「相手中心」で喜ばれる会話と怒りをよぶ会話の具体例

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人財教育

1. 押しつけは怒りを呼ぶ。だったら、相手に任せればいい?

 「A案とB案を比べるとA案が有利なのは明らかですから、A案を採用すべきです」

 「でも、B案がいいような・・・」

 「A案が有利なのは明白じゃないですか! A案を採用するべきですよ!」

 相手を思っての言葉ですが、お客様を怒らせやすい会話です。いくら内容が正しくても、決断の押し付けが入っていると相手は反発します。

 例えば、「将来のためを考えたら、勉強しないといけないの、分かるでしょ!勉強しなさい!」と子供に伝えると、子供が勉強しなくなってしまうのと同じです。

2. 決めるのは相手。でも、丸投げは怒りをよぶ

 だったら、「相手の自主的な判断に任せる」ことにすればいい?!

 これ自体は正しいのですが、「判断を委ねる」と「丸投げする」を混同すると、相手の怒りをよんでしまいます。

 例えば、「A案は納期が短いというメリットがあり、B案はコストが安いというメリットがあります。いずれでも好きな方を選んでください。」は丸投げです。

 伝えている情報は「一般論」であり、「相手への影響が具体的にどうなるのか、話している側は分かっていない」のです。もっと掘り下げると、話す側も意識していないことが多いのですが、「決めたのは相手の責任。自分の責任じゃない」という視点があるのです。この状態は、自分を守るための姿勢から生まれる「対立」の構図ですから、相手の怒りをよぶのです。

 この時、「それでは良く分からない」という相手の問いに「ケースバイケースですから一概に言えません」の回答をすると、もはやこの専門家に話をする意味がない、とさらに怒りをよんでしまいます。

3. 決めるのは相手。でも、判断の過程に寄り添うと喜ばれる

 「A案が良さそうって思うのですね?差し支えなければ、事情とかを具体的に教えて頂けますか?」「なるほど、発注はまだ入っていないのだけど、もし発注が入った時の機会を逃したくないのですね。そしたらお考えのようにA案がいいですね。」など、相手の判断の理由を分かったうえで、相手の判断を尊重すると状況は変わってきます。

 場合によっては「その理由でしたら、万一の資金のショートを考えて、保険だと思ってB案を採用しておくのもあると思いますが、A案でいいですか?」という確認もできます。「相手のベスト」が優先されていて、誰の責任であるとかの視点はありません。 

 会話は相手と利益やリスクを共有しており「ともに歩む(信頼関係が構築されているラポールがある状態)」の構図です。最終的に決定するのは相手ですが、内容のほぼ全ては相手と一緒に考えた結果です。

4. 丁寧に寄り添うと、結局速い!そのうえ満足と感謝がある!

 会話に必要な時間は、最初にご紹介した「A案を採用すべきです」の結論、提案の申し渡しが最も短いように思えます。でも、結果が正しくても相手が採用しない、採用しても不満な状態ならそのあとにクレームなどのトラブルが多いのです。

 一見、時間がかかるようでも、「なるほど、だからA案なんですね!」と相手に寄り添って契約に至ったケースが、手戻りを含めたトータルの時間を考えると速い。そのうえ、相手の満足度が高いと、合意の価値(金額)も高くなります。お互いがお互いを信頼し、楽しい気持ちで単価も高い。そういう関係が、最も望ましい状態の一つだと私は考えています。

5. よく見かける極端な反面教師

 ここで一つ、悪い例を共有します。寄り添うことの重要さが分かりやすい例です。

 提案の際に「良く分かっている私に従えば問題ない!」「あなたは決断できないから、いつまでもそんな状態なんだよ!」と高圧的に採用を迫る場合です。目の前で契約書にサインする数が増えるので、「速く進んでいる」と錯覚します。でも・・・「問い合わせ」「やっぱりやめておきます」「苦情」という手戻りのコストを払い続けることになり、トータルの時間で考えると「遅い、負担が大きい」ことになります。

 かつて私は甲乙の甲の立場で(あってはいけないことですが、強い立場です)、残業が多くて困っていました。そこで、決定の過程を関係者に丁寧に寄り添う姿勢で説明することにしたところ、手戻りがなくなり残業はなくなってしまいました。対立と寄り添いには大きな結果の違いがあるのです。

6. 理論は単純。鍵は自分自身の理解と変わる勇気

 ここで紹介した、子供に小言を言った、相手に「採用すべき」と提案した、「一概に言えません」と答えた、などの事例は、自分や周りの知り合いがすでに体験しているかも知れない、よくある事例です。

 改善するにはどうしたらいいのでしょうか?

 改善は、これ以上簡単なことがないくらい簡単なのですが、人によっては、これ以上難しいことがないくらい難しい。まず、多くの人が、自分が「対立をよぶ提案」をしていることに気が付いていないのです。そして、気が付いても具体的にどこの行動を直せばいいのか分...

 

人財教育

1. 押しつけは怒りを呼ぶ。だったら、相手に任せればいい?

 「A案とB案を比べるとA案が有利なのは明らかですから、A案を採用すべきです」

 「でも、B案がいいような・・・」

 「A案が有利なのは明白じゃないですか! A案を採用するべきですよ!」

 相手を思っての言葉ですが、お客様を怒らせやすい会話です。いくら内容が正しくても、決断の押し付けが入っていると相手は反発します。

 例えば、「将来のためを考えたら、勉強しないといけないの、分かるでしょ!勉強しなさい!」と子供に伝えると、子供が勉強しなくなってしまうのと同じです。

2. 決めるのは相手。でも、丸投げは怒りをよぶ

 だったら、「相手の自主的な判断に任せる」ことにすればいい?!

 これ自体は正しいのですが、「判断を委ねる」と「丸投げする」を混同すると、相手の怒りをよんでしまいます。

 例えば、「A案は納期が短いというメリットがあり、B案はコストが安いというメリットがあります。いずれでも好きな方を選んでください。」は丸投げです。

 伝えている情報は「一般論」であり、「相手への影響が具体的にどうなるのか、話している側は分かっていない」のです。もっと掘り下げると、話す側も意識していないことが多いのですが、「決めたのは相手の責任。自分の責任じゃない」という視点があるのです。この状態は、自分を守るための姿勢から生まれる「対立」の構図ですから、相手の怒りをよぶのです。

 この時、「それでは良く分からない」という相手の問いに「ケースバイケースですから一概に言えません」の回答をすると、もはやこの専門家に話をする意味がない、とさらに怒りをよんでしまいます。

3. 決めるのは相手。でも、判断の過程に寄り添うと喜ばれる

 「A案が良さそうって思うのですね?差し支えなければ、事情とかを具体的に教えて頂けますか?」「なるほど、発注はまだ入っていないのだけど、もし発注が入った時の機会を逃したくないのですね。そしたらお考えのようにA案がいいですね。」など、相手の判断の理由を分かったうえで、相手の判断を尊重すると状況は変わってきます。

 場合によっては「その理由でしたら、万一の資金のショートを考えて、保険だと思ってB案を採用しておくのもあると思いますが、A案でいいですか?」という確認もできます。「相手のベスト」が優先されていて、誰の責任であるとかの視点はありません。 

 会話は相手と利益やリスクを共有しており「ともに歩む(信頼関係が構築されているラポールがある状態)」の構図です。最終的に決定するのは相手ですが、内容のほぼ全ては相手と一緒に考えた結果です。

4. 丁寧に寄り添うと、結局速い!そのうえ満足と感謝がある!

 会話に必要な時間は、最初にご紹介した「A案を採用すべきです」の結論、提案の申し渡しが最も短いように思えます。でも、結果が正しくても相手が採用しない、採用しても不満な状態ならそのあとにクレームなどのトラブルが多いのです。

 一見、時間がかかるようでも、「なるほど、だからA案なんですね!」と相手に寄り添って契約に至ったケースが、手戻りを含めたトータルの時間を考えると速い。そのうえ、相手の満足度が高いと、合意の価値(金額)も高くなります。お互いがお互いを信頼し、楽しい気持ちで単価も高い。そういう関係が、最も望ましい状態の一つだと私は考えています。

5. よく見かける極端な反面教師

 ここで一つ、悪い例を共有します。寄り添うことの重要さが分かりやすい例です。

 提案の際に「良く分かっている私に従えば問題ない!」「あなたは決断できないから、いつまでもそんな状態なんだよ!」と高圧的に採用を迫る場合です。目の前で契約書にサインする数が増えるので、「速く進んでいる」と錯覚します。でも・・・「問い合わせ」「やっぱりやめておきます」「苦情」という手戻りのコストを払い続けることになり、トータルの時間で考えると「遅い、負担が大きい」ことになります。

 かつて私は甲乙の甲の立場で(あってはいけないことですが、強い立場です)、残業が多くて困っていました。そこで、決定の過程を関係者に丁寧に寄り添う姿勢で説明することにしたところ、手戻りがなくなり残業はなくなってしまいました。対立と寄り添いには大きな結果の違いがあるのです。

6. 理論は単純。鍵は自分自身の理解と変わる勇気

 ここで紹介した、子供に小言を言った、相手に「採用すべき」と提案した、「一概に言えません」と答えた、などの事例は、自分や周りの知り合いがすでに体験しているかも知れない、よくある事例です。

 改善するにはどうしたらいいのでしょうか?

 改善は、これ以上簡単なことがないくらい簡単なのですが、人によっては、これ以上難しいことがないくらい難しい。まず、多くの人が、自分が「対立をよぶ提案」をしていることに気が付いていないのです。そして、気が付いても具体的にどこの行動を直せばいいのか分からず、いつのまにかいつもと同じ行動をしています。

 いくら頭で理解しても、赤色を見たことがなければ「本当の赤色は分からない」のと同じです。そんな時は、説明ではなく、一度赤色を見れば分かるのです。既に実践済みの人から「行動」を教えてもらい、視点や考え方を身に着けるのが確実で速いのです。(ただし、実践できていても自覚がない人は教えることはできないので、先生には向いていません。)

 さて、先生が見つかったら、自分を変える勇気の出し方です。変えてしまえば「いったい何をためらっていたのだろう」と思いますが、変える前は強力な抵抗(現状への固執)が発生します。いい話はたくさんあるのに変化する人が極めて少ない理由です。

 では、どうすればいいか?

 いい先生(メンター)と出会えたときに、「教えてください!」とお願いしてスタートをきってしまうことが重要です。一度できてしまえば、あとは簡単に自分で実践できるようになるのですから。

【参考図書】 「最強のエンジニアになるための話し方の教科書」2019.1.19 アマゾン機械工学1位を5回獲得(2019.07.31)。

「最強のエンジニアになるためのプレゼンの教科書」2019年秋発売予定。

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この記事の著者

亀山 雅司

エンジニアの生産性を改善する専門家。 仕事の短時間化、鬱発症や離職率を低下させる話し方を世に広めるのが私のミッションです。

エンジニアの生産性を改善する専門家。 仕事の短時間化、鬱発症や離職率を低下させる話し方を世に広めるのが私のミッションです。


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