷姿効率を向上させるための製品のあり方の検討の重要性について考えていきたいと思います。何度もお話をしていますが、物流...