排除する クリーンルームの4原則 (その4)

更新日

投稿日

 前回は、クリーンルームの4原則―その3.堆積させないを解説しました。今回は、クリーンルーム4原則として、最後の“排除”するについて説明します。

 “排除する”は、基本的には掃除や除塵マット(クリーンマット)にゴミを付着させて、クリーンルームから排出することです。

 

1.定期的に清掃する

 清掃は思いついた時や時間があいた時にやるのではなく、定期的に実施します。エリアごとに担当者を決めて清掃する場合は、同じ時間に清掃するようにしたいものです。時間がまちまちの場合、隣のエリアにゴミが移動したりするので、境界部分が中々綺麗になりません。あるいはトラブルの原因にすらなります。

 

2.掃除方法を工夫する

 作業台や、棚などの清掃方法は、“上から下へ、奥から手前へ”が基本です。床清掃は、出来ればセントラルクリーナーを設置し、集塵するようにしましょう。セントラルクリーナーが用意出来ない場合は、クリーンルーム用の掃除機もありますので、清浄度の低いクリーンルームなどでは使用しているところも多いです。たとえクリーンルーム用を選択しても、排出パーティクルの評価とや、フィルターの管理をきちんとする必要があります。クリーンルーム用なのに、異常に吹き出していたと言う話も聞きます。一般の掃除機では、フィルターの目が粗いため、排出時、埃が吹き出すので要注意です。

 それらが準備出来ない場合はモップでの清掃になりますが、ゴミが移動するだけですので、最終的には集まったゴミは、コロコロなどを使って確実に除去します。

 

3.除塵マットの剥がし方

 除塵マットは、表面に粘着物が塗布されています。ここにゴミ、埃、靴底の汚れや台車の車輪の汚れを付着させて、室外に持ち出します。このマットは20枚から60枚位重ねられていて、この重ねのことを積層と言います。表面が汚れて来たら剥いで室外へ排出します。

 マットの表面の粘着物に、ゴミや埃が捕まえられていると思いがちですが、このマットを剥がす時に静電気が発生し、その反発で表面に付着しているゴミ、埃が剥がれて浮遊してしまいます。特に激しく剥いだ場合、3Vから5Vの静電気が発生したとの報告もあり、それによって沢山のゴミ、埃が飛び散ります。この飛び散る様子は、可視化した映像を見るとその凄さが確認できます。従って、その影響を可能な限り小さくするために、ゆっくり剥ぐ、丸めるように、畳むようにと言った細かな配慮が大切です。

 

4.局所排気設備を活用する

 ゴミが発生し易いところや、作業中に浮遊パーティクルが気になるところでは、局所排気設備の設置が望まれます。それらの汚れた雰囲気を吸って、配管を経由し屋外へ放出する考え方です。この排気設備が、きちんと吸引している確認が必要です。もし吸引していない場合は、室内に吹き出していると言うことになります。吸い込み口に糸、あるいは幅のあるプラスチックの紐などを取り付け、気流の流れを可視化し、異常は迅速に発見、対応することが大切です。

 ハンダ付け作業では、白い煙のようなものが出ますが、これは、ハンダのミストです。パーティクルカウンターで測定してみると、数十万個のミストがカウントされます。排気設備が整っていないと、作業者が吸い込んでしまいます。長年同じ作業を繰り返しやっていると、石綿の労働災害と同じようなことが起きるかも知れません。

 

5.不要品は、CR外へ排除する

 ものづくりの現場で必要のないものが持ち込まれていると、清掃の障害になるだけでなく、やがて清掃しなくなり、ゴミ、埃の溜まり場になります。またこの障害物により気流が乱れ、思わぬ方向にゴミ、埃が流されると言うこともおこりま...

 前回は、クリーンルームの4原則―その3.堆積させないを解説しました。今回は、クリーンルーム4原則として、最後の“排除”するについて説明します。

 “排除する”は、基本的には掃除や除塵マット(クリーンマット)にゴミを付着させて、クリーンルームから排出することです。

 

1.定期的に清掃する

 清掃は思いついた時や時間があいた時にやるのではなく、定期的に実施します。エリアごとに担当者を決めて清掃する場合は、同じ時間に清掃するようにしたいものです。時間がまちまちの場合、隣のエリアにゴミが移動したりするので、境界部分が中々綺麗になりません。あるいはトラブルの原因にすらなります。

 

2.掃除方法を工夫する

 作業台や、棚などの清掃方法は、“上から下へ、奥から手前へ”が基本です。床清掃は、出来ればセントラルクリーナーを設置し、集塵するようにしましょう。セントラルクリーナーが用意出来ない場合は、クリーンルーム用の掃除機もありますので、清浄度の低いクリーンルームなどでは使用しているところも多いです。たとえクリーンルーム用を選択しても、排出パーティクルの評価とや、フィルターの管理をきちんとする必要があります。クリーンルーム用なのに、異常に吹き出していたと言う話も聞きます。一般の掃除機では、フィルターの目が粗いため、排出時、埃が吹き出すので要注意です。

 それらが準備出来ない場合はモップでの清掃になりますが、ゴミが移動するだけですので、最終的には集まったゴミは、コロコロなどを使って確実に除去します。

 

3.除塵マットの剥がし方

 除塵マットは、表面に粘着物が塗布されています。ここにゴミ、埃、靴底の汚れや台車の車輪の汚れを付着させて、室外に持ち出します。このマットは20枚から60枚位重ねられていて、この重ねのことを積層と言います。表面が汚れて来たら剥いで室外へ排出します。

 マットの表面の粘着物に、ゴミや埃が捕まえられていると思いがちですが、このマットを剥がす時に静電気が発生し、その反発で表面に付着しているゴミ、埃が剥がれて浮遊してしまいます。特に激しく剥いだ場合、3Vから5Vの静電気が発生したとの報告もあり、それによって沢山のゴミ、埃が飛び散ります。この飛び散る様子は、可視化した映像を見るとその凄さが確認できます。従って、その影響を可能な限り小さくするために、ゆっくり剥ぐ、丸めるように、畳むようにと言った細かな配慮が大切です。

 

4.局所排気設備を活用する

 ゴミが発生し易いところや、作業中に浮遊パーティクルが気になるところでは、局所排気設備の設置が望まれます。それらの汚れた雰囲気を吸って、配管を経由し屋外へ放出する考え方です。この排気設備が、きちんと吸引している確認が必要です。もし吸引していない場合は、室内に吹き出していると言うことになります。吸い込み口に糸、あるいは幅のあるプラスチックの紐などを取り付け、気流の流れを可視化し、異常は迅速に発見、対応することが大切です。

 ハンダ付け作業では、白い煙のようなものが出ますが、これは、ハンダのミストです。パーティクルカウンターで測定してみると、数十万個のミストがカウントされます。排気設備が整っていないと、作業者が吸い込んでしまいます。長年同じ作業を繰り返しやっていると、石綿の労働災害と同じようなことが起きるかも知れません。

 

5.不要品は、CR外へ排除する

 ものづくりの現場で必要のないものが持ち込まれていると、清掃の障害になるだけでなく、やがて清掃しなくなり、ゴミ、埃の溜まり場になります。またこの障害物により気流が乱れ、思わぬ方向にゴミ、埃が流されると言うこともおこります。こうなると、気流の変化も絶えず意識していないといけません。不要な物は、クリーンルームの外に出し、作業エリアをすっきりさせましょう。

 

 ここまで、クリーン化の4原則について、簡単に整理、説明しました。これらは、現場を見ながら、具体的にルールや標準に落とし込み、作業員に周知徹底をすることが大切です。 

 客先の監査やクリーン化現場診断、指導、パトロールの時も、このクリーンルームの4原則が着眼点の中心になり、監査を受ける方も、現場を管理する方も、この4原則を中心に議論することが多いでしょう。自分たちが気づかなかったことでも、監査者の指摘があれば、品質、安全等を向上させる機会、アドバイスと捉え、標準、ルールを見直して、追加、修正していって下さい。

◆関連解説『環境マネジメント』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め...


「クリーン化技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
クリーン化教育を通じた人財育成(その1)

 クリーン化教育で長く現場を歩き、また社外での経験、体験が入り混じった私の人材育成に関する考えを今回はお話します。   1.知識教育と体験学...

 クリーン化教育で長く現場を歩き、また社外での経験、体験が入り混じった私の人材育成に関する考えを今回はお話します。   1.知識教育と体験学...


日本のものづくり企業の姿、現場と遊離

 私は長年にわたり、国内、海外のものづくり現場でクリーン化を指導して来ました。そしてその多くの企業から、繰り返し呼んでいただきました。そういうところでは、...

 私は長年にわたり、国内、海外のものづくり現場でクリーン化を指導して来ました。そしてその多くの企業から、繰り返し呼んでいただきました。そういうところでは、...


クリーンルームのダンパーを管理する、外で推測、中で確認!

1.クリーンルームのダンパーの役目  クリーンルームの壁には、ダンパーが設置されているところが多いと思います。クリーンルームは、ゴミ、埃が大敵ですので、...

1.クリーンルームのダンパーの役目  クリーンルームの壁には、ダンパーが設置されているところが多いと思います。クリーンルームは、ゴミ、埃が大敵ですので、...


「クリーン化技術」の活用事例

もっと見る
事例紹介、東南アジアでの資材購入

 東南アジアの工場での資材購入について説明します。国内空洞化と言われ、東南アジアに進出する企業も多いですが、現地に工場を構えると、資材も現地調達しなければ...

 東南アジアの工場での資材購入について説明します。国内空洞化と言われ、東南アジアに進出する企業も多いですが、現地に工場を構えると、資材も現地調達しなければ...


クリーン化:別居型下駄箱

 今回は、クリーンルームの4原則のうち、最初の“持ち込まない”について、『別居型下駄箱』を例に解説します。    クリーンルーム内に発塵するようなもの...

 今回は、クリーンルームの4原則のうち、最初の“持ち込まない”について、『別居型下駄箱』を例に解説します。    クリーンルーム内に発塵するようなもの...


クリーン化:呼気からの吹き出し異物について

1. 呼気からの吹き出し異物の問題  清浄度があまり高くないクリーンルームでは、防塵衣は着用していてもマスクを着用せず作業しているところも多いようで...

1. 呼気からの吹き出し異物の問題  清浄度があまり高くないクリーンルームでは、防塵衣は着用していてもマスクを着用せず作業しているところも多いようで...