サプライチェーンを交通システムで喩える

 私たちが仕事や旅行での移動に使う交通機関には地下鉄・バス・路線・電車・タクシー・新幹線・飛行機・レンタカーなどがあり、複数の異なる手段をつないで目的地に到着します。サプライチェーンを構成する要素もそれと同様にたくさんあり、製品によってどこからスタートしてどこで完了するかが決まっています。もちろん同じ種類の製品でも、納入される場所が違えば到着地点は様々です。

 移動する交通機関の乗り継ぎがうまくいかないと、駅のホームや空港の待合室で仕掛在庫や製品在庫になって時間を消費することになります。交通手段を複数利用する移動は、サプライチェーンで例える事ができるようです。待ち時間となる乗客が在庫であると認識するならば、在庫とは時間であるとの発想を容易にします。在庫となった「仕掛や製品の気持ち」になれば、在庫というのは付加価値の付かない無駄であることが理解できます。一方乗り継ぎ時間がほとんどないような移動が、同期化された交通手段です。

 表1に示したように、旅行の喩えでサプライチェーンのリードタイムを考察してみましょう。交通システムを乗り継いで移動する場合に、4つの時間から成り立っています。

表1 リードタイムの構成要素

サプライチェーンリードタイムの要素

  1. セットアップタイムは、交通機関で言えば乗車券購入などの準備時間で、未だ移動が始まる前です。
  2. プロセスタイムは、実際に交通機関を利用して移動している時間であり、サプライチェーンでは加工や輸送など実際に付加価値がともなっている時間です。
  3. キュータイムは、現実での有限な数しかないフライトや列車の座席を待っている時間です。サプライチェーンでは0、能力制約下での工程能力の待ち時間に相当します。定期便による輸送便でも、コンテナのスペースに限りがあればそれ以上の積載量がある場合は、次便を待つ時間が生じます。
  4. ウエイトタイムとは、10人の団体で旅行する場合に9人揃って1人来なくて9人が仕掛在庫となって待つ時間です。組立工程でパーツが揃わずバッチ処理をする時に、一定のバッチサイズが揃うまで先に用意したパーツはウエイトタイムを要する在庫となります。

 この4つの時間要素の中で、実際に付加価値がある、すなわち本当に移動している時間はプロセスタイムのみです。サプライチェーン上で同期してスピードを向上するには、セットアップ時間を少なくし、交通システムのダイヤをみて、座席数制約の中で最も乗り換え時間の少ない、同期化した交通手段を用意することが重要なのです。

 またバッチサイズを少なくして時間を短縮するのは、団体旅行の人数を減らし、可能な限り一人旅の時間に短縮して時間価値を上げることに相当します。3人でタクシーに乗るコスト節約と、1人で移動する時間節約のビジネス上での価値を比較する必要があります。

 サプライチェーンマネジメントは費用削減による利益増大ではなく、時間による機会損失をなくし売上増大を狙うことで利益を上げることがより重要性であるとしています。ロジスティクスの戦略性は武器弾薬を低コストで運ぶ事よりも、戦争相手より早く戦力が優位になるよう迅速に供給することです。どんなに安くても、敵より遅れて戦力を編成したのでは手遅れです。これは顧客が欲しいときに欲しいだけの製品をすばやく提供するロジスティクスが重要事項であり、競合に対する大きな競争力となります。ビジネスの勝負はキャッシュフローで決まり、コストや効率などの部分最適の指標では決まりません。

リードタイムとタッチタイム

図1.リードタイムとタッチタイム

 図1は前記4つのリードタイムとタッチタイムの要素を、3区間の列車ダイヤで示しています。限られたレール本数の制約の中で乗客への利便性を上げる為に各駅停車とノンストップの快速電車がある場合、移動するプロセスタイムのみのダイヤは、ノンストップの快速電車に相当します。横軸が時間軸で縦軸が走行距離であり、S,Q,Wはそれぞれ準備時間、能力制約待ち時間、連結車両のバッチ待ち時間であり、空間上での移動がありません。列車ダイヤについて考察することは、サプライチェーンの最適化に当たり極めて有効です。


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

・製品構成・生産・販売の全体のつながりSCM(サプライチェーンマネジメント)の中でキャッシュ収益を改善します。 ・サプライチェーンマネジメントの源流にトヨタ式経営を求め、そのさらに源流としてドラッカー経営に行きました。 ・マネジメント…

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