失敗しない、ロボット導入の第一歩(その2)

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ロボット

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第2回 ロボットシステム構築の大まかな流れ

 

1.はじめに

ロボットシステムを導入しようと思っても、はじめて検討する場合は、どのように導入を進めていけば良いかわかりません。そこで、今回はロボットシステム構築の流れについて説明します。

【この連載の前回:第1回 自社の作業工程に適したロボットの選び方へのリンク】 

 

2.事前検討

ロボットの最新情報や業界の導入事例を参考にしつつ、自社での導入のイメージをつかみます。人手不足の解消、稼働率の向上など、目的を明確にして、予算と導入時期を設定します。ロボットシステム一式の費用は安くはないものの、生産性向上の効果を勘案すると、投資にかかった費用は比較的早期に回収できると見込む企業も少なくありません。3年で回収を見込んだ事例もあります。

 

次にどの工程でロボットを活用するか考えます。業種や生産品目によって、ロボットの活用可能な場面はそれぞれ異なります。現状の作業工程において、課題になっていることは何かを現場社員が具体的に指摘し、ロボット導入による解決の可能性について検討します。

 

ロボット導入は、多面的に捉える必要があります。そのためには、社内で導入効果を理解・共有し、効果を得るための検討チームを立ち上げます。

 

ロボット

図1 ロボットシステム構築の流れ(1)
出典:経済産業省「ロボット活用の基礎知識」

 

3.企画構想

対象ワーク、生産数量、タクトタイム、品種替えの頻度などを書き出して整理します。設置スペース、動作環境、ユーティリティ、安全などの制約条件も書き出して整理します。ロボットを配置し、前後の設備を配置し直した上で、必要な機器の選定を行い、レイアウトをより具体的に肉付けします。

 

レイアウト図に基づいて、ロボット導入費用を算出します。別途、システムインテグレーション(SI)費用が必要となります。ロボットは本体だけでなく、関連装置等と一緒にシステムに組み込まれて、初めて機能します。そのため、ロボットシステムの構築には機械装置だけでなく、システムの設計やロボットの動作教示(ティーチング)など、システムインテグレーション作業が不可欠で、この費用が大きいです。

 

保守安全管理を行う運用担当の候補者を選びます。ワークの変更や新たなティーチングが発生した場合、ロボット操作などの設定変更まで、社内で対応できるのが理想です。基本操作や日常点検だけでなく、運用時には「ティーチング」も重要です。以前は、ティーチングは専門家がするものでした。しかし最近では、専門家でなくてもティーチングができる機能が登場しています。たとえば、アームを手で持って動かすことで動作を覚えさせるダイレクトティーチング機能、感覚的にプログラミングできるビジュアル化された入力用インターフェイス、動きの始点と終点を入力するだけのティーチレス機能など、動作の入力を容易にする様々な方法が開発されています。

 

ロボットの仕事を大幅に変える時は、ティーチングをロボットSIer(システムインテグレーター)に依頼しますが、ワークが少し変わった程度の再ティーチングは、自社でできる方が良いです。意欲のある若手社員などを担当者に据え、講習会で勉強させることにより、リスクは大幅に減らせます。

 

4.仕様定義

提案依頼書(RFP)案を作成します。関連部署との情報共有を進めながらブラッシュアップして、RFPの合意形成を図ります。

 

ロボットSIer・ロボットメーカーから複数の候補を選定します。中でも、ロボットメーカーと導入企業をつなぐ役割を担っているロボットSIerとの連携が重要です。ロボットを初めて導入する企業にとっては、ロボットSIerとの間に密接な関係を構築できるかが、導入の成否に大きくかかわります。

 

経営者はロボット導入の費用対効果を検討した上で、RFPを承認します。ロボットSIer・ロボットメーカーなどへRFPを提示します。その際、不明点をなくすようにします。作業工程に並行して、工場全体のレイアウトや動線、ロボット導入の可能なスペースなどについて検討します。特に、ロボットを設置する現場の環境条件やレイアウト上の制約条件は、事前に調査しておく必要があります。

 

多くの場合、既存のラインを活用しながらロボットを導入しますが、新規にラインを創設する場合でも、既存のシステムや使用しているソフトウェアを活用するかなど、幅広い観点から検討が必要です。

 

ロボット導入には、社内人材の育成も重要です。メンテナンスをロボットSIerやロボットメーカーに依頼しても、日常操作やティーチングは社内で担当する必要があります。また、経営者は、ティーチングや作業に労働者を就かせるときは、その全員に「労働安全衛生規則第36条」に基づく安全教育、ならびに「労働安全衛生規則第59条」に基づく特別教育が義務づけられています。

 

費用、スケジュール、既存設備との関係、人材配置など、ロボットの導入は経営のあらゆる側面に影響を与えます。そこで、経営者は社内検討チームやロボットSIerなどから情報収集して決断します。...

ロボット

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第2回 ロボットシステム構築の大まかな流れ

 

1.はじめに

ロボットシステムを導入しようと思っても、はじめて検討する場合は、どのように導入を進めていけば良いかわかりません。そこで、今回はロボットシステム構築の流れについて説明します。

【この連載の前回:第1回 自社の作業工程に適したロボットの選び方へのリンク】 

 

2.事前検討

ロボットの最新情報や業界の導入事例を参考にしつつ、自社での導入のイメージをつかみます。人手不足の解消、稼働率の向上など、目的を明確にして、予算と導入時期を設定します。ロボットシステム一式の費用は安くはないものの、生産性向上の効果を勘案すると、投資にかかった費用は比較的早期に回収できると見込む企業も少なくありません。3年で回収を見込んだ事例もあります。

 

次にどの工程でロボットを活用するか考えます。業種や生産品目によって、ロボットの活用可能な場面はそれぞれ異なります。現状の作業工程において、課題になっていることは何かを現場社員が具体的に指摘し、ロボット導入による解決の可能性について検討します。

 

ロボット導入は、多面的に捉える必要があります。そのためには、社内で導入効果を理解・共有し、効果を得るための検討チームを立ち上げます。

 

ロボット

図1 ロボットシステム構築の流れ(1)
出典:経済産業省「ロボット活用の基礎知識」

 

3.企画構想

対象ワーク、生産数量、タクトタイム、品種替えの頻度などを書き出して整理します。設置スペース、動作環境、ユーティリティ、安全などの制約条件も書き出して整理します。ロボットを配置し、前後の設備を配置し直した上で、必要な機器の選定を行い、レイアウトをより具体的に肉付けします。

 

レイアウト図に基づいて、ロボット導入費用を算出します。別途、システムインテグレーション(SI)費用が必要となります。ロボットは本体だけでなく、関連装置等と一緒にシステムに組み込まれて、初めて機能します。そのため、ロボットシステムの構築には機械装置だけでなく、システムの設計やロボットの動作教示(ティーチング)など、システムインテグレーション作業が不可欠で、この費用が大きいです。

 

保守安全管理を行う運用担当の候補者を選びます。ワークの変更や新たなティーチングが発生した場合、ロボット操作などの設定変更まで、社内で対応できるのが理想です。基本操作や日常点検だけでなく、運用時には「ティーチング」も重要です。以前は、ティーチングは専門家がするものでした。しかし最近では、専門家でなくてもティーチングができる機能が登場しています。たとえば、アームを手で持って動かすことで動作を覚えさせるダイレクトティーチング機能、感覚的にプログラミングできるビジュアル化された入力用インターフェイス、動きの始点と終点を入力するだけのティーチレス機能など、動作の入力を容易にする様々な方法が開発されています。

 

ロボットの仕事を大幅に変える時は、ティーチングをロボットSIer(システムインテグレーター)に依頼しますが、ワークが少し変わった程度の再ティーチングは、自社でできる方が良いです。意欲のある若手社員などを担当者に据え、講習会で勉強させることにより、リスクは大幅に減らせます。

 

4.仕様定義

提案依頼書(RFP)案を作成します。関連部署との情報共有を進めながらブラッシュアップして、RFPの合意形成を図ります。

 

ロボットSIer・ロボットメーカーから複数の候補を選定します。中でも、ロボットメーカーと導入企業をつなぐ役割を担っているロボットSIerとの連携が重要です。ロボットを初めて導入する企業にとっては、ロボットSIerとの間に密接な関係を構築できるかが、導入の成否に大きくかかわります。

 

経営者はロボット導入の費用対効果を検討した上で、RFPを承認します。ロボットSIer・ロボットメーカーなどへRFPを提示します。その際、不明点をなくすようにします。作業工程に並行して、工場全体のレイアウトや動線、ロボット導入の可能なスペースなどについて検討します。特に、ロボットを設置する現場の環境条件やレイアウト上の制約条件は、事前に調査しておく必要があります。

 

多くの場合、既存のラインを活用しながらロボットを導入しますが、新規にラインを創設する場合でも、既存のシステムや使用しているソフトウェアを活用するかなど、幅広い観点から検討が必要です。

 

ロボット導入には、社内人材の育成も重要です。メンテナンスをロボットSIerやロボットメーカーに依頼しても、日常操作やティーチングは社内で担当する必要があります。また、経営者は、ティーチングや作業に労働者を就かせるときは、その全員に「労働安全衛生規則第36条」に基づく安全教育、ならびに「労働安全衛生規則第59条」に基づく特別教育が義務づけられています。

 

費用、スケジュール、既存設備との関係、人材配置など、ロボットの導入は経営のあらゆる側面に影響を与えます。そこで、経営者は社内検討チームやロボットSIerなどから情報収集して決断します。自社に最適なロボットを発注するために仕様書を作成し、発注までのプロセスやロボットの設置・導入・ティーチングなども含めたスケジュールを立てます。必要に応じ、経済産業省をはじめ、国や自治体などの支援施策の活用を検討します。

 

5.設計(基本・詳細)

具体的なロボットシステムの方式や詳細の設計を行い、運用と能力の妥当性を検証します。リスクアセスメントを行い、安全性確保に関する方針を策定します。

 

6.製造、納入前テスト

設計に基づきロボットシステムの製造やプログラミングを行います。据付けや調整を行い、内部テストを経て総合確認を行います。契約通りのものができ上がれば、検収して運用開始となります。

 

7.保守・点検(本稼働開始後)

ロボットシステム稼働後も定期点検を行い、不具合があれば修正します。運用担当者は、ロボットシステムの障害発生時には復旧支援を行います。

 

ロボット

図2 ロボットシステム構築の流れ(2)
出典:経済産業省「ロボット活用の基礎知識」

 

次回は、ロボット導入におけるコストについてご説明します。

 

◆関連解説『電気・電子技術』

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この記事の著者

竹内 利一

自動化設備の生産性向上は、おまかせ下さい!  自動化設備のことならどんなことでも、あなたと一緒に考えます。

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