ほんまもんの技術者とは (その3)

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5.システムの創造ができるπ型技術者であれ 

事業戦略によるテーマを満足するシステムを創造することが技術者の第一の仕事ですが,最近企業を訪れて管理者の方に話を聞きますと,システムの創造ができない技術者が多いということです。

今までの教育である,1+2=3という決められた一つの答えを出せば合格するという受験体制を経てきた技術者には,物まねでシステムを造り,決められた規格に合格しておれば良品と考えるのも無理がないことです。彼らにとっては,たくさんのシステムの中から,機能を満足する最適なシステムを考案することは難しい作業です。

企業では,□+○=3になるような□や○の答えを早く出すことが要求されています。しかし,理論で説明できる範囲は限られていますから,その中に答えがないと諦めてしまう技術者が多いのです。

品質工学ではシステムを創造することは出来ませんが,考案されたシステムの評価は品質工学の役割ですから,パラメータ設計で沢山のシステムを評価して最適な答えを出すことが必要です。

前回上げた次世代光磁気ディスク(LIMDOW)は,科学的に証明が出来ない領域まで広げてパラメータ設計を行い画期的なシステムを創造したのです。

しかし,この場合でも,科学的な見地に立って「機能」について現象解明ができることが前提です。システムを創造するのは個人技能(Artificial)や固有技術(Technology)であって,システムを評価する機能性の評価によるロバスト設計で「技術の確実性(Engineering)」を証明しなければ開発は成功しないのです。

自分の専門分野はもとより,関連する技術については幅広い知識や見識があって,目的機能を満足するシステムの選択が豊富で沢山のアイディアを創出できることが必要条件の一つです。このためには「経験とセンス」を磨くことが大切です。

「専門技術」と「品質工学」による評価技術は車の両輪であって,どちらが欠けても開発は成功しないのです。

6.ノイズに強い技術者であれ

ものづくりでシステムを創造するのは,人工的な「技術の世界」の話ですが,科学的な思考にこだわる技術者は,標準条件だけでシステム設計(機能設計)を行って,信頼性試験や寿命試験を連発して「もぐら叩き」で問題を潰す作業を繰り返します。

また,このような技術者は,統計的なばらつきである「不良率」が市場のばらつきだと勘違いしているため,n個の同じ試作品を使って,沢山な試験で規格に対する合否の判断をしていますが,実際は規格に合格した良品の品質レベルが市場のクレームに関係します。すなわち,市場クレームを100%とすると「製造品質」は6%に過ぎず,94%は「設計品質」が殆どなのです。(安全率が4の場合)製造品質...

5.システムの創造ができるπ型技術者であれ 

事業戦略によるテーマを満足するシステムを創造することが技術者の第一の仕事ですが,最近企業を訪れて管理者の方に話を聞きますと,システムの創造ができない技術者が多いということです。

今までの教育である,1+2=3という決められた一つの答えを出せば合格するという受験体制を経てきた技術者には,物まねでシステムを造り,決められた規格に合格しておれば良品と考えるのも無理がないことです。彼らにとっては,たくさんのシステムの中から,機能を満足する最適なシステムを考案することは難しい作業です。

企業では,□+○=3になるような□や○の答えを早く出すことが要求されています。しかし,理論で説明できる範囲は限られていますから,その中に答えがないと諦めてしまう技術者が多いのです。

品質工学ではシステムを創造することは出来ませんが,考案されたシステムの評価は品質工学の役割ですから,パラメータ設計で沢山のシステムを評価して最適な答えを出すことが必要です。

前回上げた次世代光磁気ディスク(LIMDOW)は,科学的に証明が出来ない領域まで広げてパラメータ設計を行い画期的なシステムを創造したのです。

しかし,この場合でも,科学的な見地に立って「機能」について現象解明ができることが前提です。システムを創造するのは個人技能(Artificial)や固有技術(Technology)であって,システムを評価する機能性の評価によるロバスト設計で「技術の確実性(Engineering)」を証明しなければ開発は成功しないのです。

自分の専門分野はもとより,関連する技術については幅広い知識や見識があって,目的機能を満足するシステムの選択が豊富で沢山のアイディアを創出できることが必要条件の一つです。このためには「経験とセンス」を磨くことが大切です。

「専門技術」と「品質工学」による評価技術は車の両輪であって,どちらが欠けても開発は成功しないのです。

6.ノイズに強い技術者であれ

ものづくりでシステムを創造するのは,人工的な「技術の世界」の話ですが,科学的な思考にこだわる技術者は,標準条件だけでシステム設計(機能設計)を行って,信頼性試験や寿命試験を連発して「もぐら叩き」で問題を潰す作業を繰り返します。

また,このような技術者は,統計的なばらつきである「不良率」が市場のばらつきだと勘違いしているため,n個の同じ試作品を使って,沢山な試験で規格に対する合否の判断をしていますが,実際は規格に合格した良品の品質レベルが市場のクレームに関係します。すなわち,市場クレームを100%とすると「製造品質」は6%に過ぎず,94%は「設計品質」が殆どなのです。(安全率が4の場合)製造品質はn個のばらつきで表しますが,設計品質は環境条件や劣化などの市場のばらつきで表し,クレームの原因になるものです。

また,一方では,信頼性を評価するのにMTBF(故障率の逆数)などで結果の評価をしていますが,不良率や故障率などの結果の評価尺度を調べても手遅れです。

従来は寿命劣化を特性の一つに考えていますが,これは使用温度と同じようにノイズの一つと考えて機能性の評価を行うことが大切なのです。

受動的な自然環境や劣化のノイズだけでなく,能動的な偽貨幣やウイルスのような人工的なノイズ対策を考えるのも技術者の役割です。

(つづく)

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

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この記事の著者

原 和彦

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