新人設計者が最初に卒業すべき “但し書き図面” の罠

投稿日

新人設計者が最初に卒業すべき “但し書き図面” の罠

【目次】

    1.はじめに

    図面を描き始めた頃、こんな一文を書いたことはありませんか?

    • 「※ただし、現場合わせとする」
    • 「※詳細は加工者判断」
    • 「※干渉する場合は調整すること」


    一見すると、柔軟で親切な指示に見えるかもしれません。ですが結論から言います。


    その図面、設計としては未完成です。


    そしてもう一歩踏み込んで言えば、それはトラブルの“予告書”になっている可能性すらあります。この記事では、「なぜ但し書きが危険なのか」と「どうすれば卒業できるのか」を、実務目線で解説します。

     

    2.但し書きとは何か?

    但し書きとは、本来図面で明確に定義すべき内容を、例外や補足として記載したものです。つまり、設計で決めるべきことを決めていない状態とも言えます。


    設計とは「条件を決める仕事」です。ここが曖昧になった瞬間、図面は“指示書”としての役割を失います。

     

    3.なぜ但し書きは危険なのか

     

    ① 解釈が人によって変わる

    「現場合わせ」と言われたとき、全員が同じ判断をするでしょうか。

    • 加工者は加工のしやすさを優先するかもしれません。
    • 組立担当は組みやすさを優先するかもしれません。
    • 品質担当は精度を重視するかもしれません。


    結果として、判断はバラバラになります。

     

    ② 責任の所在が曖昧になる

    問題が起きたとき、こうしたやり取りが起こります。

    • 設計...

    新人設計者が最初に卒業すべき “但し書き図面” の罠

    【目次】

      1.はじめに

      図面を描き始めた頃、こんな一文を書いたことはありませんか?

      • 「※ただし、現場合わせとする」
      • 「※詳細は加工者判断」
      • 「※干渉する場合は調整すること」


      一見すると、柔軟で親切な指示に見えるかもしれません。ですが結論から言います。


      その図面、設計としては未完成です。


      そしてもう一歩踏み込んで言えば、それはトラブルの“予告書”になっている可能性すらあります。この記事では、「なぜ但し書きが危険なのか」と「どうすれば卒業できるのか」を、実務目線で解説します。

       

      2.但し書きとは何か?

      但し書きとは、本来図面で明確に定義すべき内容を、例外や補足として記載したものです。つまり、設計で決めるべきことを決めていない状態とも言えます。


      設計とは「条件を決める仕事」です。ここが曖昧になった瞬間、図面は“指示書”としての役割を失います。

       

      3.なぜ但し書きは危険なのか

       

      ① 解釈が人によって変わる

      「現場合わせ」と言われたとき、全員が同じ判断をするでしょうか。

      • 加工者は加工のしやすさを優先するかもしれません。
      • 組立担当は組みやすさを優先するかもしれません。
      • 品質担当は精度を重視するかもしれません。


      結果として、判断はバラバラになります。

       

      ② 責任の所在が曖昧になる

      問題が起きたとき、こうしたやり取りが起こります。

      • 設計「現場合わせと書いてあります」
      • 現場「図面通りに作りました」


      この時点で、責任の所在はぼやけます。議論は解決ではなく、押し付け合いに変わります。

       

      ③ 品質が安定しない

      同じ図面であっても、毎回違う製品が出来上がる。これは設計として致命的です。再現性がないということは、設計として成立していないことを意味します。

       

      4.よくある“危険な但し書き”

      新人がやりがちな代表例を挙げます。

      • 「現場合わせとする」
      • 「適宜調整」
      • 「干渉時は逃がすこと」
      • 「詳細未定」
      • 「加工可能な範囲で」


      これらに共通しているのは、判断を他人に委ねている点です。設計者が決めるべきことを、現場に渡してしまっている状態です。

       

      5.私の失敗例(実体験)

      私自身も、かつて同じことをしていました。ある治具設計で、次のような指示を書いたことがあります。


      「※干渉する場合は現場にて削って調整すること」


      結果はどうなったか。現場で想定以上に削られ、剛性が低下。その影響で振動が発生し、製品不良につながりました。最終的には、全数作り直しです。そのとき現場から言われた一言が、今でも強く印象に残っています。


      「これ、設計で決めることですよね?」


      まさにその通りでした。

       

      6.ではどうすればいいのか(改善の考え方)

       

      但し書きをなくすためにやるべきことはシンプルです。


      設計で決めるべきことを、すべて決めること。


      ただし、それを実現するにはいくつかのポイントがあります。

       

      改善 ①:基準を明確にする

      • どこを基準面とするのか。
      • どこから寸法を取るのか。


      判断の軸を与えることで、解釈のブレを防ぐことができます。

       

      改善 ②:数値で指示する

      「適宜調整」といった言葉ではなく、具体的な数値で示します。


      たとえば「クリアランス0.5mm確保」といった形です。


      言葉ではなく数値で伝えることが重要です。

       

      改善 ③:想定を潰す

      • 干渉は起きないか。
      • 加工は可能か。
      • 組立は成立するか。


      頭の中で現場を再現しながら検証することで、曖昧さを事前に排除できます。

       

      7.すぐ使えるチェックリスト

       

      図面を出す前に、次の点を確認してください。

      • 「現場合わせ」と書いていないか
      • 判断が人に依存していないか
      • 寸法がすべて定義されているか
      • 基準が明確か
      • 加工や組立のイメージができるか


      ひとつでも不安が残る場合、設計はまだ途中です。

       

      8.まとめ

      但し書きは一見便利です。しかしそれは、設計が曖昧なまま残っているサインでもあります。設計者の役割は、曖昧さをなくすことです。最初は難しく感じるかもしれません。ですが但し書きを一つずつ減らしていくことで、設計の精度は確実に上がります。


      そして気づいたときには、現場から信頼される設計者へと成長しています。

       

      本記事を執筆した専門家「森内 眞」が講師のセミナー 一覧

       【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

       

         続きを読むには・・・


      この記事の著者

      森内 眞

      ものづくりにおいて解決できない課題はありません。真摯に課題に取り組むことで必ず解決の糸口は見えてきます。 技術士としての専門知識、技術、経験、独自のネットワークを用いてお客様の課題解決に貢献いたします。

      ものづくりにおいて解決できない課題はありません。真摯に課題に取り組むことで必ず解決の糸口は見えてきます。 技術士としての専門知識、技術、経験、独自のネット...


      「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

      もっと見る
      プロフェッショナルな技術者とは【連載記事紹介】セミナーのご紹介 

          プロフェッショナルな技術者の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆スーパーマンではなくプロフェッシ...

          プロフェッショナルな技術者の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆スーパーマンではなくプロフェッシ...


      ワイガヤとは?イノベーションを生むためのテーマの設定方法や議論の内容について解説

      【目次】   1. ワイガヤとは  ホンダの「ワイガヤ」について、ホンダOBは、「イノベーションを加速する仕掛けの一つであ...

      【目次】   1. ワイガヤとは  ホンダの「ワイガヤ」について、ホンダOBは、「イノベーションを加速する仕掛けの一つであ...


      整理の為に考える要素、その中の物理量の選択 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その70)

       前回のその69に続いて解説します。  現在、収集した知識・経験をイノベーションに向けて整理するフレームワークを解説していますが、今回も前回に引き続...

       前回のその69に続いて解説します。  現在、収集した知識・経験をイノベーションに向けて整理するフレームワークを解説していますが、今回も前回に引き続...


      「技術マネジメント総合」の活用事例

      もっと見る
      プロジェクトの計画策定 プロジェクト管理の仕組み (その3)

       前回のその2:CMMIの要件管理に続いて、プロジェクトの計画策定について解説します。CMMIでは次のことができている必要があります。   ...

       前回のその2:CMMIの要件管理に続いて、プロジェクトの計画策定について解説します。CMMIでは次のことができている必要があります。   ...


      テンプレート方式・データベース方式の図面管理とは

           今回は、金型メーカー・機械装置製造メーカーなど、社内で継続的に図面を更新していく場合の管理方法について解説します...

           今回は、金型メーカー・機械装置製造メーカーなど、社内で継続的に図面を更新していく場合の管理方法について解説します...


      プロジェクトの問題を見極める1 プロジェクト管理の仕組み (その23)

       進捗管理のための基本メトリクスセットのひとつである開発工数メトリクスについて解説していますが、前回は、プロジェクト構造(WBS)軸とアクティビティ軸のそ...

       進捗管理のための基本メトリクスセットのひとつである開発工数メトリクスについて解説していますが、前回は、プロジェクト構造(WBS)軸とアクティビティ軸のそ...