トルク(torque)の基本から応用まで、知って得する物理の知識

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トルク(torque)の基本から応用まで、知って得する物理の知識 

【目次】

    トルク(torque)は、物理学の中でも非常に重要、かつ私たちの生活や仕事に身近な概念です。トルクとは物体を回転させる力のことを指し、日常生活から工業製品、さらには自動車や機械の動作に至るまで、幅広い分野で応用されています。特に締付トルクは、ボルトやナットを適切に締めるために必要な力を示し、構造物の安全性や耐久性に直結する重要な要素です。またエンジンやモーターなど原動機におけるトルクも、よく耳にする言葉です。原動機のトルクはエンジンやモーターが発生する回転力を示し、車両の加速性能や効率に大きな影響を与えます。今回はまずトルクの基本的な定義や計算方法について解説し、その後、締付トルクと原動機のトルクの違いや、それぞれの応用例について詳しく考察します。さらにトルクがどのように日常生活や産業に役立っているのかを、具体的な事例を交えて紹介し、トルクの理解がどれほど重要であるかを示していきます。物理の知識を深めることで、私たちの生活や仕事に役立つ情報を得ることができるでしょう。トルクの世界を一緒に探求していきましょう!

     

    1. トルクとは?トルクの基本概念と定義

     

    トルク(torque)とは、固定された回転軸の周りの力のモーメント(表される量)のことで、力矩、ねじりモーメントとも呼ばれ、「ねじりの強さ」を表します。単位は力と距離の積である N・m(ニュートンメートル)です。

     

    物体を回転させるための力は、てこの原理により、どこに力を作用させるかで異なりますが、物体をある角度だけ回転させるトルクは、力を作用させる点によらず一定となります。

     

    2. トルクの計算方法と単位

     

    エンジンにおけるトルクとは、クランクシャフト(ピストン運動を回転に変えるための軸)を回転させる力のことです。電気自動車や電車などのトルクは、電動機の軸を回転させる力のことです。

     

    自動車エンジンのトルク表示は、一般にkgf・m、またはkg・mが馴染み深い単位です。長...

    トルク(torque)の基本から応用まで、知って得する物理の知識 

    【目次】

      トルク(torque)は、物理学の中でも非常に重要、かつ私たちの生活や仕事に身近な概念です。トルクとは物体を回転させる力のことを指し、日常生活から工業製品、さらには自動車や機械の動作に至るまで、幅広い分野で応用されています。特に締付トルクは、ボルトやナットを適切に締めるために必要な力を示し、構造物の安全性や耐久性に直結する重要な要素です。またエンジンやモーターなど原動機におけるトルクも、よく耳にする言葉です。原動機のトルクはエンジンやモーターが発生する回転力を示し、車両の加速性能や効率に大きな影響を与えます。今回はまずトルクの基本的な定義や計算方法について解説し、その後、締付トルクと原動機のトルクの違いや、それぞれの応用例について詳しく考察します。さらにトルクがどのように日常生活や産業に役立っているのかを、具体的な事例を交えて紹介し、トルクの理解がどれほど重要であるかを示していきます。物理の知識を深めることで、私たちの生活や仕事に役立つ情報を得ることができるでしょう。トルクの世界を一緒に探求していきましょう!

       

      1. トルクとは?トルクの基本概念と定義

       

      トルク(torque)とは、固定された回転軸の周りの力のモーメント(表される量)のことで、力矩、ねじりモーメントとも呼ばれ、「ねじりの強さ」を表します。単位は力と距離の積である N・m(ニュートンメートル)です。

       

      物体を回転させるための力は、てこの原理により、どこに力を作用させるかで異なりますが、物体をある角度だけ回転させるトルクは、力を作用させる点によらず一定となります。

       

      2. トルクの計算方法と単位

       

      エンジンにおけるトルクとは、クランクシャフト(ピストン運動を回転に変えるための軸)を回転させる力のことです。電気自動車や電車などのトルクは、電動機の軸を回転させる力のことです。

       

      自動車エンジンのトルク表示は、一般にkgf・m、またはkg・mが馴染み深い単位です。長さ1mの棒の先端に1kgの重りが付いた軸を回転させたときに、根本にはたらく軸の回転力が「1kgf・m」です。車のカタログなどにあるトルクの単位としては、SI単位の「N・m」(ニュートン・メートル)も併記されます。kgf・mに係数9.80665を掛けると、N・mに換算できます。

       

      3. トルクと回転運動の関係

       

      出力は、車の最高速度を左右します。出力=トルク×回転数ですが、回転が高くなれば、タイヤの回転も速くなります。したがって、出力が大きければ最高速度も上がる、ということです。

       

      一方、トルクが大きいほど、軸の回転力が大きいので、加速がより力強くなります。加速性能に大きな影響を与えるのはトルクです。トルクの数値は登坂能力にも影響します。


      このように出力は最高速度に影響し、トルクは加速性能に影響するということです。

       

      4. モーターのトルクと定格

       

      物体の持っている慣性を、回転する物体について考えましょう。回転する運動では慣性モーメントが大きいほど回転しにくく、一方、回転していると止まりにくい。ということになります。

       

      回転する物体の慣性モーメントが無視できない場合には、モータの容量すなわち所要動力は、負荷トルクに加減速トルクを加えた全トルクから計算する必要があります。

       

      【定格からのトルク計算式】下記の計算式のどちらでも構いません。

       

      • トルク=(9554×容量)÷回転速度 ・・・式(1)
      • トルク=60000÷2π×容量÷回転速度・・式(2)

       

       例えば、0.55kWのモータで1750r/minであれば

       式(1)から、トルク=(9554×0.55)÷1750=3.0 N・m

       式(2)から、トルク=60000÷2π×0.55÷1750=3.0 N・m

       

      5. トルク制御とトルク制限

       

      トルク制御とは、発生トルクをトルク設定範囲におさめ一定水準に保つことです。トルク制御の方法には、電流を制御することによってトルク制御を行う電流制御が一般的です。トルクを一定にキープしたい印刷機の紙送り軸や重量物移動で使用する天井クレーン等パワーアシスト用途に活用されています。

       

      トルク制御と類似の用語にトルク制限がありますが、これはエンジンやモータからの発生トルクが設定トルク以上になった場合、設定値以上にならないように駆動軸と被駆動軸を完全に切り離すことです。トルク制御と同様に電流を制限することで発生トルクを抑える電流制限の他、安全クラッチやトルク・リミッタを用いてトルクを抑える機械制限があります。

       

      6. トルク・リミッタとは

       

      自動化機械が想定外トラブルで稼働停止すると損失を被ります。機械装置の損傷は企業収益悪化の要因です。トラブル対応としての安全クラッチ/トルク・リミッタは過負荷保護装置として機械装置トラブルを防ぐ装置です。

       

      トルク・リミッタは、事前にトルク値を設定します。もし設定以上の過負荷がかかると、スリップすることで設定トルク内にトルクを維持し、トルクを遮断することなく機械装置を保護する過負荷安全装置です。

       

      トルク・リミッタのメリットは、装置が小型でシンプルな構造で扱いやすいこと、安全クラッチと比較して価格が安いこと、摩擦板交換による再利用が可能ことです。一方デメリットとしては、トルクの設定値が限定的で高トルクでは使用できないこと、摩擦板の消耗によってメンテナンスが必要なことです。

       

      7. 締め付けトルクとは

       

      締め付けトルクとは、ボルトを締める力加減のことです。ボルトの材質、使用する箇所、太さや大きさによって適正な締め付けトルクは変わってきます。自動車などの機械装置ではそれぞれのパーツに応じた指定トルクがありますので、組み付けるときはトルクレンチで締め付けトルクを計測してチェックしましょう。

       

      なぜ締め付けトルクが重要なのでしょうか。締め付けすぎはなぜダメなのでしょうか。それは、締めすぎでネジ部分が伸びきってしまうとそれで固定力が弱まるからです。

       

      適正トルクで締めれば、ネジ部分がわずかに伸び元に戻す力が働き、強い固定力が発生します。

       

       

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      この記事の著者

      嶋村 良太

      商品企画・設計管理・デザインの業務経験をベースにした異種技術間のコーディネートが得意分野。自身の専門はバリアフリー・ユニバーサルデザイン、工業デザイン、輸送用機器。技術士(機械部門・総合技術監理部門)

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