ジョブ型雇用とは、求められる制度変更

ジョブ型雇用

 

第4次産業革命が進行中の現代、AI・IoT・DX技術などの発達で、何を創るかのフロントランナーの時代へとパラダイムシフトしています。企業は、イノベーションを牽引する積極的な若手人材に期待するのですが、若手人材の評価は「指示したことは実行するが、イノベーションに関わる提言は出てこない」なのです。


このような社会の変化に対応して教育も教える教育から学生主体の自ら学ぶ教育への転換が、アクティブラーニングなどを通じて行われています。特に、社会における仕事もテレワークなどで、自発的に能力を示して仕事の計画や実施を積極的に行う方向への転換が進んでいる状況です。

 

一方で、若手人材から見ると、「新しいことを提案しても旧態依然の考え方やレガシーシステムを理由にして提案を否定される」という声もあります。

 

テクノロジーの急激な変化に伴い、組織も企業活動において、若手人材もベテラン人材もスピーディな適応が必要とされています。そのために従業員一人ひとりに求められることは、受動的な働き方ではなく、自主自律性の高い働き方です。

 

今回は、このような背景を踏まえてジョブ型雇用の概要を解説します。

 

1.  ジョブ型雇用とは、メンバーシップ型雇用との違い

メンバーシップ型雇用は、ジョブ型雇用と対比される雇用形態です。ジョブ型雇用が仕事の内容で報酬を決めるのに対して、メンバーシップ型雇用では勤続年数、勤務実績などをもとに報酬を決めます。日本型雇用とはメンバーシップ型雇用を指します。メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いを考えましょう。

 

ジョブ型雇用は、職務内容が限定されて、転勤や異動は原則ありません。採用方法も中途採用が主です。人材育成方法は、自ら学ぶ、自発的なスキルアップです。業務成績の評価方法は、スキル重視の成果主義です。人材の流動性は高く、定着率は低くなります。

 

メンバーシップ型雇用は、職務内容は、非限定で転勤や異動を伴います。採用は、新卒一括採用が多く、人材育成方法も新卒一括研修などが主体です。業務成績の評価は、勤続年数・勤務態度を反映したものになります。人材の流動性は低くなります。

 

2.ジョブ型雇用のメリット、デメリット

ジョブ型雇用も万能ではありません。メリットもデメリットもありますので、整理して見ていきましょう。

 

(1)ジョブ型雇用のメリット

【多様な働き方を支援】

仕事や働き方を限定することで、従業員の働き方を多様に支援できます。希望する働き方に見合った職務内容を定義し、個人個人のライフステージやライフスタイルに合わせて、テレワークをはじめとした柔軟な働き方に対応して雇用の機会を広げられます。

 

【専門人材を採用】

現在は企業名で勤務先を選ぶというより、その仕事に惹かれて選ぶスタイルになりつつあります。職務記述書に職務内容・報酬を明確にすることで、そのスキルに長けた人材を確保しやすくなるのです。個人のキャリアとマッチすれば、規模に関係なく優秀な人材を得るチャンスにもなり、優秀な専門人材を採用しやすいメリットがあるのです。

 

【企業の状況にマッチした人材を確保】

新規分野への参入や急拡大する組織の場合など、現状のリソースでは新規分野に必要な人材を確保出来ない場合があります。このような時に人材を確保する手法として、ジョブ型雇用は有効です。ジョブ型雇用には変化に追従して人材確保をしやすいメリットがあります。

 

【成果・評価を可視化しやすい】

テレワークでは、実績やプロセスが不透明になりがちです。今までのプロセス重視で勤務時間管理による評価では機能できない仕事に対応して、ジョブ型雇用を採用する企業も増えています。ジョブ型雇用は、成果や目標を定めてから仕事に取り組むため、成果・評価の可視化が容易なこともメリットです。

 

(2)ジョブ型雇用のデメリット

【優秀な人材の転職リスク】

ジョブ型雇用は、求職者が職務や報酬に価値を感じ応募します。他社が魅力的な報酬で、現在の環境に不満がある場合、ジョブ型雇用の導入で、優秀な人材が転職してしまうリスクが高まります。

 

【報酬に競争力がないと採用出来ない】

報酬が求人市場で競争力がないと人材確保は難しく、スキルのある有能な人材は市場価値も高いので採用出来ません。一方で、自社の給与水準と離れた水準にしてしまうと、チーム業務の遂行には支障が生じる可能性が高まります。報酬の相場を常に意識して人事戦略を練る必要があるのです。

 

【会社都合の転勤異動がしにくい】

会社都合による転勤や異動がしにくいデメリットがあります。従来の雇用では、転勤異動は会社都合で比較的自由に行えましたが、ジョブ型ではそれは難しくなります。職務記述書に記載のない業務は、契約更新をして従業員がその内容に合意しなければなりません。

 

3.ジョブ型雇用導入のハードルとは

日本企業がジョブ型を導入しようとしてもうまくいかないという話を耳にすることがあります。その理由は、チームワークの希薄化です。ジョブ型雇用は個人プレーで成果を上げていくため、結束力に乏しくチームワークが機能しなくなってしまう懸念があります。

 

従来の組織は、個々の役割が明確ではないがゆえに、様々な仕事を組織全体でカバーできるという利点がありました。チーム崩壊の危険は、ジョブ型雇用の組織に内包していますが、ジョブ型雇用を採用している欧米企業にはそのような懸念は見えません。では、メンバーシップ型のチームワークと、ジョブ型のチームワークとでは、どこが異なるのでしょうか。そこで次に、ビジョンとエンゲージメントをキーワードに考えましょう。

 

【ビジョンとエンゲージメント】

従業員は組織への帰属意識があることが従来の組織では前提ですから、組織のために役に立つことを追求する仕事のスタイルでした。

 

ジョブ型では、従業員に組織への帰属意識の前提はありません。従業員はここでこの仕事をすることが最適であるという意思を持つことが重要です。そこで最重要なのが、会社が社会に対して成し遂げたいビジョンへの共感と、自分の成長と会社の事業の成長が一致していると考えるエンゲージメ...

ジョブ型雇用

 

第4次産業革命が進行中の現代、AI・IoT・DX技術などの発達で、何を創るかのフロントランナーの時代へとパラダイムシフトしています。企業は、イノベーションを牽引する積極的な若手人材に期待するのですが、若手人材の評価は「指示したことは実行するが、イノベーションに関わる提言は出てこない」なのです。


このような社会の変化に対応して教育も教える教育から学生主体の自ら学ぶ教育への転換が、アクティブラーニングなどを通じて行われています。特に、社会における仕事もテレワークなどで、自発的に能力を示して仕事の計画や実施を積極的に行う方向への転換が進んでいる状況です。

 

一方で、若手人材から見ると、「新しいことを提案しても旧態依然の考え方やレガシーシステムを理由にして提案を否定される」という声もあります。

 

テクノロジーの急激な変化に伴い、組織も企業活動において、若手人材もベテラン人材もスピーディな適応が必要とされています。そのために従業員一人ひとりに求められることは、受動的な働き方ではなく、自主自律性の高い働き方です。

 

今回は、このような背景を踏まえてジョブ型雇用の概要を解説します。

 

1.  ジョブ型雇用とは、メンバーシップ型雇用との違い

メンバーシップ型雇用は、ジョブ型雇用と対比される雇用形態です。ジョブ型雇用が仕事の内容で報酬を決めるのに対して、メンバーシップ型雇用では勤続年数、勤務実績などをもとに報酬を決めます。日本型雇用とはメンバーシップ型雇用を指します。メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いを考えましょう。

 

ジョブ型雇用は、職務内容が限定されて、転勤や異動は原則ありません。採用方法も中途採用が主です。人材育成方法は、自ら学ぶ、自発的なスキルアップです。業務成績の評価方法は、スキル重視の成果主義です。人材の流動性は高く、定着率は低くなります。

 

メンバーシップ型雇用は、職務内容は、非限定で転勤や異動を伴います。採用は、新卒一括採用が多く、人材育成方法も新卒一括研修などが主体です。業務成績の評価は、勤続年数・勤務態度を反映したものになります。人材の流動性は低くなります。

 

2.ジョブ型雇用のメリット、デメリット

ジョブ型雇用も万能ではありません。メリットもデメリットもありますので、整理して見ていきましょう。

 

(1)ジョブ型雇用のメリット

【多様な働き方を支援】

仕事や働き方を限定することで、従業員の働き方を多様に支援できます。希望する働き方に見合った職務内容を定義し、個人個人のライフステージやライフスタイルに合わせて、テレワークをはじめとした柔軟な働き方に対応して雇用の機会を広げられます。

 

【専門人材を採用】

現在は企業名で勤務先を選ぶというより、その仕事に惹かれて選ぶスタイルになりつつあります。職務記述書に職務内容・報酬を明確にすることで、そのスキルに長けた人材を確保しやすくなるのです。個人のキャリアとマッチすれば、規模に関係なく優秀な人材を得るチャンスにもなり、優秀な専門人材を採用しやすいメリットがあるのです。

 

【企業の状況にマッチした人材を確保】

新規分野への参入や急拡大する組織の場合など、現状のリソースでは新規分野に必要な人材を確保出来ない場合があります。このような時に人材を確保する手法として、ジョブ型雇用は有効です。ジョブ型雇用には変化に追従して人材確保をしやすいメリットがあります。

 

【成果・評価を可視化しやすい】

テレワークでは、実績やプロセスが不透明になりがちです。今までのプロセス重視で勤務時間管理による評価では機能できない仕事に対応して、ジョブ型雇用を採用する企業も増えています。ジョブ型雇用は、成果や目標を定めてから仕事に取り組むため、成果・評価の可視化が容易なこともメリットです。

 

(2)ジョブ型雇用のデメリット

【優秀な人材の転職リスク】

ジョブ型雇用は、求職者が職務や報酬に価値を感じ応募します。他社が魅力的な報酬で、現在の環境に不満がある場合、ジョブ型雇用の導入で、優秀な人材が転職してしまうリスクが高まります。

 

【報酬に競争力がないと採用出来ない】

報酬が求人市場で競争力がないと人材確保は難しく、スキルのある有能な人材は市場価値も高いので採用出来ません。一方で、自社の給与水準と離れた水準にしてしまうと、チーム業務の遂行には支障が生じる可能性が高まります。報酬の相場を常に意識して人事戦略を練る必要があるのです。

 

【会社都合の転勤異動がしにくい】

会社都合による転勤や異動がしにくいデメリットがあります。従来の雇用では、転勤異動は会社都合で比較的自由に行えましたが、ジョブ型ではそれは難しくなります。職務記述書に記載のない業務は、契約更新をして従業員がその内容に合意しなければなりません。

 

3.ジョブ型雇用導入のハードルとは

日本企業がジョブ型を導入しようとしてもうまくいかないという話を耳にすることがあります。その理由は、チームワークの希薄化です。ジョブ型雇用は個人プレーで成果を上げていくため、結束力に乏しくチームワークが機能しなくなってしまう懸念があります。

 

従来の組織は、個々の役割が明確ではないがゆえに、様々な仕事を組織全体でカバーできるという利点がありました。チーム崩壊の危険は、ジョブ型雇用の組織に内包していますが、ジョブ型雇用を採用している欧米企業にはそのような懸念は見えません。では、メンバーシップ型のチームワークと、ジョブ型のチームワークとでは、どこが異なるのでしょうか。そこで次に、ビジョンとエンゲージメントをキーワードに考えましょう。

 

【ビジョンとエンゲージメント】

従業員は組織への帰属意識があることが従来の組織では前提ですから、組織のために役に立つことを追求する仕事のスタイルでした。

 

ジョブ型では、従業員に組織への帰属意識の前提はありません。従業員はここでこの仕事をすることが最適であるという意思を持つことが重要です。そこで最重要なのが、会社が社会に対して成し遂げたいビジョンへの共感と、自分の成長と会社の事業の成長が一致していると考えるエンゲージメントです。

 

この感覚があることで、私がこの会社で働いて、事業を成長させることは、自身が成長することに繋がっていて、社会に対して価値をもたらしているという意識を従業員が持つこと出来るのです。この意識は、自らの専門性を発揮してチームワークを重んじながら会社の成長に貢献しようという意識に繋がります。ジョブ型組織のチームワークは、組織ではなく事業成長のために貢献するというチームワークなのです。

 

【ジョブ型雇用導入のために変わるべきこと】

ジョブ型組織のチームワークを踏まえて、企業として取り組むべきことは大きく2つあります。

 

  • 企業としてどんな姿を目指しているか、どんな事業をどのような方向に成長させようとしているか、という企業としてのビジョンの明確化。
  • 事業に貢献するポジションが何で、そのポジションで事業の成長に貢献できたときにどんな人材になれるか、というキャリアビジョンの明確化です。

 

旧態依然のいわゆる“阿吽の呼吸”や「言わなくても分かる」という文化に甘んじることなく、この2つのビジョンを明確に言語化してみてはいかがでしょうか。

それこそが、働き方改革の原点であると信じています。

 

 

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この記事の著者

大原 健佑

中小ものづくり企業の経営者・管理者へ 現場が自ら動く!現場に任せる!現場の生産性向上と人財育成を圧倒的に加速させます!

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