失敗しない、ロボット導入の第一歩(その5)

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ロボット

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第5回 協働ロボット

 

1.はじめに

協働ロボットとは、その名のとおり人と協力して働くロボットのことです。労働人口の減少に対応するため、ロボットの活用が求められていますが、これまでロボットと作業者は安全柵で作業エリアを分けなければならなかったため、広い設置スペースが必要でした。しかし、技術の進展でロボットの小型化が進んだことや、法規制の緩和などにより、安全柵がなくても人とロボットの共同作業が可能な、協働ロボットが誕生しました。

【この連載の前回:第4回 ロボット使用事業者に要求される安全へのリンク】 

 

2.法規制 (安衛則第150条の4)の緩和

従来、国内の規制においては、80W以上のロボットは安全柵で囲うことが必須でしたが、2013年12月の規制緩和により、「ロボットメーカー、ユーザーが国際標準化機構(ISO)の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」等の条件(リスクアセスメント)を満たせば(図1)、80W以上のロボットでも人と同じ作業スペースで、働くことが可能となりました。

 

ロボット

図1 リスク低減の概念
出典:中央労働災害防止協会「機械設備の安全対策の推進」

 

3.協働作業が可能となる安全基準

2013年12月24日付基発1224第2号通達(以下「2号通達」という)により、産業用ロボットと人との協働作業が可能となる安全基準を明確化しました。

(1)リスクアセスメントにより危険の恐れが無くなったと評価できるときは、協働作業が可能である。(2号通達)
(2)ISO規格に定める措置を実施した場合も、協働作業が可能である。(2号通達)

ISO規格に定める措置とは、下記の「技術ファイル」と「適合宣言書」の作成を指します。

 

4.技術ファイルの内容

(1)機械の全体的説明
(2)全体図、制御回路図、運転理解に必要な説明
(3)本質安全要件に適合していることの確認に必要な詳細図面、計算書、試験結果、証明書等
(4)リスクアセスメントの実施手順を示す文書
   ・機械に適用される本質的安全の要件のリスト
   ・危険除去又はリスク低減に実施された保護方策の説明及び該当する場合残留リスクの明示
(5)使用した規格及び他の技術仕様書、また、それらに含まれる本質安全の要件の説明
(6)試験の結果を示す技術報告書
(7)機械の取扱説明書の写し
(8)組み込まれた部分完成機械の組込宣言書及び当該部分完成機械に関する組立て説明書

 

5.適合宣言書の内容

(1)製造者の名称、住所及び正式な代表者の氏名
(2)技術ファイル編さん者の名称及び所在地
(3)表示名、機能、モデル、型式、製造番号、商品名を含む機械の説明及び識別方法
(4)機械が、安全規格の関連規定を満たしていることを宣言する文書
(5)使用された技術規格及び技術仕様書の参照
(6)適合宣言を実施した場所及び日付
(7)製造者として適合宣言書の作成者及び署名

 

6.協働ロボットの特徴

ロボットとの協働は素晴らしいことですが、もし電源が落ちてしまうような非常事態が起こると危険なため、非常時に備えた対策がJIS B 8433-1で決められています。

(1)一つ以上の非常停止機能をもたなければならない。
(2)手動で始動できる非常停止機能を備えなければならない。

このように、人に危害を加えない構造、衝撃を感知できる安全システムを構築することが規定されています。鋭利な部分をつくらず、ユニークなアーム構造(図2)に加え、指を挟み込まないよう可動範囲も配慮し、各軸に速度とトルクを監視するセンサーを持ち、機能的にも安全性を追求されています。アーム部分には柔らかな表面素材を使っている他、万が一動作中に人がぶつかっても衝突を検知して停止します。

 

ロボット

図2 デンソーウェーブ(COBOTTA)

 

人の代わりをするために、左右2本のアームによって人が両腕で行う作業を再現できるタイプもあります(図3)。作業者がアームをつかみ、手順に沿って動かしながら直接教えられるダイレクトティーチングにより、ロボットを使用したことがない人でも安心して、直感的な操作ができるものなどもあります。

 

ロボット

図3 川崎重工業 双腕スカラロボット(duAro2)

 

7.協働ロボット...

ロボット

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第5回 協働ロボット

 

1.はじめに

協働ロボットとは、その名のとおり人と協力して働くロボットのことです。労働人口の減少に対応するため、ロボットの活用が求められていますが、これまでロボットと作業者は安全柵で作業エリアを分けなければならなかったため、広い設置スペースが必要でした。しかし、技術の進展でロボットの小型化が進んだことや、法規制の緩和などにより、安全柵がなくても人とロボットの共同作業が可能な、協働ロボットが誕生しました。

【この連載の前回:第4回 ロボット使用事業者に要求される安全へのリンク】 

 

2.法規制 (安衛則第150条の4)の緩和

従来、国内の規制においては、80W以上のロボットは安全柵で囲うことが必須でしたが、2013年12月の規制緩和により、「ロボットメーカー、ユーザーが国際標準化機構(ISO)の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」等の条件(リスクアセスメント)を満たせば(図1)、80W以上のロボットでも人と同じ作業スペースで、働くことが可能となりました。

 

ロボット

図1 リスク低減の概念
出典:中央労働災害防止協会「機械設備の安全対策の推進」

 

3.協働作業が可能となる安全基準

2013年12月24日付基発1224第2号通達(以下「2号通達」という)により、産業用ロボットと人との協働作業が可能となる安全基準を明確化しました。

(1)リスクアセスメントにより危険の恐れが無くなったと評価できるときは、協働作業が可能である。(2号通達)
(2)ISO規格に定める措置を実施した場合も、協働作業が可能である。(2号通達)

ISO規格に定める措置とは、下記の「技術ファイル」と「適合宣言書」の作成を指します。

 

4.技術ファイルの内容

(1)機械の全体的説明
(2)全体図、制御回路図、運転理解に必要な説明
(3)本質安全要件に適合していることの確認に必要な詳細図面、計算書、試験結果、証明書等
(4)リスクアセスメントの実施手順を示す文書
   ・機械に適用される本質的安全の要件のリスト
   ・危険除去又はリスク低減に実施された保護方策の説明及び該当する場合残留リスクの明示
(5)使用した規格及び他の技術仕様書、また、それらに含まれる本質安全の要件の説明
(6)試験の結果を示す技術報告書
(7)機械の取扱説明書の写し
(8)組み込まれた部分完成機械の組込宣言書及び当該部分完成機械に関する組立て説明書

 

5.適合宣言書の内容

(1)製造者の名称、住所及び正式な代表者の氏名
(2)技術ファイル編さん者の名称及び所在地
(3)表示名、機能、モデル、型式、製造番号、商品名を含む機械の説明及び識別方法
(4)機械が、安全規格の関連規定を満たしていることを宣言する文書
(5)使用された技術規格及び技術仕様書の参照
(6)適合宣言を実施した場所及び日付
(7)製造者として適合宣言書の作成者及び署名

 

6.協働ロボットの特徴

ロボットとの協働は素晴らしいことですが、もし電源が落ちてしまうような非常事態が起こると危険なため、非常時に備えた対策がJIS B 8433-1で決められています。

(1)一つ以上の非常停止機能をもたなければならない。
(2)手動で始動できる非常停止機能を備えなければならない。

このように、人に危害を加えない構造、衝撃を感知できる安全システムを構築することが規定されています。鋭利な部分をつくらず、ユニークなアーム構造(図2)に加え、指を挟み込まないよう可動範囲も配慮し、各軸に速度とトルクを監視するセンサーを持ち、機能的にも安全性を追求されています。アーム部分には柔らかな表面素材を使っている他、万が一動作中に人がぶつかっても衝突を検知して停止します。

 

ロボット

図2 デンソーウェーブ(COBOTTA)

 

人の代わりをするために、左右2本のアームによって人が両腕で行う作業を再現できるタイプもあります(図3)。作業者がアームをつかみ、手順に沿って動かしながら直接教えられるダイレクトティーチングにより、ロボットを使用したことがない人でも安心して、直感的な操作ができるものなどもあります。

 

ロボット

図3 川崎重工業 双腕スカラロボット(duAro2)

 

7.協働ロボットのレンタル

協働ロボットのレンタルも始まっています。期間は、1日から必要なだけレンタルできます。レンタル時に設定した動作プログラムをレンタル会社で保管・管理することで、リピートの際には初期設定をする必要もありません。繁忙期の臨時雇用の代わりなどに協働ロボットをレンタルすれば、採用の手間なく利用ができます。動作プログラムを流用すれば、必要な時に必要なだけ労働力を確保できます。

 

8.協働ロボットの今後の活躍

ロボットが人と協働作業する場合、人の作業状況に合わせてロボットが作業を変える必要がありますが、プログラムで記述する代わりにAI技術を活用するといった取り組みも行われています。今後は、コロナ感染防止に対応した働き方の変革が進み、製造業だけでなく、医療現場やオフィスなどでも省人化、自動化が進展すると思われますが、そのような状況下で協働ロボットの更なる活用が期待されます。

 

次回は、ピッキングロボットについてご説明します。

◆関連解説『電気・電子技術』

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この記事の著者

竹内 利一

自動化設備の生産性向上は、おまかせ下さい!  自動化設備のことならどんなことでも、あなたと一緒に考えます。

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