物流が社内認知されるために

1. 被害者意識が強すぎる物流

 今まで何度となくお話してきましたが、社内で物流の認知度が低い、上位者の関心が薄い、だから物流部門はつらい思いをしているという件、実は物流担当者は自分事として改善が必要と思われます。この事実は間違いないことです。会社内に限らず、社会の中でも物流に対する関心は低く、物流が確固たる地位を築けているかというとそうでもない。ではその原因はどこにあるのか。その真の要因を改善しない限り、今の状況が変わることはありません。真の要因を掴むために何をしたらよいのか。
 
 はい、それは簡単なことです。物流担当者が自分たちの仕事の仕方を振り返ってみることが一番です。筆者はよくセミナーでこのような質問をさせていただくことが多いです。
 
 「物流現場の作業は標準化されていますか?」この質問に対して大半の出席者が「いいえ」と答えます。次に以下のような質問をさせていただきます。
 
 「では製造現場ではどうでしょうか?」これに対してはほぼ全員が「はい」と答えます。
 
 「なぜ製造現場でできるのに物流現場では実施しないのですか?」これが最後の質問となるわけですが、明確な回答ができる人は少数派です。もしかしたら物流作業は標準化できないものとの思い込みがあるのかもしれません。標準化のノウハウを知らないだけかもしれません。しかしこの事実だけでも物流は明らかに出遅れているし、他部署より残念ながら「劣っている」と言わざるを得ないのです。ましてや標準時間の導入や、KPI管理などと言ったらお手上げ状態となります。これが物流現場や物流管理者の実態なのです。
 
 いかがでしょうか。物流に注目してくれない、関心を寄せてくれないなどといった愚痴が出てきそうですが、その要因は自分たちにあることを見過ごしているのではないでしょうか。筆者もかつてこのような思いを持っていました。しかし周りは物流だけが特別だとは1ミリも考えていないのです。
 
 被害者意識が強すぎる物流はもっと他の業界や他の部門を見る必要がありそうです。そして他に比べて自分たちが劣っている部分があれば、それをまずは解消することです。これ抜きにして、物流の地位向上などあり得ないのです。
 
  
SCM
 

2. 物流作業の標準化

 物流現場では基本的なことを最優先で行わなければなりません。それが物流作業の標準化です。物流現場でよく言われることとして、あの人は作業が速い、でもあの人は遅いといったことが挙げられます。実は人間の行う作業スピードに大きな差はないのです。ではなぜスピードが違って見えるのかというと、それは「作業手順」が違うのです。要領の差もあるかもしれません。だから作業を上手にやれば速く処理でき、そうでなければ遅くなります。ただそれだけのことです。
 
 もっと別の見方をしてみましょう。物流現場では多くのケースで作業のやり方だけでなく、作業のペースも作業者任せになっています。ということは裏を返せば作業者が自由に作業できるということです。これは製造現場ではありえないことですが、物流現場ではそれが当たり前のようになっています。物流作業者の中には「追われるように仕事をする」ことを嫌がる人がいます。別に追い立てているわけではないのですが、そのように感じてしまうようです。
 
 つまり普段は作業者任せの自由な作業において、ある時急ぎとなった場合、追い立てられるように感じてしまうのです。しかも製造作業に比べると物流作業のスピードは著しくゆっくりとしています。これが製造視線から見ると不公平だと感じられるのです。同じ会社の中で、同じ給料をもらっていて片や作業についてコントロールされており、もう一方は作業者任せでは不満の声が出るのは当然でしょう。
 
 このように物流はいくつかの点において改善しなければならないことが実際にあるわけです。ですから、最低でもこの状態を修正しない限り、物流の立場はなかなか認めてもらえないのです。最初に「物流作業の標準化」です。それから物流現場の管理をしっかりと構築することです。KPIを定めて日々目標と実績の管理を実施していくのです。
 
 これを実行するためにはそれなりのノウハウが必要になります。これを身につけるために物流現場の監督者は研修を受講するなど、勉強していかなければなりません。ただ、標準化等はすぐに実施しなければなりません。勉強の時間がかかっていては遅すぎるのであれば、一時的に標準化や現場管理の知識を持った人を物流に入れることを考えてもよいと思います。周りと同じレベルに立つことが最優先です。これさえできない様であれば愚痴をこぼす権利すらないと考えましょう。
 

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3. 物流でコストをかけて他で儲ける

 物流が社内で認知されるようになるためには、それなりの仕事をしなければなりません。社内の標準以上の仕事をしなければなかなか認められることは難しいでしょう。ではどのような仕事をしていったらよいのでしょうか。それは自身の領域から一歩踏み出すことです。物流の仕事の前後には物流部門が実施すると効率化される仕事があります。たとえば資材や部品の発注業務です。よく発注業務は購買部門が行っているケースが多いようです。その弊害として在庫が多すぎたり少なすぎたりすることがあります。
 
 現場を見ずにデータだけで発注することによる弊害です。発注業務は物流現場に行わせることで、在庫の適正化が図られます。メーカーの工場では生産管理を物流が行うケースがあります。物流は生産工程に部品や資材を届けます。この業務をタイムリーかつ適正量を届けることを通して、生産工程の秩序ある運営をサポートできるのです。
 
 この「生産管理」は物流としては大きなバリューです。一般的に物流は運搬担当ととらえられがちですが、このような「管理業務」を実施することで物流は認められます。認められるどころか大いに重宝がられることでしょう。これが重要なのです。もう一度繰り返しますが、物流を認めてもらうためには私たちの仕事の仕方を変える必要があるのです。
 
 ただ言われたことをやっているだけではダメです。周りの仕事を効率化するためにはどのような物流サービスを提供したらよいかを考えることです。今の物流サービス水準を低下させるようなことを考えるのではなく、レベルアップすることで、周りをサポートするのです。
 
 よく勘違いされることとして、物流はコストだから常に下げることを考えなければならない、という発想があります。しかし物流で少しコストをかけてでも他が大きく儲かるという事例はいくらでもあります。「物流=コスト=悪」という短絡的な発想は危険なのです。私たちはどのような仕事の仕方に変えていくべきか、それでどれくらい追加コストが発生するのか、そして他がそれによってどれだけ儲かるのかを考えましょう。このような発想で仕事に取り組んで行くことで、結果的に物流は喜ばれ、感謝される方向に向くと思われます。ですから、少し視点を変え、常に努力していくことを心がけましょう。
  

この記事の著者

仙石 恵一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参きました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参きました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...

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